【6月号⑥】「美しい白桃を思い描いて ―― 桃の本摘果、そして袋掛けへ ――」りな

 

 五月中旬から、桃の本摘果が始まりました。桃の木は、五月二十日ごろから硬殻期という、種が固まる時期に入ります。この時期には、桃の木は妊婦さんのようになって、土壌水分の変動や、落果にも、敏感に反応してしまいます。だから、硬殻期に入る前に、最終の摘果を終わらせたい! あんなちゃんや桃の摘果メンバーのみんなと、目標を持って進めていきました。

■一番綺麗な実を

 桃の実は、予備摘果の時よりもぷっくりとして、大きくなっていました。直径三,四センチの実が、鈴のように丸い形をして枝にぶら下がっている姿が、本当に可愛いなあと思いました。桃の木は新しい枝が伸びてきて、葉も茂り、桃畑がまるで南国のような景色になっていました。

 あんなちゃんから、一から本摘果のことを教えてもらいました。本摘果が、最後の摘果となります。これまで、摘蕾、予備摘果を回り、実を十五センチ間隔ほどに絞ってきました。でも、本摘果では選ばれた実の中でも、ひときわ大きくて綺麗な実を三十センチ間隔にして絞っていきます。残された実は、そのまま袋掛けがされて、誰かの手に届く樹熟し桃になるんだなあと思うと、とても緊張しました。


 明らかに小さい実、変形、虫食い…などの実は、本摘果で落としていきます。ほんの小さな虫食いの点を見逃さずに見つけることは、とても難しいなあと思います。でも、虫食いが一つもなくて、大きくて綺麗な実が二つ、間隔が狭いところに並んでいるときは、もっと難しいです。

 どちらを落として、どちらを残したらいいのか、判断にとても迷います。そんなとき、あんなちゃんに質問させていただくと、分かりやすく丁寧に教えて下さいます。一番綺麗な実を、とあんなちゃんが追求する姿が、とても綺麗で、私もあんなちゃんと同じ気持ちで、本摘果をしたいなと思いました。

 桃の実を見ていると、どの実もとても愛おしく見えて、落としてしまうのが少しもったいないような、可哀そうなような気持ちになってしまう時があります。でも、その気持ちを優先して甘えていては、大きくて甘い桃は作れないのだと、思いました。

 あんなちゃんが、一つの桃の実を作るために、葉百枚分の光合成した養分が必要なんだと教えて下さいました。だから、それ以上にしても以下にもしても、桃の木に負担がかかってしまいます。適切な間隔に、適切な量の実を残すことが、一番桃の木に優しくて、質高い桃の実が成るんだなあと思いました

■本摘果講習会

 五月十七日、あんなちゃんが、桃の本摘果の講習会を、古畑で開いてくれました。お父さんお母さん、たくさんのみんなと、あんなちゃんのお話を聞きました。生理落果のある品種、大ぶりの実になってしまう品種…なのはなの桃畑にはたくさんの品種の桃の木があって、品種によっても特徴は様々です。でも、その特徴を生かして本摘果で残す実の数を調節するんだよと、あんなちゃんに教えてもらえて嬉しかったです。


 実際にあんなちゃんが本摘果のお手本を見せてくれました。あんなちゃんが桃の木を撫でるようにして、素早いけれど優しく摘果していく姿が、とても綺麗で凄いなあと思いました。私も、あんなちゃんのように潔く、的確に判断して本摘果を進めていきたいと改めて思いました。

 講習会後は、二人一組になって、お互いで確認をしながら、古畑の白鳳と紅清水という品種の木を摘果していきました。いつでもあんなちゃんが質問に答えて下さったり、みんなで一つの木に取り掛かっていると、とても心強くて楽しく感じました。

 古畑、石生の桃畑、池上桃畑……八つの桃畑を本摘果して回りました。桃畑を回っている間も、桃の実が日に日に大きくなってきているのを感じて、とても嬉しかったです。あんなちゃんが時々、摘果した桃を半分に割って、中をみせてもらったら、実の真ん中にクリーム色をした部分があって、これが硬殻期で固められて、種になるんだよとあんなちゃんに教えてもらいました。

 桃の実は、内側でもこうやってすくすくと成長しているんだなあと思って、とても心が温かくなりました。そして、硬殻期までに、摘果を全て終わらせたい、というパワーが湧いてきました。

 
 硬殻期に入る前に、無事に本摘果を終わらせられて、達成感と、安心感がありました。でも、これで気持ちを緩めてはいけません。桃の木が硬殻期に入っているときには、桃の袋掛けを進めます。早速、本摘果が終わってすぐ、袋掛けの作業に入りました。

 本摘果で残した実を、傷のない綺麗な状態で収穫まで育てるために、袋掛けは欠かせません。袋には、たくさんの種類があって、ニューオレンジ袋、黄色い袋、二重袋……色、厚さも様々です。あんなちゃんが品種ごとに、一番良い袋を選んでくださっていました。

■カラフルな桃の樹

 桃に掛ける袋には、様々な工夫がされていることを初めて知りました。虫を寄せ付けない効果のあるオレンジや黄色が、袋の色になっていたり、晩生の品種は袋を掛けている日数が多いので、丈夫である分厚い袋を掛けたり…。品種によっての袋の使い分けを知っただけでも、とても興味深くて、袋掛けの大切さももたくさん見えてきました。

 桃の実に袋を掛けて、袋の口をきゅっとたくし上げて、針金を一回折りして固定させます。袋の中に虫や雨水が入り込まないように、袋の口をしっかりと閉じることがポイントなのだとあんなちゃんに教えてもらいました。雨風に晒されても飛んでいかないように、しっかりと針金で袋を閉じることも、慣れるまではとても難しく、緊張しました。

 袋掛けを終えた木は、袋の色が点々と木に散らされて、とてもカラフルで可愛いなあと思いました。オレンジ色の袋をかけたら、ミカンの木に、赤い二重袋をかけたらリンゴの木に見えて、童話から飛び込んできたみたいだなあと思いました。

 夢中になって袋を掛けている時間が、とても楽しいなあと思います。袋を掛けた実は、収穫の時まで姿は見えません。でも、タイムカプセルを埋めたような、とてもワクワクした気持ちになるなあと思って、良いように、収穫に繋がればいいなあと思います。
 
 これからも、袋掛けを、あんなちゃんやみんなと進めていけることが嬉しいです。