【2月号⑩】「寒さに負けない!温度管理で野菜を守る」やよい

 今Aチームでは、ハウスのドアの開閉、巻き上げの上げ下げなどで、ハウス内の温度管理を行っています。今年は、氷点下十度を下回る日が三日間続く寒波が来たり、夜から明け方にかけて、霜が降りる日が多く、野菜を育てる上で温度管理がとても重要です。

 おもに、温度管理を行っているハウスは、晩白柚が一本植わっている吉畑手前ハウス、サチャインチナッツが植わっている二重ハウス、春菊が植わっている崖崩れ道路側ハウス、アスパラ菜が植わっている真ん中ハウス、セロリが植わっている崖崩れ北ハウスです。

ハウスの温度を一定に保つ工夫をしています。ドアの前に板を置くことで冷たい風が入るのを防ぎます

    セロリはほとんど毎日収穫しており、アスパラ菜は二日に一回収穫していて、どちらも収穫野ピークに入ろうとするところですが、夜間の寒さでダメージを受けてしまっています。

 路地野菜では、池上三角畑に植わっている人参と、下町川上畑に植わっている大根に防寒用ビニールをかけています。

 畑のAチームでは、ハウスのドアの開け閉め、巻き上げの上げ下げなどを野菜の担当メンバーで、朝は作業のはじめにあけて、夕方は十五時にしめるというサイクルにしていましたが、それだと作業をはじめか、途中に抜けなくてはいけなくて、メンバーの人もやりにくくなってしまい、ハウスやビニールの開閉を忘れてしまうということが起きてしまっていました。

ビニールの開閉で温度調節をします

■機能する仕組みをつくる

 ハウスの開け閉めがうまくいかなくて、どの時間帯で行うかということを、スタッフさんのあゆちゃん、まえちゃんに相談させていただいたときに、朝食後、昼食後、夕方五時から六時の、みんなで掃除や野菜切り、配膳などを行うABパターンの時間に入れてはどうかと提案してくださいました。

 そして、まえちゃんが、「みんなが動きやすい時間で、開け閉めできるように考えた方がいいよ」と教えてくれて、(そうするべきだったんだ)と思って、みんなのやりやすさを考えることが欠けていたな、と気づきました。

 あゆちゃんが、すぐに朝食後、昼食後、夕食後にハウス開けA、ハウス開けBという二人一チームを二チーム作ってくれて、ABパターンの時間に入れてくださいました。

 あゆちゃんに相談させてもらったときに、「天気予報で、このくらいの温度のときには、ハウス内は何度まで上がるということ調べて見たらいんじゃないかな」と、教えてくれました。

 あゆちゃんのその一言をきっかけに、私は(そうか、そうすれば良かったのか)と思って、天気予報と実際のハウス内、畑の温度を徹底的に調べようと思いました。ハウスの温度管理がうまくいかないことで、いくつかのことに悩まされていました。

 夜間の気温が平均で、マイナス五度くらいになる日が多く、ハウス内であっても野菜が凍ってしまうこと、そして、日中に温度が上がったときに凍った野菜が溶けて、そのときに、凍った細胞膜が溶けると同時に破裂してしまい、野菜が溶けて腐ってしまうこと。最高気温が二度程度であっとしても、日中にずっとハウスをしめたままにすると、湿度が高くなり、こもってしまって、根元にカビの被害が来てしまうこと。

ハウス内の温度変化の推移を研究しました

 春菊、アスパラ菜、人参、大根は生育適温がおよそ十五度から二十度前後、晩白柚、サチャインチナッツは、二十度から三十度なのですが、逆に開けたままにしておくと、昼の一時から三時頃のピンポイントをのぞいて、十度以下に下回ってしまいます。温度が冷えると、葉の色が薄かったり、葉の光沢や艶がないことから、野菜が萎縮して元気がないことが一目で見て取れました。

 「健やかな野菜を収穫する」ということが一番の目的で、そのために野菜にあった温度、湿度にしてあげること、そのことで、凍害やカビの被害をなくしたいと思いました。何よりも、日差しがさして、暖まったハウス内の野菜、特にセロリは、温度が十五度から二十度程度くらいだと、葉がキラキラしてとても嬉しそうでした。

寒さが厳しくなる前に、各ハウスの巻き上げやドアなどの修繕も行いました
 

 畑の温度を調べるために、パソコンのインターネットで、一日の一時間ごとの気温をチェックし、畑との実際の温度を比較しました。天気予報の温度は、夜に確認したときと、朝起きて確認したときとでは、たいてい温度が変わっているため、朝起きて一番に確認し、その後も昼や夕方にもう一度確認するのが一番よいということがわかりました。

 勝央町の天気、温度が表示された天気予報では、大体日の出前に一番温度が下がり、最高気温になるのは、午後三時のことが多かったです。そのため、日の出前に畑に行くことはできないので、朝起きて一番に畑に行って、温度を確認し、午後三時に行って実際ハウス内は何度かということを確認しました。

 朝七時に起きてからと、九時半の朝食後、午後一時の昼食後、最高気温になる午後三時、ハウスを閉めに行く午後五時頃、はじめの四日間は四回から五回、温度を確認しました。そうすると、いろんなことが見えてきました。

■見えてきたこと

 まず、六日間中、五日間は一日のなかで、ハウス内で一番温度が上がる時間帯が午後一時から二時前後の時間帯だということが分かりました。日にもよりますが、平均して、その時刻が一番温度が上がりやすいんだなと思いました。

 そのため、九時半から十時頃の朝食後にハウスを開けにいったときに、前後のドアを開けて、巻き上げもすべて上げて、全開にすれば、最高気温になる一時に向けて、備えることができます。例え、ハウスを開けたときにハウス内が二度や三度であっても、日が差してくれば、ハウス内の温度は一気に二十度近くに上がり、日によっては三十度になってしまう場合もあります。

【アスパラ菜】
【セロリ】

 

 ハウスの開閉ができる、朝食後、昼食後、夕食前の三つの時間のなかで、朝食後に巻き上げやドアをすべて開けきってしまうことが一番ベストだと思いました。そうすることで、ハウスの内に風が入り、換気をすることができて、実際にカビ被害も治まりました。

 

 午後一時半頃にハウス閉めに行くときは、約一時間後からは温度が斜め下がりになる一方なので、ドアを閉め、巻き上げをしめることにしました。けど、これも日によって違って、まだ晴れきっていたら、ドアだけ開けておく場合や、巻き上げも全部上げておく場合もあります。最高気温が二、三度の日であっても、太陽の日差しを受ければ閉めきったハウス内は三十度近くになります。

 

 朝食後にハウスを開けに行ったときに、全開に開けても、そのあと結局、日差しが照っている時間よりも、お日様が雲で隠れる時間の方が多くて、低い気温の中で、巻き上げや、ドアを開けっ放しにしてしまって、昼食後に温度を見に行っても、六度ほどしかないときがありました。けど、そういう日は空を見たときに、お日様がでていても、空の半分以上が雲で覆われていました。

■未来を予測する

 このような失敗をなくすためには、空を見て、判断すればいいのだということに気づきました。朝食後にハウスを開けに行ったとき、晴れる予報であっても、空を見て、雲が空の三分の二以上をしめていれば、お日様が出ていたとしても、日差しが雲で遮られてしまい、ハウス内の温度も上がらないです。逆に、空に一切雲がなく、真っ青な空であれば、そのときの気温が一度などで低かったとしても、すべて開けておいた方が、数時間後のことを思うとよいのだということが分かりました。

 今まで私は、その場限りの短いスパンで野菜を見ることが多かったと思いました。そうではなくて、一日の中で未来を予測して、ハウス内の温度を見越して、野菜が過ごしやすい環境を作ることが一番大切だと思いました。

晩白柚はブロックで囲み冷気から守っています
 

 崖崩れ道路側ハウスに植わる春菊、崖崩れ北ハウスに植わるセロリには、ハウス内の野菜が植わっている畝に支柱を立てて、防寒用ビニールをかぶせています。夕方の五時に、ビニールをかぶせて、夜間は二重のビニールに守られています。それでも、氷点下三度以下になると、ビニール内の春菊、セロリも凍ってしまいます。

 ビニールを二重にしているにも関わらず、なぜ野菜は凍ってしまうのか。という疑問が私の頭の中に思い浮かびました。そこで、調べて見るとその理由が分かりました。そもそも、ビニールという資材には、熱を吸収したり、保温するという効果はまったくないということが分かりました。

■根拠を考える

 では、なぜ、天気が晴れたときに、ハウス内の温度が外気温よりも上がるのか、それはハウスの外の空気は、太陽の日差しで温度が上昇しても、風などで熱があちこちに飛ばされて拡散されてしまいます。しかし、ハウス内は、風が吹かないため、暖められた空気は、風に拡散されて、飛ばされるということがなく、ずっと同じ場所に居続けることができます。なので、ハウス内の温度が外気温よりもぐっと上がりやすいんだと思いました。

 ビニールは保温したり、熱を吸収する力はないため、外気温が下がるともちろんどんどん、ビニールないの暖かい空気は、ビニールの外へと逃げていきます。なので、外気温と同じように氷点下になってしまうのだと思いました。だからといって、ビニールにまったく効果がないという分けではなくて、風がないことや、日が差すと熱がこもりやすいので、かけてあるのとないのではやはり全く違います。

 各ハウスや、畑の気温を調べていると、朝食前の七時にすぎに見に行くとき、いつも吉畑手前ハウスだけが外気温と同じか、零、五度冷えているときもありました。

 各ハウスや、畑を同じ時間に見回っても、温度が少しずつ違います。池上三角畑は、朝見に行ったときに、人参にかけたビニール内の温度が、他のハウスのビニール内の温度の中で一番高かったです。池上三角畑は高い位置にあって、日差しを遮る物がなにもなく、とても日当たりがよいです。日中、おひさまが出ている時間に池上三角畑に行くと、太陽に手が触れそうなくらい、太陽の距離が近い、と感じました。そのため、日中に地面が太陽の光をたくさん吸収して、夜間になっても、その熱が地面から逃げ切れていないためではないか、と思いました。

 なぜ、吉畑手前ハウスが一番温度が低くなっているのか。それは、「放射冷却」という現象に理由がありました。太陽が出ている昼間、地面は熱を吸収しますが、夜間になると、地面が吸収した熱はどんどん、上へ、上へと宇宙へと帰って行きます。ハウス内も同じことがおきます。

 ハウスの外は、この放射冷却が影響しない空気があったり、風が少しでもあると、放射冷却が邪魔されて、熱が逃げない箇所も出てきます。しかし、ハウス内は、風が一切ないために、何にも邪魔されることなく、放射冷却の影響を受けてしまい、どんどん冷やされて、場合によっては外気温よりも低くなってしまうのです。

現在の気候に合わせてのハウスの温度調節のしくみが上手く機能しています!

 そして、ビニールが二重にかけられてある場合は、放射冷却の影響を受けにくいということも分かりました。

 一重目のビニールと、二重目のビニールの間が二、三センチ以上である場合は、放射冷却で地面から熱が逃げようと思っても、ビニールとハウスの天井の間に空気の層があるため、外へ熱が伝わりにくくなります。そのため、二重にビニールをかけてあるハウスは、野菜を寒さから守ろうと思うとき、とても良いということです。

 この「放射冷却」という現象は、雲がなく晴れていて、風がない日、という、いくつかの条件が重なったときにのみ起こります。ので、必ずしも、いつもビニール内が外気温よりも下がるということではないのだと思いました。

■「じわじわ解凍方式」

 ハウス内に設置した温度計は、崖崩れ道路側ハウスは、ハウス内にかけたビニール内に設置し、二重ハウスも、ナッツの支柱に設置しているため、二重のビニールの中においてあります。吉畑手前ハウスは、ハウス内に設置しました。そのため、吉畑手前ハウスのみ、他のハウスと違って、ビニールが一重の場所に温度計があることになります。

デジタル温度計も活用しています

 そのため、雲がなく、風がない日の夜間になると、他のハウスよりも吉畑手前ハウス内が冷えるという現象が起こるのだと思いました。ハウス内で、ビニールをかけても、野菜が凍ってしまうのを防げないのであれば、どうやって野菜へのダメージを軽減できるのだろうと思いました。

 崖崩れ真ん中ハウスに植わっているアスパラ菜ももちろん凍ってしまって、とても大きなダメージを受けていました。土地の寒暖差が大きいために、ハウスの中で急に温度が上がって、凍った野菜が溶けたときに、細胞膜が破裂してしまいます。そのせいで、アスパラ菜の葉には大きな白いシミが葉脈にぶわっと広がるように出て、どの株にもそのような症状が出てしまいました。野菜の葉が垂れて、しなっとしてしまい、細胞膜の破裂といいかなりのダメージです。

 お父さんに相談させていただいたときに、溶けるのをもっと、じわじわとゆっくり溶けさせれば、細胞膜は破裂しないのではないか、とアドバイスをいただきました。

(なるほど!)と思って、早速実践することにしました。その名も、「じわじわ解凍方式」です。

 例えば、朝食前に崖崩れ道路側ハウスの中のビニール内に設置した温度計を見ると、七時二十分の時点で、マイナス一度ですが、朝食後にハウス内のビニールを開けにいったときは、九時半の時点で十二度まで上がっています。約一時間の間に、十三度の温度の変動があったということになります。

急激に温めないようにじわじわ解凍します

 朝、起きて日の出が七時半すぎに昇ってきていたら、朝食前の八時半前後で、ハウスの内のビニールを開けて、ドアも、巻き上げも上げきってしまいます。その時点での温度は三度です。最高気温、最低気温がほとんど同じ日に、七時二十分の時点で、ハウスのビニール内の温度がマイナス一度、朝食前の八時半にビニール、ドア、巻き上げを開けて、三度、九時半の時点で八度と、二時間の間での温度の変動を九度に押さえることができました。

 実際に、気温が上がった日中に野菜を見ても、葉が萎れ具合が軽減されていることが分かりました。野菜が凍ること自体は防げなくても、解凍方法を工夫すればいいんだなと思いました。

 ハウスを開ける時間を変えることで、こうやって、温度の変動を緩やかにして、じわじわと解凍させて、野菜へのダメージを軽減することができてとても嬉しかったし、面白いなと思いました。

力を合わせて寒さを乗り切ります!

 まだ研究の余地はありますが、ハウスの開け、閉めは少しずつ確立されています。これからも、温度を調査しながら、野菜に合わせた温度管理を頑張っていきたいです。