【9月号①】「なのはな縁日まつり」ちさ

 ここは盛男おじいちゃんの山。だけれどいつもと少し違う。櫓が組まれ、提灯が並び、柔らかなピンクの桃ライトが会場を温かく包み込んでいる。

 焼きそば屋さんに唐揚げ屋さん、綿菓子、かき氷もあり。そして山に足を踏み入れれば、射的にヨーヨー釣りに金魚すくいにシューティングに吹き矢に、並ぶたくさんの屋台。どこからどう見てもお祭り会場。いや、ただのお祭り会場ではありません。

 こんなに楽し気で、こんなに華やかなお祭り会場は世界中どこにもきっとないだろうと思いました。  

岩見田の山小屋と盛男おじいちゃんの山で、なのはな内の仲間で楽しむ縁日まつりを開きました! 屋台から提灯、櫓まで、チームを組んで案を出し合い、準備をしてきました。当日の夜はみんなで浴衣を着て、店番や遊びを思い切り楽しみ、非日常の一夜を過ごすことができました

  
■色鮮やかなお面

 お母さんを中心に、八月に入ったころからなのはな縁日計画は着実に進んでいました。

 なのはなのための、なのはなによる、なのはなの縁日。主催者も自分たち。お客さんも自分たち。失敗も成功も置いておいて、みんなでふんだんに楽しみながら準備をし、当日を迎えました。飾りや道具の制作、作ったものの仕込み、当日は接客、金魚担当の私たちのチームは生きている金魚を扱うということ。
  
  
 いろいろ初めてのことだらけで、あれは大丈夫なのか、これはどうなのか、と心配要素もたくさんあり、ドキドキ緊張もしました。けれど、それを忘れさせるくらい大きな楽しみな気持ちで私の心の中は膨らんでいました。
  
 そして迎えた当日。陽が傾いてくると、お面を頭に、浴衣姿のきれいなみんなが続々と山小屋へやってきました。はじめは少しお客さん気分です。
  
 かにちゃんを中心に作った色鮮やかな、張り子のお面。二十種類くらいの中からみんなが好きなお面を選び自作しました。型に新聞を載せて、水の入った霧吹きでシュシュっとすると自分が魔法使いになったみたいに新聞が型に沿う様子がなんとも面白かったです。そして、今度は布、その上に半紙の三層構造。
        
 できるだけ皴ができないように重ね張りしていきます。ちぎってはペタペタと。ただそれだけの工程なのに、やり始めたら止まらない、これがとても楽しかったです。私は人の顔の型のお面を選びました。

 鼻筋や頬の盛り上がり、おでこの丸みを美しく出すことが特に難しかったけれど、紙を細長い長方形にして、中心から放射線状のように張り付けていってみたりして、できるだけしわがないように自分のやり方で極めていっていると時間を忘れてしまうものでした。そして絵付け。

 色が入ると、紙に印刷されていたモデルが、目の前で立体化して、本物になっていくことが、感動的でした。自分たちで作ったなんて信じられないような気持ちでした。そんな自分たちだけの大切なお面を身につけてお祭りに臨みました。お祭りには狐さんの柄のものがとても映えてかわいらしいなと思いました。
  
  
 だけど今日だけのことではなくて、これはすごく神秘的だな、舞台映えしそうだ、色が鮮やかではなやかだ、そんな風にいろんな視点でみんなが作ったお面を見ていると、ワクワクした気持ちが広がりました。

 午後四時四十五分五秒前。「なのはな縁日パスポート」ももらって一刻も早くお店へ遊びに駆け付けたい気持ちをぐっとこらえてお祭り前のドキドキを楽しんでいたとき、

「それではカウントダウン!」

 というあゆちゃんの掛け声にのって、

「五、四、三、二、一、スタート!」

 ついに待ちに待ったなのはな縁日が開催しました。

ゲームの得点や屋台のスタンプがもらえる、縁日パスポートが一人一枚ずつ配られました
スタンプラリーのようでわくわくしました!

  
■心の底から楽しんで

 みかちゃんたちと、どこから回ろうか、と、とてもワクワク、ソワソワ、パスポートを手にとにかくレッツ山の中へ。目に入る屋台全部が楽しそうで、キラキラしていました。通り過ぎる屋台どれもに入りたい衝動にかられました。

 ですが混んでいたので、やりたい気持ちをぐっとこらえてさらに奥へ。どこを見てもみんなが楽しそうに笑って、はしゃいで、楽しんでいて、ただそこにいるだけで私も楽しかったです。
  

縁日パスポートを片手に、どこから回ろうか考えるのもお祭りの楽しみの1つです

  
 まずは吹き矢の森に入ってみました。そこには、サツマイモ花火やカボチャ花火など、野菜をモチーフにした色鮮やかな五種類の花火が描かれた的が。与えられた矢は五本。一瞬の勝負で、とても緊張するなと思いました。

 矢をセットし、構えていざ一撃!「シュパッ、カランッ!」なんという気持ちのいい音、気持ちのいい勢いであろうか。音というのも、矢が風を切る音に加えて、的の真ん中付近に当たったときには、お見事の鐘のように金属音が鳴るように仕掛けてあるではありませんか。

 自分がとってもすごいことをしたと錯覚を覚えるくらいに気持ちがいい。今まで何度も様々なイベントで吹き矢をみんなとやってきました。

 ですが、前と同じでは面白くない。今回のコンセプト、今回の場所、メンバー、今回の状況でのベストな遊び方を、シンプルな中でも追求し、みんなを楽しませようと練り上げて進化させたことが伝わってきて、すごい、と思いました。

 それは吹き矢に限らずです。たくさんの頭で、どうやったらみんなが楽しめるのか、そうやって練って練って考えつくされた屋台は、中身も雰囲気もすごく密度濃く感じました。
  

   
 店員さんとお客さんの間、同じように遊んでいる仲間との間にあったもの。うまくいったらとても盛り立ててくれて、同じくらい嬉しそうに喜んでくれて、笑顔いっぱいで歓声を上げてくれる。

 そんな中で、ガッツポーズをとってしまいたくなるようなうれしい気持ちがいっぱいに広がりました。

 自分がゲームに勝つとか負けるとか、うまいとか下手とかじゃなくて、目の前の人が楽しんでくれるようにという気持ちでお店を開き、仲間と遊ぶ。遠慮したり、気持ちを飾ったりすることなく、自分も心の底から楽しんでいる。
  
  
 そんなお互い様の、うつし鏡の温かな気持ちがあっちにもこっちにも、ずっとそばで一緒に回っている子との間にもあふれていました。

 ザワザワ、せかせかとした私のイメージする忙しい夏まつりではありませんでした。やりたいことは盛りだくさんだけれど、風景も、雰囲気も、色でいうなら、暖かみと華やかさ、包容力を持ち合わせた桃ライトの柔らかなピンクがぴったりで、ワクワク、同時にほっこりするような、このなのはなの縁日。
  
  
 これは夢の世界なのかな、そう思ってしまうくらいに、抱えきれない幸せな気持ちでした。

■できたて、揚げたて!

 みんなと作った特別な夜。確かに特別といえば特別です。だけれど、みんなの中にあるお客さんを思う気持ち、目の間の人を思う気持ち、何かを作り上げる発想力や実行力は、みんなそのもの。

 決して特別でもなくて、それがお祭り色として今日は輝いているだけだと思いました。日ごろの生活、畑作業。こんなに派手な色はしてなくて、色は違うけれど、負けないくらい輝いていて、その輝きの本質は同じだと思いました。
  
  
 たった一人の人を思って全力を尽くすこと。誰かを楽しませようと自分の力を尽くすこと。思いっきり楽しみ、思いっきり楽しませるお互い様の関係。お祭り、という非日常を感じることで、日常の美しさ、豊かさを改めて実感しました。

 遊びが盛りだくさん。熱中しているとお腹もペコペコなことに気が付きました。山小屋の方へ降りると、食欲をそそるいい匂い。これはきっと焼きそばだ! 

 桃とマクワウリのトッピング付きのスペシャルかき氷。 

 それから、ずっと楽しみに待っていたお父さんのから揚げ。揚げたてを、一口食べたときの大きな衝撃。なんでこんなにも外がカリッとしているのか。
  

お父さんの手作り唐揚げが大好評でした!

 
 なのに中のお肉はふわふわでジューシーで、うまみがぎゅっと詰まっているではないか! こんな唐揚げ、今まで食べたことがない! 唐揚げにこんなに衝撃を受けたこともない! どうこのおいしさを伝えたらいいのか、語彙力が欲しい、と思いました。世界中に叫びたいくらいおいしかったです。
      
 いろいろな形の幸せを、みんなとたくさんたくさん共有しました。幸せに浸っているうちにあっという間に六時十五分。

 私たちの店番の時間です。次は、お店屋さんの気持ちにガラッと切り替え。お店につくと、金魚たちも一生懸命役割を果たして頑張っていました。金魚と同じ気持ちで、来てくれたお客さんを楽しませたい。

そう思い、金魚の気分で、金魚の店員さんになりきってみました。子供に返って、ワクワクとした気持ちを身体からいっぱいに発したお客さんたちが、たくさん来てくれることがうれしかったです。

■みんなの力で

 みんなで作った飾り。みんなで考えた接客台本や流れ。縁日をやろう、となったときはどんな風になるのかあまり想像ができなかったけれど、一つ、また一つと形になっていき、今では、とても魅力的な金魚屋さんとなりました。
  
  
 自分さえも惹きつけられるようなお店がみんなの力でできました。本当にみんなの力はすごいです。今日はその本番。ドキドキもしたけれど、そのお店に立てることがとてもうれしかったです。

 お店の雰囲気づくりをしていると、みんなが同じようにセリフを返してくれたり、笑ってくれたり、そのことがうれしくて、うつし鏡なんだなということを感じました。

 私は何かを演じたりするときに恥ずかしさを持ってしまうけれど、恥ずかしさやこだわりを超えて、誰かを楽しませたい気持ち、好きな気持ちだけで心がいっぱいだととても楽しいことだらけだと感じました。

 手が足りないくらいにお客さんがたくさん来てくれました。準備ができたお客さんがポイを手に椅子に座る。三十秒もたつとあっという間にみんなが金魚すくいの空気に変わっていくのがわかりました。

 桶を取り囲む、黙々と集中した引き締まった空気。そして金魚を見る優しい目と繊細な手つき。そんな店内の落ち着いた雰囲気が好きだなと思いました。

■櫓を囲んで

 あっという間に外は真っ暗になっていました。それさえも気づかなかったくらい、常に何かに夢中になっていました。ひと段落したところで山道を降りてみると、櫓を取り囲んで大きな円になってみんなが輪踊りを踊っています。
  
  
 それがまたとても風情がありました。輪になって踊っているみんなの姿はすごく惹きつけられるものがありました。私も仲間に入れてもらいました。

 炭坑節や四つ拍子、勝央音頭など、久しぶりだったけれど曲が流れると身体が自然と覚えていました。踊る機会が今年はなかったので、最後にたっぷりみんなと踊ることができてすごく楽しかったです。

 日本らしい曲調に乗って、浴衣を着て、ゆったりとした日本の踊りを踊る。それだけで心が和み、落ち着くように感じました。日本の文化はそんな素敵な魅力があるなと感じました。
  
  
 夜が更けるのがとても速かったです。時間が止まってほしかったです。もっともっと遊んでいたかったです。名残惜しかったけれど、店じまい。本当に濃い一夜でした。

 来年はどんな基地を作ろうか、とみんなと考えてみたり、今年の良かったところや改善点をじっくりまとめ、次につながるものにでき、うれしかったです。

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『山小屋でお楽しみ会をしました!』
  

  
 縁日の下見へ山小屋に行った日、畑Cチームが育てた、黄色いスイカ『シュガームーン』でのスイカ割り対決やお父さんとお母さんの弾き語りライブを楽しみました。
  
  
 雨で縁日は1週間伸びてしまいましたが、その分、山の中で思い切り遊び、楽しむことができました。   
  

 

〈みずみずしくて甘いスイカでした!〉