【6月号③】「泥の中での新発見 ――田んぼでどろんこ運動会! ――」みつき

 なのはなで毎年恒例の大イベント、泥んこ運動会。この日はお米の豊作を願って、田んぼで遊んで、駆け回って、「泥んこ」になるのです。わたしは、今年が初めての泥んこ運動会でした。田んぼでどろどろになるのが、どんなものか想像がつかない未知の世界でした。そして競技のひとつひとつが楽しみで、ワクワクする気持ちで当日を迎えました。

 
 今回は全六チームが、新種目も加わった五種目の競技で、ポイントを競いました。わたしはピンクチームで、メンバーにはひでゆきさんも居てくださいました。それぞれが、チームカラーの短冊を頭に括り付け、顔にはペイントを施し、準備は万端です。

 みんなで列になって、会場となる池下田んぼに向かいました。外は素晴らしい快晴で、「早く田んぼに入りたい!」という声があちこちから聞こえてきます。スペシャルゲストで盛男おじいちゃんや永禮さん、まちこちゃんご家族も来てくださっていて、来賓席に向かっての力強い選手宣誓。そして「四股を踏む」なども含まれた準備体操で、心も身体も完全に戦闘モードになりました。


 いよいよ、第一種目の「泥んこ相撲」が始まりました。
 試合を始める前に、お父さんが、
「負けるときも、いかに派手に負けるかがポイントです」
 と話してくれました。
 
 しかし、負ける方も勝つ方も、泥んこ。背中から落ちたり、尻餅をついたり、飛び跳ねる泥しぶき。想像していた以上に豪快で、わたしは、「エッ、今から自分もこれをやるのか!?」と衝撃を受けてしまいました。

■足腰に力を入れて
 
 そして、いざ田んぼの中に入ってみると、底が深くて、ヌルッとした泥がまとわりついて、うまく歩き進めなかったです。すっかり臆病になってしまったところで、わたしの試合の番になりました。お父さんが行司をしてくださって、「はっけよい、のこった!」の声。
 
 思い切り足腰に力を入れて踏ん張って、「絶対に倒させない!」ただそれだけを考えていました。試合相手のえつこちゃんと、お互いに力をぶつけ合い、堪え合い、なかなか良い勝負になりました。
  
 最後はわたしが勝つことが出来て、まさか勝てるとは思っていなかったので、本当にうれしかったです。どのチームも、最後までどちらが勝つのか分からない試合ばかりで、わたしは気が付いたら、大声を出していました。

 第二種目は、「チャンバラ合戦」です。スポンジでできた刀を用いて、相手の「面・胴・籠手」のどれかを打つことによって勝利が得られます。しかし、必ず両手で打つというルールや、柔らかい刀のしなりもあって、なかなか難しい競技です。

■チャンバラ合戦

 みんなの試合があまりに激しい打ち合いのため、「どちらが先に打ったの!?」と感じてしまうくらいで、何度もドキドキしました。中には、逃げて追いかけっこになったり、両者がなかなか刀を振り下ろさず、じりじりと距離を縮めていく試合もありました。やっていても、見ていても、とても楽しかったです。


 第三種目は、「騎馬戦」です。頭のハチマキを奪い取る、運動会の定番競技? いやいや、なのはなではハチマキを狙うのではなく、騎馬を崩すことで勝敗が決まるのです。
 
 六チーム全ての騎馬が一斉に戦うルールのため、最後に残るべく、どのチームもそれぞれ作戦を立てていました。今にも崩れそうなのではないか? と目を付けられたチームは、複数のチームから狙われて囲まれてしまう可能性もあります。
 
 わたしは騎手として、騎馬三人の上に乗らせてもらっていたのですが、まさに、他のチームからロックオンされてしまいました。あちこちから、「ピンクチームを狙え!!」という声が聞こえてきました。もう逃れることはできず、いざ、戦いの始まりです。肩を押し合い、身体をそらせ、暴れ放題の騎手。でも、土台の騎馬三人が、ずっと互いの手を放さず、がっちりと固まっていてくれていました。


 最後には、共崩れして泥んこに沈んでしまったけれど、騎馬を崩すことができてうれしかったです。第四種目は、「リレー大会」です。これまた、運動会の定番競技ですが、泥んこの中となると、思うように全力疾走はできません。

 しかし、「泥の中に足が沈む前に足を上げるんだ」とみんなが教えてくれて、何度か足踏みをしてイメージをしてから、リレーに臨みました。合図で、第一走者のみんなが田んぼのトラックを走り出しました。それはものすごい勢いで、とても泥の中とは思えない速さです。

〈来賓席からも声援を送ってくださいました〉

  
 しかし、泥に足を引っ張られて、順位が前後していきます。あっという間にわたしの元にバトンがやって来て、赤チームのやよいちゃんの姿が目の前にありました。「なんとしても追いつきたい!」と、思いきり足を動かして追いかけました。しかし、バランスを崩して思いきり転んでしまいました。
 泥の世界の厳しさを知ったわたしですが、アンカーのひでゆきさんにバトンをつないで、みんなでハイタッチをし合えて、やり切った気持ちでいっぱいでした。
 第五種目は、新競技の「タイヤ取り」です。田んぼの中央に並べられた七つのタイヤを、チームから選出された五人、相手チームの五人、合計十人で取り合います。

■タイヤをめがけて

 勝つためには、タイヤをいかに自分の陣地の方へ持っていけるかどうかがカギになってきます。チームリーダーのちさとちゃんと話し合って、
「確実に三つは取りたい。そして、応援席のみんなの声を聞きながら、助け合おう」
 ということに決まりました。


 目の前にある、タイヤをめがけて走っていきました。すると、敵チームと取り合いになることなく、すんなりタイヤを手に入れることができました。しかし、すぐ隣では味方チームのりなちゃん、りんねちゃんが複数人でタイヤを引っ張り合っていました。

 そこに駆け付けると、誰かの腕や誰かの背中があちこちにあって、もはや、何がどうなっているのか分からない。正直言って、タイヤがどこにあるのかも分からない。目の前にあるこの現状しか頭になくて、応援席のみんなの声も聞こえませんでした。
 
 みんなが、「絶対にこのタイヤは渡さない!」と、そのことしか考えていませんでした。しかし、少しずつ少しずつ、自分の陣地にタイヤを引っ張っていき、わたしたちのチームは勝つことができました。みんながずっとタイヤを放さないでいてくれて、その粘り強さが頼もしくてかっこよかったです。


 チームでひとつになった感覚がして、タイヤ取りは一番激しい競技だったけれど、だからこそ、わたしは、一番楽しかったなと思いました。さて、最後に、お母さんが考えてくれた「特別ゲーム」の時間になりました。
 
 田んぼの上から、お母さんや来賓の皆さんがボールやフリスビーを投げてくださって、キャッチすることができると、チームに得点が入ります。得点発表によると、現在の最下位は緑チーム。このゲームで巻き返すしかない緑チームのみんなは、一層燃えているように見えました。
 
 どこに投げられるかわからないボールにみんなが群がって、キャッチした後にも取り合いが続き、油断はできません。わたしはスタートで出遅れてしまったのですが、思いがけないことに、フリスビーが飛んできて、キャッチすることができました。


 そして、得点発表です。なんと、緑チームのみんなは大量にボールやフリスビーを手に持っていて、どのチームよりも得点を稼いでいました。これで順位が前後して、惜しくも最下位になってしまったのは、青チーム。ということで、罰ゲームとして青チームには、「全チームから泥かけのプレゼント」。
 
 しかし、罰ゲームのみんなも泥をかけ返してもいいということで、家族全員が泥まみれになりました。最後には、自由時間ということで、これ以上ないくらいに泥んこになりました。待ってましたとばかりに、司会進行をしてくれていたあゆちゃんや、お父さんも、みんなの手によって泥の中へと引きずり込まれました。
 
 目が合った人と相撲を組み始めたり、泥をかけ合ったり、田んぼにダイブしたりしました。もはや誰が誰かわからないくらい、頭の先からつま先まで真っ黒のみんなを、お互いに見合って、笑ってしまいました。
 

 わたしのもとに、れいこちゃんが笑顔でやって来て、
「綺麗な顔のままじゃ終わらせない!」
 と言って、次の瞬間、飛びかかってきました。その綺麗なタックルで、わたしは顔から田んぼに突っ込みました。わたしのなかでわずかに残っていた、「泥んこになる恐怖」をれいこちゃんが断ち切ってくれて、みんなの方へ導いてくれたことが、本当にうれしかったです。

■本能が目覚めた

 みんな泥まみれでドロドロだけれど、わたしにはみんながとてもキラキラして見えて、どこか美しいものを感じました。泥んこ運動会が終わって、わたしは、ここまで自分が全力で動けると思いませんでした。こんなにも自分は負けん気が強いと思いませんでした。滑り込むようにタイヤに食らいついたり、転ぶ覚悟でリレーのバトンを繋いだり……。自分の眠っていた本能が目覚めたような感覚。小さなこだわりがパチンとはじけて無くなったような感覚。それが、とても気持ちが良かったです。


 でも、それはきっと、なのはなのみんなとだから、得られたものなのだと思います。この日は最高気温が三十度まで上がって、本当に良い天気のなか、今年も家族全員で泥んこ運動会を開催できて、参加させてもらえたことに心の底からしあわせを感じました。

 田んぼには、きっとわたしたちの願いやパワーが詰まっていて、なのはなのみんなとのお米作りが、本当に楽しみです。