【5月号⑤】「盛男おじいちゃんとブドウ棚作り」 さや

 池上三角畑はほんとうに気持ちのいい場所にあるなあと思います。特に朝。まだ少しだけ肌寒い時間、

 うぐいすと、池下田んぼのかえるたちの歌う声が、それだけが小高い空間に響いていて、逆にしんとするようで落ちつきます。

 池上三角畑のオーロラブラック。今は、ふわふわうぶげのはえた、花のつぼみのような新芽が伸び始めています。

 盛男おじいちゃんが連日来てくださって、作り方をわたしたちに教えながら一緒につくってくださっていたブドウ棚が、とうとう完成しました!

 

 

■ブドウ棚ができるまで

 立てた支柱に、番線を縦に四本、横に十二本張り、各支柱の一メートルほど外側に、支柱の側に先が刺さるように斜めにして、檜を削ってつくった杭を打ち込みました。

 最初は番線がまだゆるく張ってある状態で、おじいちゃんがその番線をピンとしっかり張るために教えて下さったのが「ターンバックル」という道具です。すでに張ってしまった番線をどうやってピンと張るのだろうかと思っていたのですが、教えて頂きながら実際にやってみて、なるほど! と思いました。

 まず、杭と、その杭とペアの支柱を番線でつなぎます。

 支柱にまきつけた番線の先はペンチの根元で挟んで持ち、伸ばした番線にぐるぐると巻き付けてとめました。とめたあとは、番線の位置が下がらないように、支柱にまきつけた番線を、「ステップル(先端を鋭角にカットした五センチくらいの番線をV字に曲げてつくった固定用ピン)」で挟んでハンマーで打ち込みます。杭にも、同じように番線を固定しました。

 

 

 そのあとですが、杭と支柱の間に張った番線をクリッパーで切断してしまいます。そこで登場するのが「ターンバックル」です。

 ターンバックルは、ねじ式で上下可動のフックが両端についた全長十二センチ程度のパーツで、両端のフックを最大まで伸ばすと三十五センチくらいになります。そのターンバックルを、両端を最大まで伸ばした状態で、切断した番線の間にいれ、フックへ番線をまきつけてそれぞれ固定します。そのあと、ターンバックルの胴の部分の空洞へ、シノを入れて回しました。すると、ターンバックルの全長がぐ、ぐ、っと縮まって番線がぎゅぎゅっと引っ張られて、支柱が杭側に傾ぎます。左右の支柱が外側にぐっと引っ張られたことで、支柱と支柱のあいだの番線をピンと張ることができました。

 盛男おじいちゃんにお手本を見せてもらいながら、しほちゃんとゆいちゃんと一緒に全部の番線をピンと張りおえると、奥行き二十三メートルほどある畑全体が、ぐっと引き締まって、立体的に整然として見えてすごくかっこよかったです。

 そのあと、古吉野前の古畑の一本のシャインマスカットの木にも、棚をつくりました。

 

 

 おじいちゃんが、みんなが少しでもたくさん食べられるように、と考えてくださって、シィンマスカットは左一本、右に二本、勢いの良い枝を残してあった状態でした。池上三角畑の木とちがい、植わっているところも畑の端のほうで、枝も三本あるため、どう番線を張ってどう誘引したらいいのだろうと困っていたのですが、おじいちゃんがぴったりの方法を教えてくださいました。

 まず、木から左右にそれぞれ六メートルのところ、木から手前に三メートルのところ、木の近くすぐのところの四箇所に、おじいちゃんの山から頂いた立派な檜の支柱をたてました。支柱はまっすぐで、すべすべしていいにおいがします。

 支柱をたてる地面に、盛男おじいちゃんが貸して下さった穴掘り機をつきたて、土を挟んで穴のそとへ出します。

 

 

■頑丈な支柱を目指して

 深さ六十センチほど掘ったところで、支柱をいれて、さらにその周囲を石でかこみ、一緒に埋め込みました。

 そうすることで、支柱がぐらつかずしっかりするのだと盛男おじいちゃんが教えてくださいました。

 次にそれぞれの支柱に、十字架のかたちになるように、ビスで横柱をとりつけました。ぶどうの木のもとに立てた支柱の横柱だけは、上から見ても十字になるようなかたちで二本取りつけます。そこに、各横柱の両端と真ん中を通るように番線を張って、最後に三本の枝を左右にそれぞれ一本、右に伸びていたものを一本、手前に誘引しました。

 盛男おじいちゃんにいろいろ教えて頂きながら一緒にぶどうをつくらせてもらえて、すごく楽しくて、勉強になって、ありがたいです。おじいちゃんは、わたしたちによく、「焦らないでゆっくりやってください」と言いました。おじいちゃんの動作はいつも落ちついていて、鉈でものこぎりでも穴掘り機でも、おじいちゃんが削る一削り一削りは、重量があって確実で大きいです。

 

■正しく理解する

 正しい道具の使い方、角度や態勢、刃のあて方、腕をふるう高さなどに、細かく「いいところ」ポイントがあって、そこを通ってください、とおじいちゃんは仰っているんだということが分かりました。

 番線の端を切ってステップルをつくるときにペンチでそれをつかむ位置。それをどう押しつけてV字に曲げるか。端を鋭角にカットするときの方向。完成品のあるべきかたち。それがどうして「正解」なのかの理由があるのだと思いました。

 わたしは認識力も身体の実行力も低くて、ひとの動作を見て正しく理解すること、自分の動作にそれを適切に反映させるということがものすごく苦手です。パッと見て、自分が理解できる浅いところだけしかインプットできなくて上手く出来ないということばかりです。

 でも、おじいちゃんと作業させていただいて、おじいちゃんの手元を間近で見させていただいたり、自分がやっているところを、「こうしてごらん」と修正してもらったり、完成がどうしてそのかたちであるべきなのか、ということを何度も説明してもらったりしているうちに、おじいちゃんの動作をどう見ていたらいいのか、それを自分のからだでどう再現したら良いのか、ということが、ちょっとずつピントがあってきたような感じがしました。

 おじいちゃんが、シャインマスカットは今年は実をつけるよ、と言ってくださって、すごく、楽しみです。みんなでおいしいぶどうが食べられるように、頑張ります。