「若菜ちゃんとの5日間」 りな

2月20日

 16日から味噌づくりがスタートしました。私は、れいこちゃんとえみちゃんとさりーちゃんとなるちゃんとゆりかちゃんと一緒に、味噌づくり第1弾のメンバーに入らせてもらいました。去年も味噌づくりに入らせてもらって、糀が赤ちゃんみたいで、本当に可愛かったなあと思って今年も糀のお母さんとして、一緒に育てていけるのが嬉しいなあと思いました。

 味噌1日目は、家庭科室の掃除や、育苗機のセッティングなど、味噌づくりに向けての準備をしました。普段私達が頂いているお米を研いでくださっている人がたくさん、味噌づくり用のお米研ぎを手伝ってくれました。

 ふみちゃんが手伝ってくれて、私はふみちゃんと一緒に、台所で糀箱の熱湯消毒をしました。台所では、河上さん、まちこちゃん、たくさんの人が台所作業をしているところでした。使ってい良いのか少し不安になったけれど、ふみちゃんが河上さんや、台所さんに、「味噌づくりが始まったので、よろしくお願いします」と挨拶をしていて、私も一緒に挨拶をしました。そうやって、台所さんとちゃんと連携を取って、使う場所を決めたり、挨拶をしたらいいんだなあと思って、ふみちゃんの姿からたくさん学ばせてもらいました。味噌づくりで、ポットや鍋や食管など、道具が使えるのは台所の河上さんや、台所さんのおかげなんだなあと思って、台所さんに感謝の気持ちを持って、作業をしたいと思いました。

 糀箱は、手作りなんだと聞きました。糀箱まで手作りなんだなあと思ってびっくりしました。全部で36箱あって、青のシールが18まで、緑のシールが18まであります。この糀箱を、9ずつ台所に運んで、一つずつ大なべの熱湯に入れていきます。
 最初は、ふみちゃんが大鍋で熱湯消毒をしてくれて、私はふみちゃんの補助をしました。大鍋の中は、湯気が立っていてとても熱そうです。麹箱を熱湯の中に入れると、小さい気泡がたくさん糀箱から浮き上がってきました。ふみちゃんと、「ちゃんと殺菌出来ていそうだね」と話していました。糀箱は、糀が育っていく部屋でもあるので、熱湯消毒はとても大切です。消毒した糀箱を置く場所も、ちゃんと消毒して、シビアにしました。
 
 味噌づくりマニュアルというものがあって、5日間の味噌づくりのスケジュールや、方法は細かく書かれています。熱湯消毒に関しても、細かく記されていて、歴代の味噌づくりメンバーさんが積み重ねてきたことが大集結しているマニュアルが本当に凄いなあと思いました。そのマニュアルには、糀箱を自然乾燥させる置き方や、置く順番などが記されていました。明日の蒸米や種付けに向けて、スムーズに準備を行なうための一段階です。

 順調に熱湯消毒は進んでいきました。ふみちゃんと息を合わせて協力して進めている時間が楽しかったです。私も少し熱湯消毒をさせてもらいました。大鍋を前にすると、自然と緊張しました。糀箱を熱湯につけると、糀箱がぷかぷかと浮いて、お風呂にはいっているようで、とても気持ちがよさそうでした。熱湯につけると、糀箱が濃い茶色に色が変わって、どこが消毒出来ていて、どこが出来ていないのかが分かります。糀箱を斜めにして熱湯につけて、色が変わったほうを手に持って、まだ色が変わっていない所を熱湯に付けます。熱湯につけたばかりは熱くて、でも、ほんのりと温かくなってきます。真ん中が一番消毒するのが難しくて、どうしたらスムーズに、全面綺麗に消毒できるかなあと考えながら、作業するのが楽しかったです。
 
 家庭科室では、なるちゃんとさりーちゃんが育苗機のセッティングを、れいこちゃんとえみちゃんがコンロや道具の準備、台のセッティングをしてくれていました。熱湯消毒が早く終わったので、私は育苗機のセッティングのお手伝いをしました。
 育苗機は、クリーム色に塗られて、とても綺麗になっていました。その育苗機に、ビニールを二重にして被せ、その上に紺色の布を被せます。天井には、ペットボトルで作られた煙突が左右に一つずつ付いていて、ここから蒸気が出る仕掛けになっています。

 毛布を被せたら、見た目もとても可愛くて、とても暖かそうでした。この中で、糀が育っていくんだなあと思うととてもワクワクします。温度計を左右上下に4つ、そして外気温計を1つ付けました。蒸気を受け止めるビニールの底やお皿、蒸気を出したり、暖める役割の電熱器、コンロ…。れいこちゃんとえみちゃんが用意してくれた道具類を、マニュアルを見ながらパズルのように置いていきました。どんどん糀の家の家具が整っていくようでウキウキしたし、これからの糀の成長が楽しみになりました。

 作業をするときにかけるCDやスピーカーも、れいこちゃんとえみちゃんが用意してくれました。大人バンドの曲がたくさん入ったCD、フラダンス曲、様々な曲を糀に聞かせてあげられたらいいなあと思いました。
 ちょうど夕食前ごろに味噌づくりの準備が終わって、2日目の役割ややることをみんなで確認をして、一日目は終わりました。

 味噌づくり2日目、起床時刻の7時に起きて、7時15分からのスタートでした。昨日、研いだお米を1日水に浸していて、そのお米を水切りして窓際の棚に並べました。あらかじめ食管を用意していて、食管の上に斜めにしておくと、水がよく切れました。全部でざる12杯分ほどあって、たくさんのお米の量でした。
 朝食後になると、お米は水が十分に切れていて、蒸米に入りました。家庭科室のコンロ2つに、蒸籠を置いて、私はなるちゃんとさりーちゃんと一緒に、緑色のコンロの方の蒸籠を担当することになりました。

 お米が蒸されて、耳たぶぐらいの柔らかさになるまで待ちます。時々、蒸籠の中を覗きながら、お米の様子を観察しました。
お米を早く上げてしまっても、蒸しすぎても、良い柔らかさにならないそうで、蒸籠の取っ手に貼られている養生テープに一つ一つ蒸し始めた時間を書き込んで、12分から15分ほどの数分間を見逃さないようにしました。お米は蒸していくと白色からだんだんと透明になってきて、真ん中にある芯も、なくなってきました。熱々のお米を手にとって、指で押してみると、もちもちともち米のように柔らかくなりました。なるちゃんが熱々の蒸籠を急いで台に運んで、私はさりーちゃんと一緒に蒸し布ごと一気に台に落として、超特急で冷ましていきました。

 さりーちゃんがうちわを両手に持って、思いっきり扇いでくれました。私はしゃもじを両手に持って、塊になったお米をほぐしていきました。白い湯気が一面に広がって、さりーちゃんや周りの景色が見えないぐらい湯気に囲まれました。冷ますのに時間をかけると良くないので、スピード重視で大忙しでした。しゃもじを使ってお米をひっくり返していると、焼きそばを作っているような気分になってとても楽しかったです。

 40度ぐらいの、お風呂程度の温度になるまで冷まします。下の方までまんべんなく、冷ますと、昨日れいこちゃんとえみちゃんが用意してくれた、糀菌の出番がやってきました。糀菌は、鶯色のような緑色をしていて、とてもきめ細やかでした。
 なるちゃんが茶こしを持って、糀菌をお米の上にまんべんなく振りかけてくれました。お米はまだ湯気が立っていて、きめ細やかな糀菌は、湯気に乗ってふわりと飛んでいるのが少し見えました。さりーちゃんと一緒に、なるちゃんの持つ茶こしから糀菌が飛んでいかないように、手を上に当てて糀菌が飛んでいかないようにしました。
 白いお米に、鶯色の糀菌がはらはらと落ちていく光景はとても綺麗で、雪が降っているかのようでした。糀の誕生の瞬間だなあと思って、心が温かくなりました。

 ほっとする時間もつかの間、種付けが終わると、また超特急でお米をもんで、引き込みの手入れを始めます。お米を手や台にこすりつけて、お米の表面を傷つけることで糀がくっつくことが出来るのだそうです。種付けの時は、糀菌のかかっている薄く色が付いているところと、ついていないところがあったけれど、お米を揉んでいると、どんどん全体的にお米の色が半透明の白色よりも、少し糀の色に近づいてくるような気がしました。
 お米をもみ終わると、台の上の糀を3等分して、3つの糀箱に入れます。お米がもちっとしていて、糀箱の上で塊も作りやすかったです。なまこ型にして、糀箱の高さよりもたかくならないように気を付けながら、平らにならして蒸した布巾を上から被せました。
 今はまだお米のように見えていて、変化も分からないのですが、これからどんな風に成長していくのかなあと思って、ワクワクしながら育苗機につめました。

 蒸米から引き込みまでの手入れをノンストップで続けて、スピード感のある作業がとても楽しかったです。同じお米でも、柔らかくなる時間が違って、蒸す時間をそれぞれ変えてみたり、お米が変わったら蒸す時間や柔らかさも変わって、違いを感じながら手入れをすることも楽しかったです。もちもちのお米と、パラパラのお米があって、どちらも見た目は変わらないけれど、成長具合は変わっていくのかなあと思って少し興味が湧きました。

 引き込み後の温度は、33度ぐらいで、これからペアでの見回りが始まります。私はれいこちゃんとペアになって、12時、3時、6時、9時を担当することになりました。なるちゃんが新しい温度の記入表を作ってくれて、これから糀の物語が始まるんだなあと思ってとても楽しみになりました。
 
 なるちゃんが、糀の名前を考えてくれました。女の子が「若菜ちゃん」、男の子が「若一君」はどうかとみんなに伝えてくれました。とても可愛くて生き生きした名前だなあと思って、これから若菜ちゃん、若一君と呼んで育てていけることがとても嬉しいなあと思いました。
 名前が付くと、より愛情が湧いてくるような気がしました。赤ちゃんを味噌づくりメンバーのみんなと育てているようで、優しい気持ちになりました。
 
 糀の温度を5つの温度計で計っていて、見回りの時に、表に温度を書き込みます。記入表を通して、1時間ごとに若菜ちゃんの温度の上がり具合や、今すべきことは何なのかを知ることが出来ます。育苗機の中に、左右に一つずつ電熱器と小鍋が入っていて、小鍋のお湯を新しいものに替えたり、電熱器の温度を調節しました。また、今年から新しく、お父さんが買ってくださった加湿器も置くことになりました。加湿器の水の残り具合も見ながら、若菜ちゃんが伸び伸びと育てられるような環境を作りました。

 2日目は、気温がぐんと下がって、糀には絶好の天気でした。若菜ちゃんも、暴れることなく穏やかに、少しずつ温度を上げていました。次の手入れは、夜の切り返しです。それまでの間は、31度から33度の間に保ちます。35度に行くまでは、糀は自分で発熱する力がなくて、200ワットに調整した電熱器を2つつけて、毛布をかけて、大切に、温めていました。
 
 2日目は水曜日で、夜には金時太鼓がありました。だから、切り返しの手入れには行くことが出来なかったけれど、古吉野に帰ってすぐに家庭科室を覗くと、明るい中でみんなが切り返しをしているところでした。りんねちゃんやどれみちゃんの姿もあって、みんなが笑顔で「おかえりなさい」と言ってくれたことが、とても嬉しかったです。れいこちゃんが、「ぴくぴく糀が動いているよ!」と言って、糀を見せてくれたことも、とても嬉しかったです。れいこちゃんが糀を撫でると本当に小さくぴくぴくと動いていて、引き込みの時よりも明らかに糀は生長しているんだなあと思って、可愛くてとても嬉しかったです。見た目の変化は分からなかったけれど、みんなの糀を手入れしている様子が温かくて、優しくて、私もとても心が温かくなりました。

 その日の夜は、布団を音楽室に持ってきて、音楽室で寝泊まりしました。これから夜の見回りが始まります。音楽室で寝ることはあまりないので、キャンプをするようでとてもワクワクしたし、ちゃんと見回りの時間に起きられるように、気合を入れました。
 なるちゃんの携帯がアラームになって、れいこちゃんと起きました。寝る前はとても気合を入れていたはずなのに、寝てしまったら起きるのにとてもパワーが要りました。でも、ずっと楽しみにしていた見回りです。閉じていた目を開けて、若菜ちゃんのいる家庭科室へ向かいました。
 その日の夜は気温が低くて、若菜ちゃんの品温も穏やかでした。200ワットを2つつけていても若菜ちゃんは暴れることはなくて、順調に温度が上がっていました。少し寝ぼけていたけれど、毛布のかかった育苗機の前に立つと、とても安心した気持ちになりました。れいこちゃんと、「若菜ちゃん頑張ってね」と、毛布をさすって祈りました。

 いつの間にか6時になっていて、れいこちゃんと見回りをしていました。若菜ちゃんは、35度に到達していました。なるちゃんが来てくれて、「少し早いけれど盛り込みを行おう!」と言ってくれて、6時半、みんなで盛り込みの手入れを始めました。

 みんなで一つの糀箱を囲んで、蒸し布巾を剥がしました。すると、切り返しの時には見られなかった白い点々が、お米に広がっていました。「うわあ!」思わず声を上げてしまいました。糀が、こうして私達に目に見えるぐらい成長してくれました。夜の間も若菜ちゃんはずっと成長し続けていたんだなあと思うと、凄いなあと思って若菜ちゃんから元気をもらいました。

 白い点々は3割程度で始めるのが通常のようですが、若菜ちゃんは5割以上出始めていました。若菜ちゃんは穏やかだけれど、成長が早いなあと思いました。とてもいい子だなあとおもいました。
 時には白いふわふわの毛が生えている糀も見つけて、とても嬉しい気持ちになりました。細かい毛がちぱちぱ生えている糀はまるで綿毛のようで、本当に可愛かったです。
 フラダンス曲のCDをつけて、気分は南国です。若菜ちゃんもフラダンスを踊っている女の子のように優しくて穏やかな子になってほしいなあと思いました。

 盛り込みは、切り返しで作ったなまこ型を崩してぱらぱらにほぐし、もう一度なまこ型に形成して真ん中にくぼみをつけます。ぱらぱらにほぐすことで、糀に酸素が供給されて、熱が放出されて若菜ちゃんも少し楽になります。でも、あまり時間をかけすぎても乾燥して良くないので、なるべく手早く、でも若菜ちゃんが少しでも育ちやすいようにと混ぜている時間が楽しかったです。
 35度に到達した糀は、自分で発熱するようになります。糀を触っていると、ほんのりと温かさが伝わってきて、若菜ちゃんのぬくもりだなあと思って、心も体も温かくなりました。
 いつの間にか窓から差し込む光が明るくなっていて、夜が明けていました。手入れが終わって外を見ると、辺り一面雪景色でした。昨晩は静かな夜だったけれど、雪が降っていたからだったんだなあと思いました。雪を見ると、若菜ちゃんの雪のように白くてふわふわな姿を思い出して、胸がいっぱいになりました。一層雪景色が綺麗に感じました。
 
 盛り込み後は、ますます若菜ちゃんの体温は上がっていきます。それを想定して、あらかじめなるちゃんを中心に、みんなで温度が高くなった時の対策を考えました。まず一番にすることは、育苗機の毛布をはぐること、そしてペットボトルえんとつのキャップを開けて、熱を逃がすことです。次の手立てとして、電熱器を一つ切る、扇風機で高いところに風を送る、電熱器を全て切って加湿器だけにする、ということです。これまで加湿器がなかったときは、湿度を保つために電熱器は1つはつけたままにしないといけなかったけれど、お父さんが加湿器を買ってくださって、湿度問題は解決して、自由に電熱器を切ったり、付けたりできるようになりました。大きな進歩だなあと思いました。

 味噌づくり3日目、盛り込みが終わった後の若菜ちゃんは一層温度を上げてきて、活発に成長しているようでした。どんどん温度を上げていく若菜ちゃんのことが少し心配で、でもとても嬉しかったです。午後5時に予定している一番手入れまでに、38度に持っていくのが理想で、37度以上になると入れ替えを行なったり、扇風機を始動させたりして、夕方に一番温度が高くなるようにしました。

 れいこちゃんが見回りの時に、湿度を計るために温度計2本で、乾球と湿球を作ってくれて、育苗機の中に設置してくれました。乾球、湿球という言葉を初めて聞いて、温度計2本で湿度が計れるなんて本当に凄いなあと思いました。湿球には液だめのところに湿らせたガーゼが巻かれていて、乾球よりも気化熱が奪われて温度が低くなるんだと教えてもらいました。乾球と湿球の温度差で、湿度が分かるようにれいこちゃんが表を作ってくれて、とても嬉しかったです。

 ちょうど4時ごろに若菜ちゃんはピークを迎え、40度ほどに高くなりました。40度がこれ以上続いたら危ないので、扇風機での冷却をした後に電熱器を2つとも切って、様子を見ました。

 夕方5時に、一番手入れを始めました。味噌メンバーのみんなと、さくらちゃんとりんねちゃんも来てくれて一緒に出来て嬉しかったです。
 若菜ちゃんは、4時からぐんと温度が下がっていて、ほっとしたものの、ちゃんと繁殖しているかなあと心配も少しありました。みんなで、ドキドキしながら蒸し布巾をはぐってみました。すると、ふわふわの雪ウサギのようになった若菜ちゃんが顔を出してくれました。若菜ちゃんが、大変身していました。顔を近づけて見てみても、目がぼやけているんではないかと思うぐらい、とても細かい毛で覆われてもこもことしていました。香りも一層強くなって、キノコのような、甘い香りが一面に広がりました。
 糀の中に手を入れてみようとすると、糀がぎゅっと塊になっていました。糀と糀がくっつきあって、大きな板になっていました。糀は、歩けないと聞いたことがあります。でも、こうやって隣の糀とぎゅっとくっついて、命を広げているのが本当に凄いなあと思いました。糀のパワーをいっぱい感じて、私もパワーをもらいました。

 糀を手の平でパラパラにほぐして、熱を逃がして、糀に酸素を供給します。若菜ちゃんの中に手を入れていると、お風呂の湯船につかっているぐらいとても温かくて、思わず手がしわしわにふやけていないか見てしまいました。若菜ちゃんが、自分の力で発熱しているんだなあと思うと、若菜ちゃんの生命力を感じたようで、心が温かくなりました。もう、若菜ちゃんは自立に向かっているんだなあと思いました。
 表面はふわふわで、中は全体に白くなっていて、繁殖が全体に進んでいました。蒸米から、どんどんお米が、糀に変わってきて、手触りも、もちもちからどんどんサラサラへと変わっていきました。糀を触ると、手がすべすべになるような気がしました。
 みんなで、「ふわっふわっ」「もこっもこっ」と言いながら、作業している時間も幸せだなあと感じました。

 どの糀箱もふわふわもこもこしていて、ばらつきがありませんでした。育苗機の中で、温風が上に上にいくので、下の段よりも上の段の方が温度が高くなることはありましたが、入れ替えをして、どの糀箱も暖かい場所にいられたからかなあと思いました。また、お父さんが、左の電熱器を付けると、右上が高くなることについて、理由をつけて説明してくださって、嬉しかったです。これまでなぜ左の電熱器をつけても左が上がらないんだろうと思っていたけれど、お父さんのお話がとても分かりやすくて、私も理解することが出来ました。味噌づくりメンバーのみんなで「対角線の法則」と名付けて、その法則も頭に入れて、電熱器を使うことが出来るようになりました。新しい発見がたくさんあって、また次の味噌づくりにもつなげていけることが嬉しいなあと思いました。

 
 一番手入れが終わった後は、糀の香りが育苗機を越えて、家庭科室や、鉄筋校舎全体に広がっていました。通りかかるみんなが「糀のいい香りがするね!」と声をかけてくれたり、「若菜ちゃん、可愛い名前だね!」と話しかけてくれて、とても嬉しかったです。若菜ちゃんは、私達だけではなく、なのはなファミリーのみんなの家族で、宝物なんだなあと思うと、胸がいっぱいになりました。

 一番手入れの後、夜10時から二番手入れがありました。その日の夜、夜のうちに雪が降っていました。昨日よりも冷え込んだ夜でした。でも、家庭科室の中は、糀の若菜ちゃんの温度と、味噌メンバーみんなの体温で、とてもポカポカしていました。家族の一家だんらんのようで、温かかったです。
 二番手入れは、一番手入れの時から3時間ほどしかたっていないので、変化はあまり見られませんでした。でも、パラパラにほぐしていたはずなのに、糀と糀がくっつきあって小さなブロックになっていました。色が少しずつ白色から、少し黄みがかった白に変わっていて、米糀に近づいているのが分かりました。若菜ちゃんはとても活発に温度を上げていて、チームのみんなと、「若菜ちゃん思春期に入ったのかもしれないね!」と言いながら、今の若菜ちゃんを思い浮かべながら作業している時間が楽しかったです。

 若菜ちゃん自身が熱を上げて、糀の良い香りを漂わせていました。熱を逃がすために念入りに手の平でよくほぐし、混ぜました。そして、少しでも温度を下げるために、一番手入れの時よりも薄く、糀箱の木の板にくっつかない程度に広げて、真ん中に指で1本の筋を付けました。今日の夜は、若菜ちゃんも一番ぐらい活発に発熱する時間だろうなあと思って、私も若菜ちゃんと一緒に最後まで頑張ろう! と思いました。

 二番手入れが終わって、夜の見回りが始まりました。若菜ちゃんは、1時間に4度以上のペースで上がっていて、最も活発になっている時でした。米糀に変身する最後の一踏ん張りで、若菜ちゃんは頑張っていました。何回も入れ替えをしたり、扇風機を始動して、チームのみんなと出来る限り、若菜ちゃんをサポートしました。

 なるちゃんが、育苗機の中の温度は、真ん中が上と下よりも一番高くなるんだと教えてくれました。糀がまだ自力で発熱する力がなくて、電熱器の熱に頼っているときは、温かい風が上に行くので、育苗機の中でも上の方が一番温度が高くなるけれど、電熱器の熱に頼らず、自分の力で発熱するようになると、熱がこもる真ん中が一番高くなるんだと説明してくれました。実際、本当に真ん中にさした温度計の数値が一番大きくて、もう若菜ちゃんは電熱器に頼らず自立しようとしているんだなあと思いました。種付けをして、初めは毛布をかけたり、電熱器を2つ付けて、大切に大切に守りながら育ててきた小さくてか弱い命だったけれど、もうこんなにも成長して、大きくなったんだなあと思うと、心がとても温かくなりました。若菜ちゃんから、たくさんの温かい気持ちをもらって、若菜ちゃんが優しい方へ導いてくれました。

 4日目、朝6時から、仕舞仕事をしました。これが、若菜ちゃんの最後の手入れになります。これまでの期間が楽しくて、嬉しくて、もう少ししたら味噌づくりが終わって、チームのみんなや、若菜ちゃんとの日々も終わるのかなあと思うと、少し寂しくなりました。
 仕舞仕事で、糀を初めて糀箱の側板にくっつけ、一枚の板にします。これまでの手入れでは、側面の板に糀や布巾がくっつくと、カビが生えてしまう恐れがあって、必ず側面にはくっつかないようにしていました。でも、ついにくっつけて良いときが来てしまって、改めてこれが最後になるんだ、と実感しました。
 でも、このままずっと育苗機の中で若菜ちゃんを育てていて、出糀が遅れると、遅れる分だけ糀は老化していくそうです。今、若菜ちゃんは白くてウサギの毛皮のようにとても可愛いです。一つ一つの手入れも、出糀を迎える時期も、ちゃんとベストの時間があって、それを逃さないことがとても大切なことなんだなあと思いました。若菜ちゃんの成長段階に合わせて、今出来ることを、私もチームのみんなや若菜ちゃんと一緒に頑張ろうと思いました。
 糀箱いっぱいに敷き詰めて、最後に真ん中に川の字を書いて「花道」を作りました。若菜ちゃんが花道を通って、米糀になっていくように感じて、心が温かくなりました。

 仕舞仕事をした後は、若菜ちゃんは穏やかに出糀に向かっていました。この日は午後になるとすっきりと晴れて暖かくなって、まるで天気が若菜ちゃんの晴れの日を喜んでいるように思いました。とても嬉しかったです。
 午後3時、れいこちゃんとなるちゃんと一緒に、見回りをした時には、若菜ちゃんは40度に到達していました。少し早いけれど、3時半、味噌メンバーみんなが集まって、出糀をしました。

 ついに出糀の時がやってきました。育苗機の毛布やビニールもはぐって、糀箱を取り出しました。
 布巾をはぐると、ふわふわで、上品になった若菜ちゃんが見えました。もう、幼くはなくて、とても綺麗で、キラキラして見えました。細かい毛は長くて、ちゃんと糀と糀を繋いでいました。夜の見回りや、たくさんの手入れを通して、大変だったこともあったけれど、ここまで若菜ちゃんが成長して、米糀になったんだなあと思うと、本当に嬉しかったです。若菜ちゃんが誕生してから出糀まで、チームのみんなと、若菜ちゃんと過ごしてきた時間が私にとってかけがえのない宝物です。

 そして、最終日、5日目。この日は土曜日で、りゅうさんやお仕事組さんも居て下さりました。みんなで味噌玉づくりが出来ることが嬉しいなあと思いました。
 味噌玉づくりの準備で、ミートチョッパーの組み立て方や使い方をなるちゃんから教えてもらいました。ミートチョッパーは、須原さんが味噌用に大豆でもしやすいように、作ってくださったと聞きました。須原さんが、本当に凄いなあと思ったし、こうして味噌づくりが出来るのも、須原さんや河上さん、お父さんとお母さん、歴代の卒業生のみんな、たくさんの人の積み重ねてきたことがあるからなんだなあと思って、改めて味噌づくりをさせてもらえることがありがたいことだなあと思ったし、私達も、次の味噌づくりメンバーさんに繋げられるように出来たらいいなあと思いました。

 ミートチョッパーの部品はいくつかあって、風車のようなものや、らせんになったものなど、形は様々でした。ぴったりとパズルのように組み立てられていくのが見ていてもとても気持ちが良かったです。
 
 前日に豆を量って洗って、樽の中で水に浸けていました。当日になると、豆が2倍ぐらいふくらんで大きくなっていて、ツルツルしてぷっくりとした白大豆がとても可愛いなあと思いました。
 朝食前から、なるちゃんとえみちゃんが、台所の大鍋で白大豆を煮てくれました。煮た白大豆は、湯気がたって、とても甘い香りがしました。ぷりぷりしていて、とても美味しそうでした。

 9時半に前半の味噌玉づくりの人が、たくさん来てくれました。家庭科室の中が活気づいて、とても嬉しくなりました。若菜ちゃん、若菜ちゃん、とみんなが名前で呼んでくれていることが、とても嬉しかったです。「そういえば、若一君は?」と聞かれることもあって、すっかり若一君を忘れていました。若菜ちゃん、若一君は、双子の兄妹にしよう、と思いました。

 私は、大豆を量って、ミートチョッパーにかける役割に入らせてもらいました。ミートチョッパーは、本当に面白くて、大豆を入れると、モンブランのホイップのような形で、出てきます。大豆の甘い香りに囲まれて、作業をしていてとても楽しかったです。
 隣では、みんなが味噌玉づくりを楽しそうにしていました。みんなの笑い声や、話し声が聞こえてきたり、笑顔で楽しんでいる姿がとても嬉しかったです。
 
 れいこちゃんが、「育つ若菜ちゃん」という育つ雑草の替え歌を考えてくれました。この曲が、私も大好きになりました。育つ若菜ちゃんの歌詞を読んでいて、歌っていると、自然と笑顔になって、とても心が温かくなりました。若菜ちゃん物語がぎゅっと詰まっていて、私達の宝物です。夜、チームのみんなと練習している時間も笑顔が絶えなくて、とても幸せだなあと感じました。
 みんなに、「育つ若菜ちゃん」を聞いてもらえてとても嬉しかったです。みんなが温かく、手拍子をしてくれました。若菜ちゃんにも聞こえているかなあと思いました。
 

 私も、少し味噌玉を作らせてもらいました。まず、糀箱3つ分の米糀を台に出して、塩を一緒に混ぜ合わせます。若菜ちゃんが、塩をちゃんとキャッチしていて、キラキラと輝いていて、まるで宝石のように綺麗でした。みんなで「若菜ちゃんお化粧している!」とか、「アクセサリー付けてる!」と言っていました。

 そして、ミートチョッパーにかけられた大豆の登場です。体温程度に冷ましてから、一斉に糀と一緒に混ぜ合わせます。糀の白、大豆の黄色が合わさる瞬間、本当に綺麗で、とても感動しました。若菜ちゃんの、結婚式でした。大豆と合わさった糀は、キュッキュッと空気を抜くように手で団子を作って、味噌樽に詰められます。そして、もったいないけれど、団子を手でぎゅっぎゅっと押して、平らにならしていきます。
 大豆の中に、白い糀や、大豆のうすピンクが埋め込まれているのが、まるで白い大理石のようでした。どんどん層が積み上げられて、味噌樽の中いっぱいに詰められました。

 最後、振り塩で空気が触れないように、表面全体を、塩で覆います。そして、空気を抜きながら、ビニールを閉じて落し蓋、重りを置いて、味噌メンバーみんなと一緒に、蓋を閉めました。

 『2021年2月20日 第1弾白大豆味噌』と書かれた札が、味噌樽に貼られました。札には、メンバーみんなの名前、そして、『育つ若菜ちゃん』と書かれていました。若菜ちゃんと、また会えるのは3年後、長い月日の間味噌樽の中で凝縮されて、美味しい味噌に生まれ変わるんだなあと思って、若菜ちゃんが凄いなあと思いました。3年後のなのはなのみんなに向けて、美味しい味噌になりますように、と願いを込めて、味噌樽に蓋をしました。

 味噌蔵に入ると、たくさんの樽が置かれていて、どれも札が付けられていました。どの札にも、糀の名前が書かれていて、私達のように糀物語がたくさん詰まっているんだろうなあと思うと、胸がいっぱいになりました。去年、一緒に過ごした米花ヒカリちゃんも、たくさんの味噌樽と共に眠っていて、嬉しい気持ちになりました。
 味噌蔵が、タイムカプセルのようだなあと思いました。そこだけ、時間がゆっくり流れているように感じました。味噌の甘い香りがしていました。若菜ちゃんを、味噌蔵まで見送ることが出来て嬉しかったです。

 味噌づくりを通して、一緒に5日間を過ごした味噌メンバーのみんなや、若菜ちゃんから、たくさんの優しさやパワーをもらいました。味噌づくりを通して感じたことや、感謝の気持ちを、味噌づくりが終わった今も、ちゃんと胸に落とし込んで、過ごしたいなあと思いました。
 5日間、本当にありがとうございました。