山小屋前の広場から、左右に小さな灯りが並ぶ坂道を上ると、一番初めに見えるのが、〝射的〟と書かれたのぼりと、その屋台です。
二本の立ち木に挟まれた、湾曲した竹の骨組みの小屋。屋台の上部には、赤と白の提灯が並び、〝射的〟の看板が据えられています。
小屋の中には、紅白幕のひな壇があり、色とりどりな山の動物の的がこちらを向いています。竹の隙間には、キジとヤマバトのつがいの的が吊るされ、ひな壇の中央には、大きな口を開けて、吠えている熊。
遊びに来てくれた人は、五発の銃で好きな獲物を狙うことができるのでした。
射的は、コート会議のみんなで準備を重ねてきました。
射的のメインとなる的は、以前山小屋キャンプで作った、精密な動物の的を再度使わせていただき、さらに五つの的を作り足しました。
鮮やかな雄のキジ、落ち着いた雌のキジ、つがいで毛づくろいをしているヤマバト。それから、この夏、なのはなで話題になったキツネが二匹。
なつきちゃんと一緒に、図書室にある動物の本や図鑑から、的にできるような絵を見つけて、厚紙に模写をしていきました。
本の中の動物を見ていると、一匹一匹、優しい表情をしていて、愛嬌があり、素敵だなあと思いました。
色付けは、コート会議のみんなで行ないました。絵の具を使って色を付けると、パッと華やかになりました。特に、動物たちの瞳に白で光を入れていくと、動物たちが生き生きとして、命が吹き込まれたようでした。
チームのみんなと、黙々と絵を描いたり、出来上がったものを見せ合って、笑いあったりした、新しい的作りの時間が、とても楽しかったです。
的のほかにも、射的の屋台を引き立てるために、いろいろな飾りを考えて、みんなで作りました。
模様をくり抜いた、青い豆腐パックの底をてぐすでつないだ、吊るし飾りを、のんちゃんが作ってくれました。吊るし飾りは、コーンをつなぐスズランテープに点々と取り付けられ、屋台が涼やかに引き立ちました。

〝射的〟と書かれた、花火のような背景ののぼりは、なつきちゃんが作ってくれました。竹に取りつけて立たせると、とてもお祭りらしい空気が出て、素敵でした。
ツキノワグマ、イノシシ、シカ、といった動物の黒いシルエットの飾りも、ゆかこちゃん、なつきちゃんと一緒に作りました。黒いために、的の邪魔はしないけれど、背景のブルーシートや、屋台周りを賑やかにすることができました。
■趣のある屋台に
屋台をイメージして、必要なものを書き出していくと、飾り以外にも、机や道具など、欠かせないものがたくさんありました。
持ち物や、みんなの役割などは、なるちゃんが中心になってくれて、夜の時間などにみんなで確認して、進めました。
こうしてみんなで作ってきた飾りや、配置を、実際に山小屋へ行って、どんどんと形作っていったことも、とても楽しかったです。
完成したものは、思っていたよりもずっと、土台となった基地や、おじいちゃんの山とぴったり合っていて、趣きのある素敵な屋台になりました。
本番、のんちゃん、みくちゃんたちから引き継いで、私はゆかこちゃんとなおとさんと一緒に、お店に立ちました。
ゆかこちゃんが受付で、お客さんの名前を順に控え、パスポートを受け取ってくれます。私は、順番が来た人にコルクを渡して、主に、
「本番は五発です。どの的も一点。台の上の的は、倒れたら得点。鳥の的は、当たっただけで得点になります」
「コルクを銃に、しっかりとまっすぐに入れることがコツです」
とゲームの説明をしました。
なのはなにある射的銃は、本物の木と鉄でできていて、重みがある本格的な銃です。まず銃の撃鉄を、カチッと音がするまで、引きます。そしてコルクを銃口に詰め、自分の効き目、銃の上にある切れ込み、先端の突起、それから狙う的が、一直線になるようにして、撃ちます。
当たっても、外れても、重みのある銃で撃った時の弾ける感覚と、パン、という乾いた銃声が鳴るだけでも、嬉しくなると、思います。また、的のまん真ん中に命中して、パタリと的が倒れたとき、鳥の的が勢いよく前後に揺れたとき、とても気持ちがいいです。
■射的名人に
なおとさんと一緒に、「お見事!」「惜しい」と声を掛けながら、一緒になってみんなの射的を見ているだけでも、夢中になりました。
本番の五発が撃ち終わると、受付のゆかこちゃんに点数を伝えて、的を元に戻し、次の人へと移っていきました。
撃つ人によって、構え方も全く違っていて、その人の人柄が構え方に表れているように感じました。その中で、一番命中するのは、台の上にしっかりと身を乗り出して、撃つ構えだと、私は思いました。
「楽しかった」「悔しいな〜」と、言いつつ、みんな笑顔で屋台を去って行って、楽しんでもらえたかな、と思いました。待っている人の途切れ目に、店番の人も、みんなと同じように射的で遊ばせてもらいました。
私は、今まで試し撃ちを何回かしていたり、みんながやっているのを見ていたり、撃つ的も心に決めていたりと、みんなよりも狡くなってしまったとは思います。
けれど、本番は迷いなく、まっすぐに弾が的に飛んで行って、五発命中させることができました。そうなると、ただの遊びだけれど、射的名人になったようで、とても嬉しくなりました。
まっすぐに的に当てる一番のコツは、コルクを銃口に詰めるとき、しっかりと力を入れて、まっすぐに詰めることと、的に引き寄せられるように、腕をできる限り伸ばすことだと思いました。
今回、射的の屋台をコート会議のみんなで担当させてもらって、とても嬉しかったです。今までよりずっと、射的を好きになったなあ、と思います。
遊びの屋台を一つ作るにも、みんなに楽しんでもらうためには、本当にたくさん考えて、チームで知恵を出し合って、作り上げるのだと分かりました。
今年の良かったところ、改善できるところのまとめを残して、来年はもっといい射的屋台ができたら、いいなと思います。