【6月号①】「手植え、田植え機で16枚の田植えを完了!」 やよい

〈苗作りから心をくばって準備したお米作りの、本格的なスタート。なのはなで今年つくる田んぼは全16枚、約2町7反5畝です。3日間にわたる田植えを締めくくったのは、池下田んぼでの手植えでした〉

 

 田植えがはじまって三日目の最終日、みんなで手植えをしました。なのはなの年に一回、家族みんなで行なう、恒例の手植えがとても楽しみでした。祝日で、お父さん、お母さん、りゅうさん、普段はなのはなからお勤めに出ているお仕事組さんも、家族全員で行なえることが嬉しかったです。

 午前十一時、みんなで光田んぼ上の畦に集まって、長靴を脱いで裸足になり、六十人近くいる私たちは、崖崩れハウス前下畑の南側の畦にずらっと一列になり、光田んぼに向かって斜面になっている畦をゆっくりと降りました。

 
 向こう岸の畦まで、四十メートルはあるだろうか。光田んぼの中は、まだ一面に水がはっているだけで、空の青と、空に島のようにいくつも浮かぶ雲が水面を鏡のようにして映っていました。
 

■機械植えVS手植え

 今から、この一面すべてに、みんなでお米になる稲を植え付けていくのだと思うと、やる気がわいたし、ワクワクしました。足を入れると、田んぼの水は太陽の光で少し温かくなっていましたが、底の泥はひんやりとしていて、その泥の感触と、冷たさが心地よく感じました。田んぼに入らないと味わえないこの感覚が好きだなと思います。
 
 天気はとても快晴で、強い光が地面に降り注ぎます。足首よりも上は太陽の強い光を浴びて身体は熱くなるけれど、泥に接した足の裏から感じるほどよい冷たさに、気持ちが落ち着きました。隣の下の畑、光田んぼ下には、田植機の早苗ちゃんに乗ったお父さんの姿。そう、今日の田植えは、いつもとひと味違います。

 総勢六十人が集まり一列になって植えていく私たちが速いか、早苗ちゃんに乗ったお父さんの機械植えが速いか。光田んぼ下のお父さんと、光田んぼ上の私たちとで「機械植え VS 手植え」対決を行なうのです。西側の畦に永禮さん、東側の畦にあゆちゃんがいて、永禮さんからあゆちゃんまで、みんなの足下の前に、まっすぐに水糸が張られました。
 
 田んぼの水の中をよーくのぞくと、体長三ミリほどの豊年エビがいて、これから稲が豊作になるような、これからのお父さんとの勝負に勝てるような、そんないい兆しを豊年エビから感じました。
 
 いよいよ、手植えがはじまりました。左手には、みんなで毎日朝、昼、夕と水やりをして、グランドで育てた稲の苗を持ちます。育苗トレーに均一に詰められた焼土に、わさわさと生えそろった稲たちを、土ごとちぎって、わけて、みんなで持ちました。

 右手で苗を三本くらいちぎって、水糸の丸いビーズがついている部分の少し前に植えていきます。泥の中に稲をつかんだ手をにゅっと入れて、水面から上に手が帰ってくるときに、軽く土をよせて、株元に穴があかないようにします。穴がぼこっとあいていると、水をいれたときに、稲が浮いちゃうんだよ。とあゆちゃんが教えてくれました。

「よ~いスタート! 十、九、八、七……」とお母さんが合図とタイムコールをしてくれました。苗をちぎるときに、上の葉の部分だけがとれてしまいそうで、ほどよくゆっくりちぎると、ちゃんと根もついてきてくれました。根が切れないようにちぎることや、取る量を三本にそろえることを意識すると、はじめはお母さんのタイムコールについていけませんでした。

 

■力を合わせて

 でも、すぐ下のお父さんが乗っている早苗ちゃんのエンジンが可動している音を耳に入ると、俄然やる気が出て、少しずつ早くできるようになりました。みんなとなら機械にも勝てると、根拠のない自信がありました。絶対に勝ちたい、と思いました。
 
 手持ちの苗が少なくなると、左隣にいたさやねちゃんが、そっと私の足下の前に苗をおいてくれたり、私が植えるのが遅れてしまったときには、右隣にいたゆいちゃんが植えられていないところを素早く植えて、カバーしてくれました。左右の畦からは、まことちゃん、けいたろうさん、まっちゃんが育苗トレーから苗をちぎって、私たちの前に投げてくれました。
 
 お母さんのタイムコール、毎回十五センチ間隔で水糸をはっていってくださるあゆちゃん、永禮さん、畦から苗を投げてくれるまことちゃんたち、田んぼ中に入って一列にならび、困ったときはお互いに助け合い進んでいくみんな、そして、隣の田んぼで私たちにやる気と闘志を与えてくれるお父さんの姿。手植えは家族みんなで一丸となるからこそできることなのだと思いました。この畑になのはなのみんなが集結して、大きな力を感じました。

■手植えし続けること

 お母さんがいつも、自給自足はとても大切なことだと教えてくれます。毎年こうやって、みんなとお米の苗を手植えしつづけることはとても大切なのだと思いました。これからもずっとお米を作っていく伝統を、未来の人のために、日本人として残していきたいなと思いました。

 一歩いっぽみんなと一緒に進みながら、光田んぼの中に整然と稲の苗が植わっていく光景が、綺麗でした。田んぼの景色はアートだと思いました。
「お父さんに少し負けているかも知れへんで! がんばろう!」
 お母さんがみんなに何度も、声かけをしてくれました。

〈お母さんがタイムコールをしてくれました〉

 

 ハプニングが何度かありました。二度くらい、少し劣化した水糸のひもが切れてしまい、時間をロスしてしまいました。そして、「苗問題」。最後十メートルくらいになったとき、光田んぼ上に植えるもち米の稲の苗が足りないのではないか! との危惧を感じて、途中からちぎる本数を減らしました。

 最後三列くらいは、自分の手に持っている苗を、他の人と分かち合いながら、なんとか端の畦まで辿り着くことができた! と喜びはつかの間。気づけば、お父さんはもう終わってしまっているー!!ゴールする十分前くらいから、早苗ちゃんにのったお父さんは外周に入っていました。

 「やった~!!!!」というお父さんの先に終わった歓喜の声が田んぼに響きながらも、聞きたくなかったのか、私は必死に集中して苗を植えていて、右から左に流れていました。素直に悔しかったです。でも、みんなと一丸となって、一生懸命に苗を植えていく時間が楽しかったです。
 
 光田んぼ上の手植えが終わった後は、池下田んぼから坂を上った場所にある池のほとりでお弁当を食べました。池下田んぼには何度も来たことがあったけれど、坂を上り、池が見える場所まで来たのははじめてでした。

 池の近くに立ったみんなは、下の道から見ると、空に浮いているように見える、とお父さんが教えてくれました。みんなと秘密の素敵なスポットを見つけたような、少年のような気分になりました。

〈永禮さんが特製の定規で、苗を植える条の直角を出して下さいました〉

 
 土手にすわると、池を見渡せます。何十メートルも奥に木が生い茂って、池を囲んでいます。池の岸に、木が茂っている場所を見ると、なのはなのみんなでなら秘密基地が作れそうで、想像すると楽しくなりました。
 
 手植えで一生懸命みんなと頑張ったから、池を見ながら、食べるお弁当はより一層美味しかったです。お父さんが結果発表してくれました。時間的には、お父さんの機械植えが早く終わったけれど、水糸のひもが切れたり、苗が足りなくなりそうになったりしたため、「今回は引き分け!」と教えてくださいました。

 よかった! と思ったけれど、来年は勝ちたいなあと思いました。そのあとは、池下田んぼの手植えを行ないました。永禮さんが昔ながらの植え方を教えてくださいました。まず、田んぼの端から端まで、五条おきに苗を植えていき、あとから、植えなかった四条を水糸を使わずに自分の目で間隔を取りながら植えていく、という方法です。

 
 間にあいた四条分を二人一組で、半分の二条ずつ植えていきました。後ろに下がりながらやっていくのですが、そうすると自分が植えたい場所に足跡がぼこっとついてしまって、稲の苗が植えにくくなります。でも、永禮さんが、それは自分の足ですっとならしてから、植えるのだと教えてくださいました。昔の人は、自分の頭と目と身体を巧みに使って、美意識を持って植えていたのだと思うと、すごいなあと思いました。

 私が植えた場所をあとで、畦から見ると、ぐにゃぐにゃと曲がっていて、とても難しいなと思いました。でも、昔の人はこんな方法で植えていたのだと知れたことが嬉しかったです。

 田植え最終日は、お父さんが光田んぼ下を植えてくれて、手植えでは、無事に光田んぼ上と池下田んぼをみんなと植えることができて嬉しかったです。 
 今年のお米が豊作になりますように。