【12月号㉒】「ヒノキの伐採  ―― 自然の大きさを感じた一日 ――」 あんな

 盛男さんの山に、山の間伐を兼ねて、檜の伐採に行き、檜をいただいてきました。

 以前から、盛男さんが、山の檜を切り出して建築資材にしたらいいと言ってくださっていました。切り倒した檜は山から運び出し、古吉野に持って帰って、皮むきをするというプランです。

 山は、これまで私が行ったことのない山で、なのはなファミリーの山小屋がある山から少し離れた場所にあります。伐採は危険を伴う作業のため緊張しつつも、楽しみな気持ちが大きかったです。

 下見に行ったお父さんやみかちゃん、まえちゃん達から話は聞いていたのですが、しばらく手を入れていない山だということや、車が停められる場所から数百メートル細道を歩いてたどり着く場所ということで、簡単ではなさそうですが面白そうでした。

 間伐に際して、盛男さん、将郎さんが運搬車とユンボを出して同行してくださいました。また、永禮さんは山から古吉野まで丸太の運搬ができるようにダンプトラックで来てくださいました。そして、お父さん、お母さん、須原さん、あゆちゃん、まえちゃん、しほちゃん、ゆいちゃん、私という顔ぶれです。

 

■スケールの大きな世界

 当日は朝霧が立ち込めるなか、十時に現地集合し、全体的に緊張した空気感の中、伐採道具や脚立を手分けして持って、山の中に入っていきました。

 この伐採のため、将郎さんが草刈りをしてくださったという細い山道を数百メートル歩いていくと、少し開けたところにたどり着き、そこは谷あいの檜林になっていました。

 シンと澄んだ、山の匂いがしました。檜は高さ二十メートル以上あって、日常のスケール感とは違う、別世界に来たようでした。

 伐採する木には事前に、盛男さんや将郎さんと、みかちゃんやまえちゃんが印をつけてくれていました。目標は、四メートルの長さの丸太を三十二本運び出すことで、一本の木から四メートルの長さを二〜三本取るため、だいたい十六本前後の檜を伐採する予定でした。

 お父さんがはじめに、メンバーに伐採の手順を説明してくれて、みんなで確認して、取り掛かりました。また、お父さんは、どの木からどういう方向に切り倒していくのがスムーズか、瞬時にプランを立てていました。このような長いものを扱う作業は、先を見てプランを立てることがとても大事なのだと、改めて感じました。

 永禮さんが八尺の脚立で、檜のできるだけ高い位置にロープを二つ結んでくれました。チェーンソーで切込むのと同時に、このロープを二方向に引っ張って、倒したい方向に切り倒すのです。

 チェーンソーは須原さんが操作してくださいました。木の生え方など見て、いつも迷いなく鮮やかに刃を入れていく須原さんがかっこよかったです。

 お父さんの「引っ張って!」の合図で、「せーの!」と二方向にロープを引っ張りました。

 あゆちゃん、まえちゃん、しほちゃん、ゆいちゃん、永禮さんと、二手に分かれて、力いっぱいロープを引っ張りました。

 メリメリメリメリ……ドーン・・・サーーーー。

 高さ二十メートルほどの檜が倒れる瞬間は、息をするのを忘れました。全員が見守る中、静寂の中に、木が倒れる音だけが響き、直後に周囲の梢から細かい葉が雨のように降り注ぎました。

 切り口からは、檜のいい香りが漂いました。

 直ちに、倒れた木に四メートルの長さにチョークで印をつけ、チェーンソーでカットし、運搬車の近くまで四人で丸太に取り付いて運びます。丸太は直径十五〜二十五センチメートルほどあり、一人あたり三十キログラムを負担していると仮定して、一本百二十キログラム以上あるはずです。その重さに、自然の大きさや、人智を超えた強さを感じました。

 木を切り倒すときも、運ぶときも、油断するとケガに直結するため、緊張しました。常に、立ち位置が正しいか、前後左右を見て、確認しました。

 はじめの何本かは、とても順調に進みました。

 しかし、引っ張る力加減の具合か、思った場所に倒れずに、他の木に寄りかかってしまったり、他の木の枝に引っ掛かってしまうことが何度かありました。そんなときは、お父さんが新しいプランを立ててくれて、再びロープを結びなおし、違う方向から引っ張りました。盛男さんがアドバイスをくださったり、須原さん、永禮さん、将郎さんも、倒れ掛かった木をどうしたら危険なく倒せるか考えてくれました。

 また、お母さんは全体を見て、折々に声をかけてくれました。

 倒れ掛かった木はいかにも不安定で、緊張度が増しました。ロープで引っ張りながら揺すってもなかなか引っ掛かりが解消できないときもありましたが、そのようなときには方針を変えて、切れるところまで四メートルでカットしてから引きずり出したり、時にはワイヤーを繋いでユンボで引っ張ることもありました。

 一見、難しいように見える状況でも、最終的には、安全に倒すことができました。

 二方向にロープで引っ張っているとき、ほんの数メートル横に木が倒れてきて、山を駆け上がって逃げるという場面もあり、その迫力やスリルが貴重な体験でした。

 山の中は滑りやすく、また木の根や株など、見えにくい小さな障害物があり、躓いて転んだり、丸太を運ぶときにも力がうまく入れにくかったり、及び腰になってしまったりしました。そのたびに、もっと力をつけなければいけないなとか、足腰が強くなければいけないなと思いました。これも、山でなければ感じられないことです。

 目標の本数を二日ほどで伐採する予定でしたが、この日の午後には、目標の本数を達成することができました。

 切り出した四メートルの長さの丸太は、運搬車を往復させて、ダンプトラックのところまで運び、ユンボでトラックに積んで古吉野に持って帰りました。時間の都合で、半分は翌日に繰り越しました。

 檜の伐採と運び出しを通して、人より遥かに大きなものを、人の力で切ったり運んだりできることを、実際にやったり、目の当たりにして、こういうことができるんだなと、不思議な感じがしたと同時に、人智を超えた大きさや、力の強さを感じ、スケールを少し大きくしてもらった気がしました。

 切り出すときに、木に三角形の切込みを入れるため、ちょうどスイカを半月型に切ったときのような木片がたくさん出ました。とても良い香りがしていて、盛男さんが、洗ってお風呂に入れたらいいと言ってくださり、その日のお風呂に入れて、みんなで檜湯を楽しみました。