桃の花も散り、いよいよ、三回あるうちの一回目の、桃の摘果が始まりました。一回目は予備摘果と言います。
初日は古畑で、お父さんお母さんはじめ、桃に携わるほぼ全ての人が集まり、あんなちゃんから講習会を受けました。
予備摘果をすべき時期は、花が満開となってから二十日から三十日頃、ガクが抜けるか抜けないかの時期、ということでした。
予備摘果では、三十センチ間隔でつける最終着果量の二倍の量を残します。
枝の先端と元の、実をつけにくい部分の実は優先的に落とします。それから、奇形のものや、極端に小さいもの、枯れているもの、針で刺した穴のような虫食いのあるものも落とします。
残った実は、枝の長さに応じた数で、枝の中間の実をつけやすい位置にある実を中心に残して、他を落とします。
少し前まで、ほんの爪の先ほどの大きさで、蝶の口のようにかわいらしい雌しべが先についていた桃の実ですが、講習会のときには、一センチほどの確実に目に見える大きさに成長していました。色は優しい黄緑で、綺麗な紡錘形をしていました。
私は今年から桃に多く携わらせていただいています。そのため、あんなちゃんの講習を受けさせていただき、いよいよ摘果だ、とドキドキしてきました。
講習会の後、十人ほどで開墾十七アールへ移動し、早生の品種から順に、実際に摘果をしていきました。
摘果は、虫や病気の危険性もあるので、決して取りすぎてはいけないけれど、残しすぎもよくないと、あんなちゃんに教えていただきました。
慣れていない分、実を落とすには、(本当に落としてしまって大丈夫だろうか)という不安もありました。摘蕾から摘果へ、実の数が少なくなっていくごとに、一つの実を落とす責任も重くなっていきます。
けれど、けじめを持って最終着果量の二倍にすることで、桃の養分も浪費せず、桃にとっていい手入れになる、と教えていただきました。
また、摘果をすると同時に、枯れ枝や、葉が全くついていない枝、病気の葉を、剪定ばさみで切り取ることも行ないました。
枯れ枝を切ると桃の木もすっきりするようで、嬉しかったです。
二日目以降は、あんなちゃんから作業スピードの大切さも教えていただきました。
桃の実は日に日に成長していくため、なるべく早く摘果を進めなければなりません。
考えるべきことはたくさんありますが、あんなちゃんの手元を見させていただき、あんなちゃんのスピードに少しでも近づけるようにと、心がけて摘果を行ないました。
あんなちゃんの作業は、本当に美しいです。桃の木に百パーセントの気持ちを添わせて、素早く的確に摘果を行なっている、あんなちゃんのように摘果ができるようになりたいと思いました。
作業を進める中で、あんなちゃんから新たに教えていただくことも多くありました。
葉が養分を引っ張ることができるため、葉の近くについている実は養分を吸っていい実になり、実の先に葉がない場合は養分が吸えず大きな実になれないこと。そのため、葉も見て残す実を決めること。
成木は、ひざから下についている実は、採光が悪く、甘い実になりにくいので、実をつけないこと。
実が一部、茶色く変色したようになっているのは、日焼けということも教えていただきました。実が小さい内に日焼けしているものは、これから大きくなるなかで治っていくので、大丈夫ということでした。
開墾十七アール、新桃畑、奥畑、石生畑と摘果を進め、だんだん、これくらい、という実の量が掴めてきて、摘果のスピードも上がってきました。
摘果のメンバー全体が、あんなちゃんにできるだけ近づこうという気持ちで一生懸命摘果をするという空気で、いい作業になっていくことを感じました。
石生畑の桃は二十四年生の老木で、とても大きいです。摘果も高い脚立を使いました。木が大きい分、本当に多くの実をつけることを感じて、すごいなあと思いました。石生畑では、桃の木陰でみんなで輪になって座って、少し休憩をしました。
そのとき、あんなちゃんからいろいろな桃についてのことを教えていただいて、嬉しかったです。
時折、赤く、火ぶくれしたようになって、ただならぬ空気の葉が見られました。それは縮葉病と言って、気温が高くなると自然消滅すること、なのはなでは今まで、その病気が実に表れたことはないと教えていただきました。見つけたら念のため切り取るけれど、あまり心配しなくていいよ、ということでした。
あんなちゃんの話を聞いて、そんな病気もあるのだなあ、と安心した気持ちになりました。
また、太い骨格枝についている実は、あまり甘くなりにくいと教えていただきました。けれど全て落としてしまわずに、少し残すことで、樹勢を加減することができるということでした。
桃を知り尽くしているあんなちゃんから、こうして教えていただけることは、本当にありがたいなと思いました。
何年も桃の手入れを続けて、甘い桃を毎年作るあんなちゃんは、本当にすごいなあと思います。
私も少しずつ、桃のことや手入れを知っていけることがとても嬉しいです。
これから続く摘果でも、さらにいい作業ができるように、一生懸命行なっていきたいです。