「眩しい日の出」 りな

4月10日

 今日の夜は、今年初めての霜対策がありました。霜予報が出ていて、畑では絹さややほうれん草、コマツナ、ジャガイモなどを、霜から守るために霜対策をして、桃も、燃焼資材を畑に設置して、夜間の見回りが行われることになりました。
 
 あんなちゃんや、あゆちゃんやりゅうさんも来てくださることになって、10人で霜対策に行くことになりました。あんなちゃんが、「2020年桃の霜対策」のファイルを用意してくださっていて、事前に目を通させてもらいました。
 
 去年は霜がたくさん降りて、何回もの霜対策の記録が書かれていました。1時間ごとの温度が記入されていたり、とても細かい情報が書き込まれていて、あんなちゃんが本当に凄いなあと思いました。去年の反省を踏まえて、今年は去年の約2倍の缶の数になっているんだと、あんなちゃんが伝えてくれました。霜から全部の桃の実を守ることはできないかもしれないけれど、出来るだけたくさんの桃の実を守れたらいいなあと思って、緊張する気持ちもあったけれど、やる気も湧いてきました。
 
 あゆちゃんとりゅうさんが来てくださることも、とても心強いなあと思いました。あんなちゃんとどれみちゃんと、なつみちゃんとりんねちゃんと、さくらちゃんとななほちゃんとよしみちゃんと一緒に夜は音楽室で寝泊まりしました。音楽室で寝るのは味噌づくりの時以来で、とてもワクワクしました。
 
 あんなちゃんから、夜の1時半から2時ごろ、着火になると思います、ということを聞きました。今から約4時間後には出動するんだなあと思うと、ドキドキしてあまり眠れませんでした。

 でも、いつの間にか寝ていて、あっという間に1時半になりました。列車のように、隣に寝ている人をトントンして起こし合いました。音楽室は真っ暗で、緊張と不安がありました。

 台所横の出入り口から外に出て、古畑へ走り出しました。外は、地面が見えないぐらい真っ暗で、刺すように寒くなっていました。真っ暗な中を、下って古畑までたどり着くと、オレンジ色の炎が点々と静かに燃えているのが見えて、とても幻想的で綺麗だなあと思いました。あんなちゃんが、火を点けてくれていました。少し寝ぼけていた頭も、霜対策がいよいよ始まったんだ、と改めて感じて、気が引き締まりました。

 真っ暗で静かな中、揺らめきながら炎が高々と燃えていて、桃の木が照らされている光景が、本当に綺麗だなあと思いました。そして空を見ると、一面星が輝いていて、明るい星、少し暗い星まで空を埋めていました。数えきれないほどの星に囲まれて、とても壮大な気持ちになりました。吸い込まれそうなほど綺麗でした。

 あゆちゃん、りゅうさんが大門ハウスから、ボクシーに乗って駆け付けてきてくれました。全員揃ったところで、あんなちゃんから少しだけ説明を聞きました。

 一人一つ、チャッカマンやガスバーナーを持って、次は夕の子桃畑に向かいました。あゆちゃんが運転をしてくれて、助手席にはりゅうさんがいてくれました。あゆちゃんとりゅうさんと一緒に行けることがとても嬉しかったです。
 車から降りると走って畑に行き、チャッカマンで一つ一つの一斗缶に火を付けていきました。今日は、新月でした。月が見えなくて、星の光だけが外を照らしているので、とても暗かったです。夕の子桃畑はまだ小さな苗木が植わっているので、苗木を踏むことがないよう、足元に注意しながら、視野を広く持つことを意識しました。

 一斗缶の中には、米ぬかやもみ殻を配合した燃焼資材と、その上にふりかけのように鉋屑が乗せられています。鉋屑は着火剤で、チャッカマンの火を鉋屑に付けると、すぐに炎が移りました。炎が最初は小さいけれど、やがて大きくなって、缶を超えるぐらい高く炎が上がると、とても嬉しい気持ちになりました。

 チャッカマンが冷えていてなかなか付けられなかったり、困ったりした時はいつでも霜対策のチームのみんなが助けてくれました。あゆちゃんやりゅうさんが、ライトでみんなの足元を照らしてくださりました。チームのみんなの存在がとても心強かったし、私も少しでも役に立ちたいと思いました。
 
 夕の子桃畑が終わると、石生の桃畑、奥桃畑、池上桃畑と次々に畑を回っていきました。住宅地の横の道を走っていても、時間が止まっているように一台も車とすれ違わなくて、とても不思議な気持ちになりました。私達しか起きていないんだね、と車の中で、ななほちゃんやみんなと話していました。寝静まった夜の中、畑を回って火を点けていくのが、スパイになったような、特殊捜査班になったような気持になって、ドキドキしたけれどとても楽しかったです。

 開墾桃畑は、桃畑の中でも一番缶の数が多い畑です。あんなちゃんやどれみちゃんが、事前に霜対策の準備として缶を置いている場所にスズランテープのついた篠竹を刺してくれていて、畑は広いけれど缶がどこにあるのかが分かりやすかったです。

 みんな、言葉は交わさないけれど一人一人散らばって、責任を持って火を付けました。一つ火を付けている間に、他に9つの火が灯っていて、広い畑もあっという間に全部火が灯りました。スピード感のある作業が、とても楽しかったです。

 開墾畑一面に、炎が上がっている情景が、ダイナミックで明るくて、その場を離れてしまいたくないぐらい綺麗でした。どの炎も大きく上がっていて、桃も喜んでいるようで、私も安心した気持ちになりました。霜から桃が守られていてほしいと、祈るような気持でした。

 一度、古吉野に戻って、40分の休憩をはさみました。そして、3時10分、再び出動しました。
 
 火が消えていないかどうか、見回りをします。一人一つ竹の棒を持って、燃焼資材をかき混ぜて燃焼しやすいようにしました。火が消えている場所は、もう一度チャッカマンで火を点けました。
 みんなが竹の棒を持って、火を囲んでいると、まるでどこかの民族のようでとても面白かったです。

 足元を見ると、地面に生えている雑草がキラキラ光っていました。少し触ると霜が降りていて凍っていました。霜が降りるところは目に見えないし、体感でもあまり分からないけれど、今も霜が降り続けているんだなあと思いました。

 火が灯らなかったら、あんなちゃんやあゆちゃんやりゅうさんが、油を足してくれました。時間との勝負で、出来るだけ鎮火している時間を少なくできるようにしました。全員が真剣な気持ちで、火を灯していて、私もその中に居させてもらって、自然と勇気が湧いてくるような気がしました。

 2巡目、3巡目と火の見回りは続きました。どんどん燃焼されて、火も少し点けづらくなってきました。でも、チャッカマンの火を近づけると、ボッと一瞬青い光が全体に広がって、炎が点く時があって、炎が復活してくれた時はとても嬉しい気持ちになりました。

 4時ごろになっても、外は暗かったけれど、空の色が紺色のような、少し明るい色になってきました。星は隠れてしまって、少し寂しい気持ちもしたけれど、太陽が近づいているんだなと思いました。

 車の中は、とても賑やかで、色々なお話をしました。いつの間にか、空が青色からグラデーションに黄色、赤色に変わっていて、虹みたいでとても綺麗だなあと思いました。どんどん空が明るくなって、日の出がもうすぐなのだと思いました。

 5時50分、夕の子桃畑を最後に、夜の見回りが終わりました。本当に、あっという間だったなあと思いました。緊張したけれど、とても楽しくて、達成感を感じました。外は明るくなっていて、桃の実も見えました。霜から守ることが出来て、本当に良かったなあと思いました。桃の実がとても尊くて大切なものに見えました。

 みんなで気持ちを一つにして、動いていた時間がとても楽しくて、その中に私もいさせてもらえたことがとても嬉しかったです。日の出を石生の桃畑で見ることが出来て、桃の木の間から、真ん丸のとても明るくて眩しい日の出を見ることが出来ました。あゆちゃんが写真を撮ってくれて、みんなで手を繋いでばんざいをしながら日の出を一緒に見ました。
 
 お父さんが、「朝日と夕日を見た数だけ幸せになれる」とおっしゃっていました。霜対策をして、みんなで桃の実を霜から守ったことを、朝日が喜んでくれているようでした。とても幸せな気持ちになって、この気持ちをずっと大切に持っていたいなと思いました。

 霜対策に行かせてもらえて、とても嬉しかったです。今日の夜も霜予報が出ていて、霜から桃を守れるよう、私も精一杯頑張りたいです。