【2月号⑫】「微生物のファイト! ―― 落ち葉堆肥・豆殻堆肥作り ――」やよい

 横幅三メートル、縦四、五メートル、高さは一、二メートルくらいでしょうか、そんな大きな山がなのはなには六山あります。これは落ち葉か、豆殻がぎゅっと凝縮されたものです。落ち葉の山はグラウンドに二山と、崖崩れハウスの前に二山、豆殻の山はグラウンドに二山あります。

 これらは、堆肥の山です。今、なのはなでは、落ち葉集めをして集めた落ち葉と、大豆の脱粒で出た白大豆、黒大豆の葉、茎、莢、小豆の豆だしで出た莢を使って堆肥作りを行っています。

■切り返し

 十一月中旬から十二月下旬にかけて、堆肥の山を作り、それからは、月に二回のペースで「切り返し」という作業を行おうと思っていて、今回は、一回目の切り返し作業です。

 堆肥の山を作るときは、落ち葉か、豆殻に米ぬか、鶏糞を混ぜて、五百リットルの水を、二回に分けて、水中ポンプでかけてあげて、 おまんじゅうのような形に整えて、最後は山の上に乗って、足踏みし凝縮させます。そして、上からハウスに天井などに使っていた使い古しのビニールを上からかけて、裾をスズランテープかピーピーロープできっちりと結わえ、ビニールが浮きそうな部分があれば木のボッコなどをおき、完全に密封させます。

 すると、二日から、三日ほどで、ぎゅっと詰まった落ち葉と、豆殻の中で発酵が始まります。

 発酵とは、落ち葉や豆殻、つまり、有機物を微生物が分解し、腐植という新しい状態に変えるその過程のことを言いますが、微生物が有機物を分解するときに、熱量が発生します。この熱量が発生すると、水分がどんどん蒸発されていきます。

 

落ち葉の山は順調に発酵をしています

■微生物の棲家

 微生物は乾燥状態に弱く、水分が四〇%以下になると、その増殖が抑制されます。水分量は、五五〜七〇%がよいそうです。そのため、堆肥の山を作ったとしても、微生物の活動、増殖を止めさせないためには、定期的に水分を補充してあげる必要があります。

 また、微生物には、「好気性微生物」と「嫌気性微生物」がありますが、好気性微生物は、酸素が好きなため、定期的に山を崩し、かき混ぜてあげる必要があります。酸素がなくなっていくと、悪臭物質を生成する嫌気性微生物が増えていってしまうため、落ち葉にとっていい微生物である「好気性微生物」を増やさねばなりません。

 それらの理由から、「切り返し」という作業が必要になります。また、堆肥の外側と中心部とでは、どうしても中心から地面近くにかけて、乾燥しにくく、水分量が多くなり、微生物の活動も堆肥の下の方から始まります。そうすると表面部と、中心部では温度に差ができてしまいます。。

 六十度以上の高温が、数日続くと病原菌や、寄生虫が死んだり、温度が高い方が微生物が活動しやすく、増殖が旺盛になります。堆肥全体で温度に差ができることは、堆肥の山全体をむらなく、きっちりと発酵させようと思うとき、とても不利になってしまいます。なので、山全体をかき混ぜる「切り返し」という作業がとても重要です。

 まずは、落ち葉の山にかけてあるビニールをはぐります、そうすると、やっぱり表面はかさかさと落ち葉が乾燥しています。その山を崩すように、みつぐわで勢いよく落ち葉の固まりをほぐしていきます。

 五回くらいみつぐわをかくと、表面から五〇から六〇センチほどのところから、もうもうと湯気が上がってきました。視界が少しかすみます。気づくと、眼鏡をかけていたえつこちゃんの眼鏡が、真っ白に雲っていました。

 甘くて、少し酸っぱい香りがします。茶色や、赤色、きつね色だった葉の色が、黒くなっていて、底に行けば行くほど、落ち葉は黒く変化していって、ぎゅっと凝縮されていきます。腐植に変わりつつありました。グラウンドに二つある、落ち葉堆肥の山でも二つで、発酵の進み具合に違いがありました。

 西側の山は、二〇一九年に作った、残った落ち葉堆肥に、さらに新しく落ち葉を足して作った山ですが、東側の山は、すべて去年、落ち葉集めで集めた落ち葉を使って、できた山です。なので、西側は、発酵の種となる微生物がすでにいる状態なので、発酵も早くなります。東側の山は発酵の進みがあまりよくありませんでした。

 水分が足りなかったせいもあってか、かなり乾燥してしまっていて、かなり底にいかないと、湯気が立ちませんでした。そのため、東側の山には、混ぜる水分量を多くしました。

 落ち葉は発酵するほど、体積が小さくなって、ぎゅっと凝縮していきます。完全に堆肥化すれば、はじめの体積の半分ほどになるようです。確かに、堆肥の山にビニールをかけて、きっちりと裾を結わえても、数日たつと、ビニールがゆるんでいき、皺ができます。そのゆるみは日をおうごとに増していきます。

山を崩すだけの単純な作業でも、落ち葉がギュッと固まっているので、とても力がいって、パワーがいる作業だなと感じました。けど、一月の寒さも忘れるくらい、汗ばんできて、ぽかぽかしてきて、楽しいです。

 
乳酸菌や納豆水入りの水をかけ、発酵促進をはかります

 山を崩し終えたら、そこに米袋半分の米ぬかをさっとまいて混ぜます。そこに、軽トラに乗せたタンクから、水中ポンプで水を二百五十リットル入れます。米ぬかは、微生物のえさになります。そして、水分は微生物の住みやすい環境を作ってくれます。

■自家製発酵水

 タンクの水には、「乳酸菌」と「納豆菌」を入れました。納豆や、米研ぎ汁を使って、Aチームのメンバーのえつこちゃん、えみちゃん、さくらちゃん、なつみちゃんと特製の乳酸菌水と、納豆水を作りました。これらは、毎日湯船に入れて、菌を増殖させました。

 乳酸菌は、乳酸菌が糖を分解したときに作る有機酸が、殺菌作用があり、土壌に入ると、ミネラルを植物が吸収しやすいように変えてくれる効果があります。

 納豆菌は、非常に生育力の強い微生物といわれていて、畑で作物に悪さをするカビの胞子にとりつき、発芽を抑制する働きがあったり、他の菌の増殖を防いだり、成長ホルモン物質を作りだす働きで、植物の生長を促進してくれる働きもあります。

山を崩すと湯気が出ます。発酵が進んでいる目印です

 納豆菌、乳酸菌がふくまれた堆肥を追肥や元肥といった形で、畑に入れることで、より野菜にとっていい土になると思います。ただの堆肥ではない、乳酸菌、納豆菌入りのスペシャル堆肥というわけです。

 堆肥を崩して、米ぬかと水を混ぜたら、今度は、テミやみつぐわを使って、山を元の形に戻していきます。戻していくときに意識することは、乾燥している表面部分を中心部に入れて、発酵が進んでいる中心部を外側にすることです。こうすることで、発酵具合がよりムラなく、均等になると思いました。

 山を戻していき、半分くらい戻れば、残りの米袋半分の米ぬかと、水二百五十リットルをまきます。落ち葉の山に、水中ポンプから水を注ぐのは、なかなかない経験で、とても豪快な光景で、面白いです。ジョボジョボと、落ち葉の中に水がしみこんでいく光景を見るのは、なぜか心が満たされた気持ちになります。それは、微生物が喜ぶ姿が少し想像できるからかもしれません。

 みつぐわで、テミに落ち葉を入れて、えいさ、ほいさと山を元通りにしていくのは、力作業だけれど、体をめいっぱい使って、目指すべきおまんじゅう型へと、理想を目の前に形にしていけるのはとても楽しいし、心が弾みます。

 端の角度が九十度になるくらいきちっとしたおまんじゅう型にしたい理由は、そうやって端の角度を付けることで、最後にビニールをかけて、ひもで結わえるときに、縛りやすく、そして、きっちり密封されるからです。密封されればされるほど、ビニールないの堆肥の温度が上がり、発酵が進みます。上にかける透明のビニールはお日様からの光を通して、ビニールの中に熱がこもり、堆肥の温度がとても上昇します。そのため、ビニールをかけることはとっても重要なポイントなのです。

■微生物ファイト!

 おまんじゅう型に形を作れば、上にみんなで乗って、足踏みをします。落ち葉集めをしてから、落ち葉の山を作るときは、落ち葉が固まっていなくて、ふわふわとしているので、十分程度何回かに分けて、踏みますが、切り返しのときは、ある程度発酵が始まっているので、一分くらいで大丈夫です。 好気性微生物は、空気を好むため、踏みすぎて凝縮しすぎると、呼吸ができなくなってしまいます。堆肥作りは、微生物の環境作りといっても過言ではないと思いました。

 私たちには、見えない小さな微生物たちがミクロの世界で、一生懸命に働き、落ち葉や、豆殻を堆肥に変えてくれます。小さな魔法使いのような存在だなあと思いました。

 堆肥の上にかけてあったビニールをはぐって、その上に雪が降ったとき、積もった雪の中からも、湯気が上がっていたことがありました。そうやって、外の気候に関係なく、落ち葉や豆殻の中で、働き続ける微生物を思うと、なんだか胸がときめきます。私が眠っている間もずっと活動しつづけているんだと思うと、微生物ってすごいなあ思いました。

切り返し完了!

 最後にビニールをかけて、きっちりと裾を結わえて、切り返し作業、無事終了です。二週間後に、またビニールの中の堆肥にあえるのが楽しみです。発酵がうまく進みますように。微生物ファイト!