【12月号㉔】「みんなを笑顔にする密かな夢、実現!  ―― なのはな産のキャベツを使ってお好み焼き作り ――」 よしえ

「突然なんだけど、いま温めている案を聞いてもらえないかなぁ……」
 なおちゃんがそう言ってくれたのがきっかけでした。
 なおちゃんのその言葉だけで、私の胸は躍りました。
 内容を聞かなくても、なおちゃんの案、アイディアは、いつも楽しくて楽しくて、そしてみんなのためであるからです。

「キャベツが取れる時期になると、いつも、お好み焼きをしたいな…と密かに思ってたんだけど、今回私たちBチームになったチャンスに、みんなにお好み焼きを作りたい!」と、なおちゃんが密かな夢を語ってくれました。
「なおちゃん……私も作りたい!」

 Bチームのみんなが育ててくれた、美しいなのはなのキャベツ。
 この暑い暑い夏を乗り越えて、大きく育ったなのはなのキャベツ。
 秋キャベツの時期が終わってしまう前に、絶対に実現させたい! みんなの喜ぶ顔が見たい!
 私たち、Bチームになったのは何かの運命…。仕事組みんなで作りたい!
 なおちゃんの夢が、いつしか私の夢にもなりました。

 それからなおちゃんが、みんなに声をかけてくれて、今回できるメンバーを募ってくれました。
 仕事組のみんなも「是非やりたい!」ということで、なおちゃんの夢が、どんどんみんなの夢になっていきました。
 夢実現に向けて、密かに計画を進めました。

 仕事から帰ってきてから、集まれる仕事組で試作を作りました。
 A.片栗粉を入れたもの、B.オーソドックスなもの、C.山芋を入れたもの、三種類のお好み焼きを作りました。
 お父さん、お母さん、河上さんに見て頂いた結果、好評だった、山芋を入れたお好み焼きに決まりました。
 そして、お父さんから、生地を混ぜすぎない。というアドバイスをもらいました。

 河上さんも、お勧めのレシピを教えてくれて、一緒に考えてくださいました。

 前日までに動画を見て、イメージを持って、当日に臨みました。

 

■気持ちがぎゅっと詰まって

 いよいよ当日です。前日から上手くいくか、とても緊張していました。

 朝食後、昼食後に、キャベツとネギをカットし、準備、調理は午後。そして、みんなには熱々を出したいので、十七時過ぎから焼き始めるという段取りでした。
 朝食後、仕事組でキャベツをカットしました。

 キャベツの大きさにも拘りました。二〜三ミリ×三センチ。このサイズが、美味しく焼ける大きさです。

 みんなが育ててくれた、きれいで大きなキャベツ。
 切っているときも、とても柔らかくて瑞々しくて、こんなに立派なキャベツでお好み焼きを、焼けるなんて……と、とてもありがたくて、贅沢な気持ちになりました。
 それもそのはず。
 この日、お好み焼き用のキャベツをお願いしていたのですが、しほちゃんがきれいなキャベツを収穫してくれていたのです。
 お好み焼きに入れるネギも、ゆいちゃんが空き時間に採ってきてくれていました。

 みんなの気持ちが嬉しくて、そして、みんなが楽しみにしてくれているのが伝わってきて、これは絶対に美味しいお好み焼きを作らなければ……と、気合いが入りました。
 そして、みんなが喜んでくれる顔を思い浮かべると、緊張はしていたけれど、嬉しい気持ちが込み上げてきました。

 でも、一番気がかりだったのは、焼き時間です。
 なのはなのお好み焼きは、七十人分を作るので、フライパンではなく、オーブンで焼きます。
 試作では二人分、六、七分で完成しました。
 でも、七十人分のお好み焼きを作るには、鉄板にぎっしり詰まった生地を三鉄板、それを二回戦焼くことになるので、果たしてどれくらいの時間がかかるのか、心配でした。
 私たちは一回戦につき、長くて二十分と予想を付けて、段取りを立てました。

 

■心強いメンバーと一緒に

 午後の台所には、なおちゃん、なるちゃん、まことちゃん、ゆずちゃん、私。そして、途中から強力メンバー、りゅうさんとみかちゃんが入ってくれました。

 今回、普段使っていない食器にお好み焼きを盛りつけようと、お母さんが提案して下さり、食器選びもしました。

 お父さんお母さん、あゆちゃん、りゅうさんにはお花柄のものを、なおとさん、けいたろうさんには、男の子らしい、少し大きめのシンプルなお皿、みんなには、お花柄だったり、シンプルなものだったり、いつもと違う柄を選びました。
 いつもと違った食器で、いつもと違う気分で夕食が頂けるようにと、食器を選んでいる時間が楽しかったです。
 素敵な食器がまだまだたくさん眠っていて、あれもこれも使いたくなりました。
 なおちゃんと、「この食器使いたいから、これ作ろう。って言うのも良いね」と夢を膨らませていました。

 刻一刻と、お好み焼きを焼く時間が近づいてきました。
 そして、上手くいくかどうか…という緊張感も高まってきました。

 十七時が近づいてきて、具材を混ぜ始める時間が来ました。
 水と出汁に山芋を入れて一度混ぜ、それに、小麦粉、卵、キャベツを入れて混ぜます。
 一度に、七十人分を混ぜることは難しいし、「混ぜすぎない」という、お父さんのアドバイス通りにはきっといかないと思い、十二回に分けて、混ぜることにしました。
 混ぜる担当は、りゅうさん。
 お父さんのアドバイス通り、さっくりと混ぜすぎないように混ぜてくれました。
 流れ作業で生地ができていき、お好み焼きの生地が、鉄板に流し込まれていきます。

 いよいよオーブンへ。
「上手くいきますように…」みんなで祈りをこめて、スタートボタンを押しました。
 第一弾を焼いている間、第二弾の生地の準備に取りかります。
 みんながそれぞれの役割について、精一杯で動いていました。
 もう台所は、正直戦場のようだった…とも言えるのですが、お好み焼きを作るキッチンステージのようでした。

 そんな中、なおちゃんが、お好み焼きの焼き加減を見守っていてくれました。
 でも、予想していた二十分を過ぎても、生地が固まってくる気配がありませんでした。
「あと三分焼こう。あと二分焼こう」
 時間が刻一刻と過ぎていきます。夕食の時間が、一分一分近づいてきます。

「どうしよう……」と私の中に、不安が込み上げてきました。

 

■絶対に叶えたい

 なおちゃんとりゅうさんが焼き加減を見てくれて、りゅさんが、最後に温度を上げて焼こう。と言ってくれました。
 もうここまで来たら、絶対に良いものを作りたい。
 そして、みんながいるから大丈夫。なおちゃんの夢、そして私たちの夢を絶対に叶えたい。そんな想いになりました。
 みんなの笑顔を思い浮かべたら、不安な気持ちが吹き飛びました。
 ただただ、みんなと笑顔で美味しいお好み焼きを頂きたい。
 計画した当初の気持ちが込み上げてきました。

 何とか第一弾が無事に焼き上がりました。
 焼きたてのお好み焼きを、食堂で待ってくれている配膳チームの元に届けます。
 その間台所では、第二弾の鉄板を焼き始めました。

 第二弾は、最初から配膳する大きさにカットして焼きました。
 そうすることで、火の通りが良くなったのか、私たちが最初に予定していた約二十分で焼き上がりました。

 完成したお好み焼きを、食堂に届け最後のトッピングです。
 ソースはおたふくソース。そして、ソースの量、マヨネーズの模様にも拘りました。 
 最後に紅ショウガと、かつおをトッピングして完成です。
 十八時夕食の時間は過ぎてしまいましたが、完成したときは、みんなほっとした様子でした。

「お待たせしました。夕食の準備ができました。皆さん食堂にお集まりください」と、なおちゃんといっしょに、みんなを呼びました。

 

■幸せにするメニュー

 食堂に入ってきたみんなの笑顔、喜んでくれる顔が、本当に嬉しかったです。
 みんなでいただきますをして、一口頂きました。
 なのはな産の柔らかいキャベツとネギ、カリカリの豚肉、生地とソースのちょうど良い塩梅……そして、山芋と、混ぜすぎないという、お父さんからのアドバイスで、ふわふわのお好み焼きが完成しました。
 お父さんもお母さんも、「美味しい!」と言って絶賛してくれました。

「こんなにふわふわで美味しいお好み焼きを頂いたのは、初めて」「お好み焼きの概念が変わった」「毎週食べたい」……など、みんなも嬉しいコメントをたくさんくれて、本当に嬉しかったです。

 みんなが喜んでくれる瞬間、みんなが笑顔になるこの瞬間が、一番嬉しいのです。
 ただただ、それだけで良いのだと思いました。
 誰かが喜んでくれる。それだけが原動力になるのだと思いました。  

 後から聞いたのですが、お母さんも、キャベツの時期になると、お好み焼きがしたいと、ずっと思っていたそうです。
 こうして、お母さん、なおちゃんの長年の夢、温めてきた想いがみんなの夢になり、ようやく実現したのでした。
 みんなが育ててくれたキャベツとネギ。
 それを台所で調理し、みんなでいただける。
 私たち仕事組だけの力だけでは、絶対にできなかったお好み焼きです。

 みんながいるから実現したお好み焼き。
 みんなで作ったお好み焼きです。
 誰かの想い、誰かの夢を、みんなで実現できる喜び、楽しさ。
 なのはなには、そんな喜びや楽しさがたくさんあります。
 喜びをみんなで共有できる場面がたくさんあります。
 一人ではできないことも、みんながいるから何でもできると思えます。
 私にとって今、それが小さな幸せです。
 みんなと、小さな幸せと成功体験を積み重ねていけることが嬉しいです。

 またひとつ、なのはなの定番メニュー、お好み焼きができました。
 そしてまた、キャベツの季節の楽しみができました。