【新春号⑧】「紅白で 出会うはまだ見ぬ あなたと私 ――NHF紅白歌合戦――」なお

 NHF(なのはなファミリー)紅白歌合戦。それは出演する一人ひとりの、二〇二〇年心の総決算のステージです。替え歌の詞を作り、寸劇のセリフを考え、衣装を考案し、チームのみんなでたった一つのオリジナルの表現を作り上げます。

 いまの自分の未熟さも、失敗も、ありのままの気持ちをさらけ出して、そこから前向きに次のステップに進む決意を表現します。素の自分ではない、何者かを演じて、演じて、演じきります。そして、見つけるのです。新しい自分を。新しい仲間の姿を。

■殻を破って表現する

「演じたのではなく、あるべき自分自身を取り戻した。その姿にとても感動した」

 さきちゃんチームの振り切った演技を見て、お父さんはこう話してくれました。さきちゃんチームは『野菜時代』という農業アイドルとその大ファンのオタクになりきり、全力で演じました。その演技と歌にみんなも、私も終始笑いが止まらず、その笑いの中に感動がありました。自分の殻を破り、のびのびと表現する姿に、「これぞなのはなの紅白歌合戦!」と心動かされました。表現しながら自分を作っていくということの意味を、あらためて感じます。

 自分が思う自分にとらわれず演じたとき、自分のあらたな一面(魅力)に出会います。自分の愛するものに迷いのなく突き進み、切れ味のあるセリフを放つさきちゃん。大好きなアイドルを前に感極まり涙を流し感動するせいこちゃんの純粋さ。アイドルのえつこちゃんとのえちゃんもマニアックに演技を極めています。警備員のどれみちゃんの冷静ながらもあたたかく人情味も感じるつっこみ。そしてなのはなならではの、農業専門用語に溢れる台詞回し。私たちだから作れる、私たちだから味わえる面白さでした。


 どのチームも、紅白だからできる表現を全力で作りました。ずっと演じてみたかったキャラクター、踊りたかったダンス、あこがれの衣装、大好きな曲、思い切り叫びたい気持ち、決意、みなが内に秘めていた熱い思い。それを一緒に表現できるチームのメンバーがいて、受け止め楽しんでみてくれる家族がいます。殻を破る一歩は、紅白だから踏み出せます。

 そして、自分が表現するだけではなく、他のチームのステージを見ることでも、勇気が湧きます。私も紅白でみんなのパフォーマンスを見て思いました。もっと私も変わっていけるんだ、と。自分ってこういう人、といつのまにか固まっていた『私らしさ』を一枚脱ぎ捨てて、深みや幅をつけていける可能性が自分にもあると感じました。もっと自由にのびやかになれる、と思えました。心のフレームが、一回りも二回りも広がっていきます。最高ではないか、なのはな紅白歌合戦!私が紅白が好きな理由が、ここにあります。

 私は、実行委員として、オープニング寸劇でオノ・ヨーコになりました。司会のつなぎは、音楽に関することの雑学や豆知識でした。そこからイメージを膨らませて、伝説の音楽家たちが一夜限り蘇る、というコンセプトで寸劇を作りました。音楽家たちは、表現する喜びに溢れるNHF紅白歌合戦を見ずにこの世を去ったことが心残りだ、と紅白を見るために集まります。

 ロックポップス界、クラシック界、日本歌謡界。国境を越え、時間を超え、音楽を愛したアーティストを紅白に招きました。なおと・ジョン・レノン、のん・マイケル・ジャクソン、りな・ショパン、まよ・レナード・バーンスタイン、あゆ・美空ひばり。そして私はヨーコ。あれは二九日だったでしょうか、お父さんが集合でオノ・ヨーコについて話をされたときはあまりにもタイムリーでどきっとしたのを覚えています。

 オープニングでジョンとヨーコが四十年の時を経て一夜限り再会し、その愛を確かめます。別れが来てしまった悲しみよりも、出会えたことの幸せをかみ締め、そして人生に起こることは全て良いこと、と。二〇二〇年のなのはなにも、色々な出来事がありました。良いことも、大変なこともあったけれど、それは全て良いことで、次につなげていけるのだという思いを込めます。今宵甦った音楽家と、なのはなのみんなで、思い切り楽しもう!さあ歌合戦は始ります。


■気持ちを込めて

 出場は全十六組。私はしほちゃんチームで『ステイング・パワー』を歌いました。テーマは、美しく生きることです。利他心と誇りを持った、美しい生き方です。ゆいちゃんが土台の台本を書いてくれました。なにができてもできなくても、堂々と、誇りを持っていたいという気持ちで、私たちは登場から自信に満ちたパフォーマンスをしました。

はじめて紅白に出るまりなちゃんが、なりきって演じていたことがとても嬉しかったです。まりなちゃんの強いまなざしと、セリフが輝いていました。ゆいちゃんのセリフ「自分を握りしめないで。自信のある人は、埋もれることができる」が心に残ります。いつでも、自分にこだわらず、何者にでもなれる人でありたいと思いました。そして人生にゴールはなく成長し続けていく気持ちを表現しました。

 お互い様で、手を繋いでごろんとよくなっていくというセリフも、みんなで大事にして言えたのも嬉しかったです。

 紅白のトリは、白組お父さん、紅組お母さんです。全力で歌い演じ、すべて出し切った心に、お父さんとお母さんの歌が染みわたります。この曲をずっと歌い続けていく、とお父さんが話す『傘がない』。いつも誰かの元に走って行く、それが僕の人生のテーマなのだ、と。そう、お父さんは私たちの心に、いつも全力で駆けつけてくれます。

自分の人生(舟)を、自分の手でこいでいけ、とお母さんは歌います。『宙船』。この曲もまた、お母さんのテーマのように感じます。いつもあるべき社会、あるべき人と人の関係を強く思い描き、人生を切り拓いてきたお母さんが、私たちに生きる姿を歌で伝えてくれます。

 紅白歌合戦を終えた私は、これからどんな自分に出会おうか、どんな自分を見つけようかと、いう期待に満ちていました。いまの自分にとらわれず、演じて、表現して、出会っていきます。優しく、美しく、強く。そう生きられる自分と出会える未来があるから。