「仲間と見た景色」 なつみ

4月10日

 1時30分。
 あんなちゃんにトントンと、起こしてもらい、わたしが隣の人を起こし、隣の人が隣を起こし。
静かに、霜対策部隊は動き始めます。
 外に出ると、ひんやりと冷えた空気。夜空には、星の数程の星、星、星。
 新月で月が出ていないからか、普段よりずっと多くの星が輝いていて、綺麗という言葉では足りないほどでした。

 まずは古畑から。
 と、思っていたらあんなちゃんが点火を済ませてくれていて、すでに、2本の桃は、一斗缶からの熱に守られていました。
 暗闇の中で真っ赤に燃える炎は力強く、延々と出る煙が桃を守ります。
 この時は、たぶんまだ半分夢の世界にいた気分で、あゆちゃん、りゅうさんの車に乗って移動しながら、だんだんと、桃の霜対策の気持ちが作られて、少し緊張していました。
 しかし、車内での会話でかなり緊張は解れ、やる気に変わっていきました。

 次に石生の桃畑。
 縦に一列に並ぶ桃の木に、走って点火していきます。
 既にマイナス2度。暖かい服装をしているからか、まだ寒くないなぁと、走って点火をしているとなおさら体が温まりました。

 夕の子、池上、新桃、と回って、最後は開墾17a、26aを点火しました。
 10人もいるからか、点火作業はあっという間です。
 開墾畑を点火し終え、道から畑を見下ろすと、点々と桃を照らす赤黄に燃える炎が揺らめき、まるで踊っているかのように幻想的な景色が広がっていました。
 こんなにも美しいものを見られるのなら、霜対策は何も苦ではないなと、霜は降りないほうが良いけれど、霜対策はまた参加できたら、そう思いました。
 点火作業を終え、一度、30分ほど休む時間をいただいたのですが、楽しくて興奮してしまい、全く眠れませんでした。

 3時に起きて、次は火の見回りを行います。
 畑にある一斗缶をかき混ぜて、底にある資材も燃えるように、みんなで畑を巡っていきました。
 時々、燃え尽きていたり、資材の割合が良くなかったりで燃えない缶もあったのですが、あんなちゃんがすぐに対策を打って、桃を守っていました。
 こうやって、あんなちゃんはずっと桃を守ってきたんだな、そう思うと、繊細な桃の木から感じる優しさは、あんなちゃんからの授かりものなのだと思いました。

 4時ごろになると冷え込みが強くなり、地域の桃農家さんも霜対策をされている姿があり、時には年配の女性の方々が集まって、協力して霜対策をしていらっしゃいました。守っている桃畑は違うけれど、桃を守っているのは同じなのだと思うと嬉しくなりました。
 霜は確実に降りていました。雑草はりゅうさんやあゆちゃんのライトに照らされて、キラキラしていました。

 5時頃になると、だんだんと空が薄く明るくなっていきます。
 日の出が待ち遠しいけれど、もう、霜対策が終わってしまうのかと思うと、寂しくなり、もう少し待ってほしいと思いました。
 
 しかし、当たり前ですが朝日は必ず昇ります。
 6時頃、石生の桃畑に向かう道中で橙の日が頭を出しました。
 霜の世界はこれから、柔らかな日差しで解けていきます。
 桃の木は、寒く、凍えた体をゆっくりと解かします。
 いつの間にか、いくつものの瞬く星は消えていて、新しい一日が始まります。

 大きな桃の木の下で、桃を守り抜いた仲間と手を繋いで万歳をしました。
 仕事だけじゃない、会話や言葉、動きの全てが思いやりであふれた仲間と一緒であったから、わたしの霜対策の思い出はかけがえのない大切な思い出になりました。
 仲間と見た景色は、どんな華やかなイルミネーションにも負けない、深く温かな、悲しくなるくらいに美しいものでした。

 最後にあんなちゃんが、「桃を守れたと思います」と笑顔で締めてくれました。
 桃の霜対策で得た元気を、明日はどんどんみんなのために使っていきたいです。
 霜対策に参加させてもらえて、とても貴重な時間を過ごすことができました。ありがとうございました。

 雨まえにやりたい畑作業がはかどるように、力を尽くしていきたいです。
 おやすみなさい。