【3月号⑬】「展覧会の見学へ ―― 藤井さんの版画の作品を見て ――」りんね

 毎週火曜日、なのはなにアコースティックギターを教えに来てくださる藤井さんから、藤井さんの作品が出展される展覧会へのお誘いをいただきました。

 藤井さんは版画をされています。版画と言えば、私は白黒のものが思い浮かびますが、藤井さんの版画は色彩豊かです。なのはなのお客様玄関にも、藤井さんの作品が飾られています。濃緑がにじむ葉の上に、ぽつりぽつりと真っ白な葵の花が映える、上品で圧巻の版画です。

 また、藤井さんからの年賀状にも、版画が印刷されています。優しい色合いで表現された一枚一枚が、私たちにとって宝物のようです。

 アコースティックギター教室の合間にも、藤井さんが展覧会へ向けて熱心に版画を制作されているお話をお聞きしていました。藤井さんが嬉しそうに版画の話をされると、私も少し、展覧会へ向けて心を込めて作品を制作する、胸が高鳴るような気持ちを共有させてもらうようでした。

 そのため、藤井さんの版画が展示される展覧会へ、みんなで行けると聞いたときは、夢が叶ったようで嬉しかったです。展覧会の会場は、津山市立文化展示ホールでした。初日は、お父さんお母さんと、約十五人ほどで赴きました。 

■展覧会へ

 エレベーターを降りると、正面に会場があり、藤井さんの姿が見られました。初めての場所で緊張していましたが、藤井さんのいつもの笑顔を見られて、とても安心した気持ちになりました。受付を終えると、藤井さんが一人ひとりにパンフレットを手渡してくださりました。展覧会は、『玄美会』という会の、十三名の作家さんが出展されたものでした。

 会場は照明の落とされた広いホールでした。一足踏み入れると作品の世界に変わって、洗練された美術館に来たみたいでした。作品一つひとつにスポットライトが当てられており、美しい作品が光を放っているように見えました。

 藤井さんの作品は、会場をぐるりと回った最後のあたりにありました。三点の作品が並んでいました。そこで、藤井さんがみんなに作品の解説もしてくださいました。

■藤井さんの作品

 中央の作品は『無我』という題名の、座禅を組んだお坊さんの手の版画でした。ブルーと黒と、グリーンを混ぜた美しい青緑一色の、濃淡だけで表現されていました。
 
 一目見ただけで、強く惹きつけられる作品でした。こんなに優しい“手”はあるだろうか、と思いました。手を見ただけで、その人物の静かで、包み込むような温かい心を感じました。人差し指と親指の縁にかけたハイライトまで、繊細なにじみがかかっていました。僧衣の濃い青緑が、その組まれた手を際立てていました。


 藤井さんは、「このにじみを出すのが難しいんだ」と、馬連を押す強さでにじみを表現する難しさを、嬉しそうにお話してくださりました。何度も何度も色を摺って、その中で一番いい作品を選ぶと教えてもらいました。

 左の作品は、『一輪』という、水瓶から咲いた一輪の蓮の花の版画でした。これは、藤井さんのお庭の、メダカを飼っている水瓶で、四年目にして初めて咲いた蓮の花を写したと、教えてもらいました。身の回りの小さな草花の美しさを、版画に収めて心に留めるということが、とても素敵だなあと感じました。

 右の作品は、『赤い実』という南天の版画でした。はがきサイズの小さな作品で、朱色の南天の実や、緑や黄色のグラデーションの葉が、淡い背景に重なって優しい空気を作っていました。

 これは、背景の淡いクリーム色を、油絵具で塗り、その上に水彩絵の具を重ねることで、優しい深みが出ることを藤井さんに教えてもらいました。


 版画の表現を深く求めて、自ら探し、深めていく藤井さんがすごいなあと思いました。
 「そんなに見つめられると恥ずかしいなあ」とはにかんだ笑顔で仰っている藤井さんが、素敵だなあと思いました。

 他の作家さんの作品も、洋画、日本画、書、水墨画、木版画と、多岐にわたりましたが、共通した日本的な優しさを感じました。墨で描かれた山々の中腹に、一色の薄桃色の山桜が浮かび上がっている水墨画が、とても印象的でした。その隣にあった、雪の降りしきる山裾の川が描かれた水墨画も、雪が本当に光って見えて、美しいなあと感じました。

 秋の木立から見た日本の町が描かれた油絵も、とてもなじみ深い、優しい日本の風景だと感じました。作品を見ると、作家さんたちも、藤井さんのように優しい方々なのだろうと思いました。

 藤井さんたちの展覧会へ、なのはなのみんなで行くことができて、とても嬉しかったです。改めて、アコースティックギターで藤井さんと一緒に優しい気持ちを追求して、表現できることが、嬉しいなあと思いました。私も展覧会を大きな節目として作品を作られる藤井さんたちのように、けじめを持って、目標へ向かって生活していきたいです。