【12月号⑰】「吉畑手前ビニールハウス・全面リニューアル ―― 6日間の奮闘記 ――」 やよい

 

 吉畑手前ハウスは、なのはなの畑に植わる野菜の苗を育てる場所で、晩白柚も一本植えられている大事なハウスです。直まきされる以外のすべての野菜がこの吉畑手前ハウスからはじまり、「野菜のはじまりの場所」ともいえるのではないでしょうか。

 その吉畑ハウスの南側の天井部分のビニールが破れて、三メートル以上の大きな穴が空いてしまいました。須原さんに相談させていただくと、「もうこれは根本的な問題(つまりビニールが劣化しすぎてしまっている)だからビニールを全面張り替えする必要がある」と教えていただき、吉畑手前ハウスをリニューアルすることになったのです。

 吉畑手前ハウスのビニールを全面張り替えするにあたり、作業がはじまる前日に吉畑手前ハウスを見ながら、須原さんがハウス修繕の流れ、手順を教えてくださいました。

 私は、てっきりビニールをはずして、新しいものに張り替えるというシンプルな作業なのかと思っていたけれど、それは違いました。

 吉畑手前ハウスは東西に二十三・六メートルの長さがありますが、ハウスの骨組みであるアーチパイプに垂直に固定されている“ハウスバー”と呼ばれる部品の高さが、東半分と西半分とで違っていました。

 

 

 ハウスバーは天井に一本、天井から間隔をあけて二本、そして地面から五十センチほどのところにも一本とりつけられてありました。天井のアーチパイプから三メートルほどの場所に取り付けられたハウスバーは、水がたまりやすくなるため、この位置には不要なことや、天井から二本目の巻き上げ機のビニールを留めるハウスバー、地面から五十センチほどの所にある止水シートを固定するビニバーは、東側と西側とで高さが不揃いなのをすべて一律にしなければいけないということを須原さんに教えていただきました。高さをそろえなければ、ビニールを留めるにも、止水シートを留めるにも隙間などが空いてしまったり、見た目もよくありません。

 今まで毎日のようにきていたハウスなのに、ハウスの中にあったビニバーの歪みをはじめて認識しました。そして、今回の修繕でそれらをすべて改善していかなければならないんだと思いました。

 初めてのことばかりで緊張と不安は膨らみましたが、知らないことを知れること、経験できることがとても有り難くて、ワクワクした気持ちが心の中に生まれました。

 

■一日目 ハウスを鉄骨の状態に

 吉畑手前ハウスの修繕一日目の午前の目標は、ハウスを鉄骨だけのまるはだか状態にすること、でした。ハウスの鉄骨を覆うビニール、側面にはられている防虫ネット、足下にはられている止水シートをはずします。

 ハウスの天井一面にかかるビニールは、マイカ線と呼ばれる黒い紐で止められています。四十八本あるアーチパイプの間に一本いっぽん留められているマイカ線、計四十七本をすべてはずしていきます。マイカ線は簡単に束ねて置いて、コンテナに収納します。

 次に出口と入り口を覆うビニールとアーチパイプとをぴったりと固定する、パッカーと呼ばれる長さ十五センチほどの丸い半筒型のプラスチックをすべて外します。

 マイカ線を外しても、パッカーを外しても、まだビニールは外れません。ハウスの骨組みの一つである、ビニバーと呼ばれるアルミ部品は、横から断面を見るとコの字型にへこんでおり、そのへこんだ部分に蛇のようにぐねぐねと波打ったスプリングがはめこまれています。このスプリングの一番端の部分をマイナスドライバーの先で少しだけビニバーから出し、手でつかんで上下に動かしながらスプリングをはずしていきました。

 スプリングがすべて外せたら、いよいよ全面のビニールをはがします。

 ハウスの修繕メンバー四人で、ハウスの南側の側面に等間隔に立って、ビニールの端をつかみ、いっせいの〜で! でビニールをぐいっとひっぱります。ゆっくりと、けれど強い力で引っ張ると、ハウスの天井を覆っていたビニールがずるずると目の前になだれ落ちてきました。

 その長さ二十四メートルほどある巨大ビニールを四人で一列になって等間隔である程度たぐり寄せて持って、グラウンドへはこびました。そのビニールを広げて簡単にたたんで、肥料倉庫の北棟に置いておきました。この巨大ビニールは、両側面のまきあげのビニールに最利用する予定でした。

 吉畑手前ハウスに戻ると、須原さんが来てくださっていて、側面の巻き上げ部分のビニール、入り口と出口の妻面のビニール、ドアに使われていたビニールを一度広げて、縦、横の長さを測ってから、綺麗にたたんで、その長さをテープに書いて、たたんだビニールに貼って、紐で縛って、まとめておいた方がよい、ということを教えていただきました。

 次の人が使うときに使いやすいようにそうやって、収納すること、そして、いくつも工程がある中で、一つひとつ工程をきちんと片付けてから次に進むこと、作業をする上で基本的で大事なことを教えていただきました。知らなくてはいけないことをちゃんと覚えようと思いました。そうやって、須原さんに教えていただけることが本当にとても有り難いなと思いました。

 ビニールをたたんでまとめたら、側面に張られてあった防虫ネットをはずします。防虫ネットはスプリングですべて固定されていました。

 

 

 防虫ネットをはずせれば次は地面から五十センチの高さにかけて張られている止水シートをはずしていきました。止水シートは、上はスプリングで固定され、下は土で埋められてありました。この止水シートは破れたり、穴が空いていて劣化していました。そういう姿を見ると今まで頑張ってきたのだなと思って、「お疲れ様です」と言ってやりたくなりました。新しいものに変わるのは嬉しいことだけれど、寂しい気持ちにもなるなと思いました。

 止水シートの上で固定されていたスプリングを外すのは簡単でしたが、シートが埋まっている土を取ることは午前の作業の中で一番大変な作業でした。けれど楽しかったです。ハウスの外周を溝きりしたときの土が、止水シートの周りにおかれていたせいか、シートが四十センチ以上埋まっている部分もありました。四人で一生懸命掘って、やっと黒いシートの端の部分が底に見えると、のりよちゃんと一緒に一気にひっぱるとずるっと出てきました。

 掘り出された止水シートがすべて出せたら、これもぐるぐるとまいてすずらんテープでしばりました。

 初日の午前の作業はこれで終了しました。予定通りに目標のすべての作業が終了しました。

 

■基準がなくては

 午後は、まずハウスの頂点から三メートル離れた場所に取り付けられているビニバーを取りました。

 まずは、ビニバーに手が届くように、赤い脚立を三つ並べて、上から二段目に道板を渡して、足場を作ります。いちいち脚立を移動してなくてもいいように、こうやって足場をつくることを須原さんに教えていただき、はじめて足場をこんなふうに作ることを知りました。作業するときは足場を整えることが大事なんだなと改めて感じました。

 ビスで固定されている部分はインパクトを使って外し、ジョイントで固定されている箇所はハンマーで叩いて部品をはずしました。

 いらないビニバーを外せたら、次は巻き上げ機のビニールと防虫ネットの上のラインについているビニバーの歪みの修整にかかりました。須原さんに教えていただいて、ハウスの頂点から四メートルの部分に大屋根のビニールがくるため、そのラインのパイプに黒マジックで印をつけて、水糸をはりました。大屋根のビニールと巻き上げのビニールとの重なりを一律にできるよう、その水糸にぴったりと合うようにビニバーを付け直します。

 地面の高さが微妙に違うため、地面は基準になりません。そのため、頂点から四メートルの部分に張った水糸を基準としました。これは止水シートを埋めるときの基準にもなります。

「何をするにも基準がなくては作業ができない」須原さんはそう教えてくださって、焦らずまず基準を作ってから作業をちゃんと頭に入れようと思いました。

 

 

■二日目 枠組みを真っ直ぐに

 二日目の午前は南側のビニバーの修正をして、止水シートの上ラインを固定するビニバーの歪みの修整に取りかかりました。

 西側半分の止水シート部分のビニバーはまっすぐだっため、西側のビニバーが水糸から何メートル何センチあるか測り、その高さを一番東側のアーチパイプから一番西側のアーチパイプまで水糸でつなぎ、まっすぐのラインを出します。そのラインにマジックペンで印を付けていくのですが、パイプと水糸がぴったりくっついているわけではなく、水糸が五センチくらいパイプから離れている箇所もありました。そのため、マジックで印をつけるとき、まっすぐに横から見ないと印をつける位置がずれてしまいます。そこで、二人一組になり、マジックで印を付ける人と、少し離れた距離からまっすぐ平行に見て、ただしい位置で印をつけられているか教えてあげる人とで役割を分担しました。北側のビニバーの歪みを修整できたら、南側の止水シートのビニバーの歪みを修整します。南側のビニバーを修正にするときに、南側につけた印と北側のビニバーがぴったり重なるとき、平行に見ることができているということなのだと須原さんに教えていただいて、当たり前のことなのかもしれないけれどとても面白いと思いました。

 さらに、手でOKの形を作って、右目と左目で北側のビニバーを見たとき、OKの中に印がはいって見える方が利き目ということになります。私の利き目は右目ということが分かって、右目を使って、印付けを行いました。ひとつひとつの工程で、綺麗に仕上げるためのちょっとした方法を知れることがとても面白いなと思いました。

 すべてのビニバーの歪みを修整したあと、ハウスの中を見ると、ハウスの中で上と下、計四か所に配置されているビニバーが東から西までまっすぐのラインになっていて、綺麗で見るだけでとても気持ちがよくて、これだけでも見た目が全然違うなと思いました。

 次は、止水シートを埋める穴を掘っていきました。止水シートの幅は八十センチで、これを半分にカットし、幅四十センチになったものを埋めます。須原さんに確認させていただき、四十センチのうち十センチほど埋めて、三十センチほど地表に出すという計画になりました。

 のりよちゃん、どれみちゃん、さくらちゃんと私の四人は四十センチのバカ棒を作り、止水シートを留めるビニバーから四十センチの深さになるように、その棒を持って深さをときどき確かめながらスコップで穴を掘り、さらにクワでまっすぐに綺麗にしました。元々掘られてあった位置からビニバーまでの高さが場所によって違うため、掘る深さを場所場所で調節しなければなりませんでした。穴の深さを四十センチで均一に掘るのは難しかったけれど、ただ掘るのではなくどこも四十センチの深さにそろえていくという意志を持ちながら掘り進めるのがとても楽しく感じました。

 夕方の時間で穴堀まですべて進めることができました。

 暗くなってしまったため、その日は体育館に行って止水シートのカットを行ないました。

 

■三日目 止水シートも水平に

 

 三日目の午前は、二日目の夕方にカットした止水シートをいよいよ埋めていきます。まずは、止水シートをビニバーに洗濯ばさみで仮止めして、両端はパッカーで固定します。

 二人一組になって、仮止めされた止水シートがさらにピンとまっすぐに綺麗にはれるように、一人のひとがスプリングをはめていき、その隣で洗濯ばさみを外していきながら止水シートを少しひっぱりながら持って、補助をする、という方法で行ないました。私はどれみちゃんとペアになって、私はスプリングをはめていき、どれみちゃんが補助をしてくれます。止水シートを留めるときの微妙な高さの違いにどれみちゃんは気づいてくれて、ここはもうちょっと高くして留めた方がいいよ、という風に教えてくれました。確実にまっすぐ綺麗にはれるようにというどれみちゃんの美意識を感じました。そして、私もそうやってシートを留めていきたいという気持ちが強くありました。

 

 

 スプリングをはめこめたら、足下のすそを埋めていきます。埋めるときも、止水シートの黒い部分が茶色い土でまっすぐに埋まって見えるように美しく埋めて、まっすぐに綺麗にならしたいと思いました。四人で方法を確認し、各場所に取りかかりました。

 ハウスの足下を囲むように止水シートがぴったりとはられました。止水シートを四人で見て喜び合いました。

 止水シートを留めると次は側面の防虫ネットに取りかかります。これも止水シートと同様にまずは防虫ネットの上のラインを洗濯ばさみでビニバーに仮止めします。仮止めを行なってから、脚立と道板とで足場を組み二人一組になってスプリングで本止めをしていきます。

 

 

 私はスプリングをはめていき、どれみちゃんが隣で補助をしてくれて、のりよちゃんは下でスプリングを渡してくれました。道板は二枚、脚立は三台のため、途中で足場がなくなってしまいますが、板一枚分移動したごとにのりよちゃんとさくらちゃんが脚立と道板を移動してくれて、夢中でスプリングをはめこんでいる私は、気づくとどんどん進んでいる左側に足場があって、とてもスムーズに防虫ネットを留めていくことができました。そして、どれみちゃんと私の息もどんどんあっていくように感じました。

 

■入り口のビニール 取り付けへ

 午後は、出口と入り口のドアがある側面の妻面部分のビニールカットと、巻き上げ機に使うビニールのカットを行ないました。

 グラウンドに行って、一日目にはがしたあの巨大ビニールを広げて、カットする長さは分かっているけれど、(このビニールをどのようにカットすればいいのだろうか……)とどう切ってよいのかプランが分からなくなってしまい、須原さんに相談しにいきました。

 須原さんがグラウンドに来てくださって、まずは、ビニールの端を作ること——メジャーでまっすぐにひっぱって、凸凹した部分がないようにまっすぐのびたメジャーのひもに沿って点線で印をつけていきます。はじめ私は点線ではなく、一本線でとぎれることなくずっと線を引いていたけれど、それはとても時間がかかってしまい、点線にかえて、さらに線と線の間も五十センチほどあけました。「とにかくスピードが大事、どれも丁寧にすると日が暮れてしまう。丁寧にするところとそうでないところを考えないと」須原さんがそう教えてくださいました。

 

 

 一つのラインがつけられれば、そのラインからカットしたい幅を真ん中と両端とで三か所しるしをつけて、その三点をメジャーでまっすぐにつなぎ、また印をつけます。

 須原さんの指揮のもと、スピードよく巻き上げのビニール二枚と妻面に使うビニールを三枚あっという間にカットすることができました。

 巻き上げのビニールの上のラインには、このラインが上だとすぐ分かるように洗濯ばさみをところどころに付けておきました。

 それらのビニールをたたんで紐でしばって、持って再びハウスの元へいきます。

 入り口の妻面のビニールの取り付けに入りました。

 入り口の妻面は、新しいビニールを大屋根分カットしたときに出た余りの部分のビニールを使うことになりました。

 ビニールの中心にマジックで点線をひき、印をつけて、その印がハウスの骨組みのどこにくるか分かるように横の骨組みの真ん中にも印をつけました。また、ビニバーと重なる場所にも長さを測って、まっすぐのラインになるよう点線のしるしをつけました。

 入り口外側に足場を組んで、四人でビニールを持ち上げます。中心の基準を合わせて、黒い点線が横のビニバーと重なるようにビニールを合わせます。真ん中の一番上のアーチパイプから弧の字を描くようにパッカーで固定します。

 アーチパイプに固定することができれば、側面のビニバーに上の段からスプリングで固定します。

 一番下の段の止水シートが留められているビニバーにビニールをスプリングで固定すると、ビニールの端が少しだけあまってしまいます。この端もスケールを出して、ビニバーの上の面から五センチのところにちょんちょんとマジックで印をつけていき、その印をハサミでおいかけるようにすーとカットしました。するとビニールの端がレースのフリルのように見た目が綺麗に処理することができました。三日目の午後はここで作業を終了し、体育館の中に入って、大屋根に新しく張るビニールをカットして、ハウスメンバー以外の人もかけつけてくれて、ビニールを横長に蛇腹に折って、スズランテープで所々結わえて、すぐにハウスに持っていけるようにしました。

 

■四日目 ドレスを着たハウス

 四日目、須原さんに教えていただきながら張った入り口側の妻面の作業の流れをもとにこんどは、出口がわの妻面のビニールを張っていきました。

 天井までの高さ三メートル二十八センチ、横幅は六メートル五十センチです。入り口側は一枚で張り合わせることができましたが、出口側は長さが足りなったため、出口は三枚のビニールを使いました。

 須原さんに教えていただいたように、足場に登る前にビニールのどの部分にビニバーが来るか印をつけてから、ビニールを張り合わせていきました。

 雨がたまりにくくするため、上のビニールが下のビニールにかぶさるようにはらなければいけないのですが、はじめそれを理解しておらず、間違って下のビニールが上のビニールにかぶさるようにはってしまってやり直すことになってしまったのですが、何とか須原さんがいない中でも、三日目の午後の須原さんに指揮していただきながら入り口の妻面のビニールを張った経験を元に、出口のビニールも綺麗に張ることができました。

 出口一面を張っただけだったけれど、それでも達成感を感じました。

 止水シートと防虫ネットが取り付けられて、入り口、出口のビニールが張られると、まるはだかだったハウスが徐々にハウスになっている姿が自分のパワーになって、最後まで頑張ろうと思いました。

 次は巻き上げ機のビニールをつけていきました。歪みを修整し、真っ直ぐになったビニバーに、スプリングで巻き上げ用のビニールを固定していきました。しわなく真っ直ぐに張られた巻き上げ用のビニールは、計算しておいた通り丁度よく下の地面に重なって、まきこみしろが余っていました。

 風が吹くとハウスの両端についた巻き上げ用のビニールがゆらゆらと揺れて、大きなドレスのスカートみたいにも見えました。

 

■驚きのパイプカッター

 四日目の午後は、巻き上げ機のビニールを巻き込む鉄パイプの修理に取りかかりました。ハウスの修繕をはじめる前日にハウス修繕の流れを教えていただいたときに、この鉄パイプも劣化していたら修理する必要があると教えていただいたのですが、鉄パイプをどのように修理するのか、具体的に頭の中で想像することができていなかったので、ちゃんとすることができるかハウス修繕を行なっていく上での不安要素の一つでもありました。

 まず、巻き上げ用にもともと使われていたパイプを一列に並べて、錆びて腐っている部分を見つけます。その錆びきった部分をカットします。そのパイプよりも一回り大きいパイプを十五センチの長さにカットして、これをジョイントにします。腐った部分を切ったあとに、ジョイントで繋ぎ直し、劣化した部分を取り除いていくという方法です。

 こうしていくと、もちろんパイプの必要な長さよりも短くなってしまうので、在庫から、綺麗でかつまっすぐな巻き上げやすいパイプを選んで、そのパイプを足します。

 私はさくらちゃんと一緒に劣化している箇所の範囲をマジックで印をつけて、カットした合計の長さが何センチになるか計算し、新しいパイプを何センチ足さなければいけないか出しました。

 そして、パイプのカットにうつります。この硬い頑丈なパイプを一体どのようにカットするのか皆目検討もつきませんでした。すると、須原さんが作業棟から、長さ十五センチほどの小さ目のある道具を持ってきてくださいました。

 その名も『パイプカッター』という道具で、上の部分ははてな型になっており、はてなのカーブの中にロールと刃がついていて、下には握れるようにハンドルがつけられています。そのはてなのカーブにカットするパイプをはめて、ねじで丁度いいきつさに調節し、ハンドルを握って、パイプカッターがパイプの周りをくるくるまわっていきます。ハンドルのすべりがゆるくなってきたなと思ったら、少しねじをしめて、くるくるハンドルをまわし、またゆるくなってきたら、きつくしてまわす、これを三、四回繰り返すと、刃がどんどん鉄パイプに食い込んでいき、気づくと頑丈な鉄パイプがぽろっと折れてしまいます。

 さくらちゃんがパイプが一緒にまわらないように補助してくれて、私はパイプカッターでパイプをカットしました。こつをつかむと、一か所一分くらいでカットすることができました。

 パイプカッターでジョイントにするパイプをカットしたとき、パイプの端から内側にむかって一ミリ程度まるまるようにかえしがついてしまいます。これをバリと呼びます。このバリをとらなければ、ジョイント部分に鉄パイプを差し込むときにサイズが小さくなってしまい、差し込むことができなくなってしまいます。なので、このバリを取る作業が必要になります。パイプカッターのハンドルの後ろ側にはバリ取りができうように鋭い三角形の部品がついていて、それでバリを取っていきました。それでも、完全にバリが取れないときには、インパクトに十センチほどの長さのある三角錐型のドリルをつけて、バリをとりました。

 私とさくらちゃんとでパイプとジョイントをカット、のりよちゃんと、どれみちゃんでバリを取り、ジョイントでパイプをつなげていくという流れ作業で進めました。パイプカッターは使えば使うほどにこつをつかんでいって、途中からは私の体の一部のようにも感じてとても楽しかったです。

 錆びた部分が何か所もあったパイプがどんどん切り取られ、頑丈で綺麗な部分だけが残っていきました。すべて新しいパイプにせずとも、こんな風にパイプをカットして、ジョイントを作って、修理していくことができるのだとはじめて知って、とても面白かったです。

 

■巻き上げ、美しく

 パイプの修理ができれば、このパイプに巻き上げ用ビニールの裾を巻き付けます。ハウスの北側一辺に四人で等間隔に入り、ビニールを一周半まきつけました。須原さんに教えていただいて、何をして一周半というのか、人によって、ずれてしまってはいけないため、まきつけた端のビニールがまだまきついていないビニールついたときを一周と考えるという、意思統一をはじめに行いました。

 一周半まきつけたら、次は十九ミリのパッカーをアーチパイプの真下の部分で留めます。アーチパイプごとにパッカーを留めるので、五十センチ間隔になります。幅をせまめでしっかりと留めることで、巻き上げ機をあげるときにパッカーがはずれにくくさせ、長く使えるようにするのだと、須原さんが教えてくださいました。

 入り口、出口の両端に約二メートルの高さの鉄パイプをかけやでしっかりと打ちこみ、そこに、巻き上げ機の部品をはめて、その部品に鉄パイプをいれます。巻き上げのハンドルを握って、くるくる内側に回すと、ビニールが入り口から出口までまっすぐに巻き込まれていき、巻き上げのビニールの直線と、防虫ネットの境目がまっすぐにはっきりと見えて、とても綺麗で、それだけで感動した気持ちになりました。修繕メンバーとまきあげていく光景を見て喜び合いました。 

 

■五日目 一番の力仕事

 さて、最後の大屋根のビニールをはるまでの工程もあと一つとなりました。次は、大屋根のビニールを留めるマイカ線の端を縛りつける、地面際に設置する鉄パイプを通すための、ぐるぐると螺旋状になったねじを埋め込んでいく作業にうつります。

 このねじの上は輪状になっていて、この輪に鉄パイプを通します。なので、このねじを埋め込むときはまっすぐの列、さらに埋め込む高さもそろえなければいけません。地面の高さが場所によって違うため、ねじを埋め込む深さも場所により違います。

 ねじを埋め込むラインに米ぬかで印をつけて、そこに一メートルほど長さのあるねじを埋め込みます。まずは、スコップで五十センチほど穴を掘って、ねじを時計回りに回します。埋め込んでいくほど、強い力が必要でした。三十センチ程度埋め込めたら次は、輪っかの部分に十五センチから二十センチくらいの鉄パイプを通して、このパイプの両端を握って、ねじをまわしていきます。土の中の抵抗を感じながら渾身の力で思いっきり強い力をかけ続けながら、時計回りに回していきます。ハウス修繕の作業の中で一番の力仕事だったのではないかと思います。

 どれみちゃんが横から列がそろっているか、高さが一律か見てくれて、どれみちゃんの上か、下か、ハウス側に寄せるか、離すか、などの言葉を元に最終調節していきました。

 この作業は思ったよりも時間がかかって、この日の午後の時間では終わらず。翌日の朝食前の作業でも行うことになりました。

 五日目、朝食前の時間になんとかねじの埋め込みを終わらせることができました。ねじを埋め込むことができたら、ねじの輪の部分に鉄パイプを通していきます。

 北側はどれみちゃんとのりよちゃんが行ない、南側はさくらちゃんと私とで行ないました。穴にパイプを通していくだけかと思いきや、この作業はとても大変な作業でした。

 鉄パイプが微妙にゆがんでいたり、輪の高さや位置が少しだけでもずれていると、鉄パイプがスムーズに入っていきませんでした。二十三メートルの長さのある辺に鉄パイプを通していくことを思うと、果てしないようにも感じました。

 いくら、せ〜ので押し込んでも、輪っかでひっかかって、パイプがびくともせずに、通っていかないと、(もうヤダー!!)と叫んで、逃げ出したくなるような気持ちにもなったのですが、輪っかの位置をずらしたり、パイプを大きなハンマーでカン! カン! と強い力で打ち込んでいくと入っていくということが分かりました。反対側をしてくれていた、どれみちゃんのりよちゃんも私とさくらちゃん側に合流してくれて、なんとかパイプを通すことができたときの達成感と言ったらとてつもないものがありました。

「この作業が一番大変だったかもしれないね」そう修繕メンバーで言い合って笑いました。

 

■風!

 これで、残すところあとは大屋根のビニールをはるだけになりました。

 蛇腹に折った、長さ二十五・五メートル、幅八メートルのビニールを、南側の一辺にのばして、長い辺の五か所でビニールを絞って、マイカ線をまきつけてしばり、反対側には運動靴をしばります。

 いっせいの〜でで、運動靴をハウスの北の向こう側へ投げます。ハウスの北側へ走り、それぞれが運動靴をひっぱると、巨大ビニールがずるずると天井にあがっていきます。

 マイカ線をほどき、竹の棒などを使って、出口、入り口にビニールをのばします。

 出口側に組んでおいた足場に登って、アーチパイプから端を一メートルほどあまらせて、パッカーで留めると、次は入り口側のアーチパイプにビニールを固定しようと思ったとき、風が吹き始めてしまい、ビニールが風であおられて、いくらとめようとしても風に邪魔されて、作業を断念せざるを得なくなってしまいました。残念だったのですが、一番の大仕事大屋根のビニール張りはあきらめて、この日は大屋根のビニールを留めるためのマイカ線を、地面際にある片方のパイプにしばりつけて終わろうと、のりよちゃん、どれみちゃん、さくらちゃんと話しました。

 縛り付けるマイカ線はアーチパイプとアーチパイプの間に一本ずつ、計四十七本ありました。マイカ線は二メートルほどの余裕を見積もり、一本の長さが十三メートルあります。ピカピカの新品のマイカ線です。マイカ線をしばりつける方法は、吉畑手前ハウスの西側に立っている二重ハウスのしばり方をのりよちゃんが見てくれて、四人で方法を確認しました。

 この日、風でビニール張りができなかったため、次の日は風のない朝食前の時間にビニールを張ろうということになりました。

 

■六日目 大屋根張り

 六日の朝食前、七時十五分からビニール張りをスタートしました。この日は、ハウス修繕メンバーのどれみちゃん、のりよちゃん、さくらちゃんに加えて、のんちゃんもヘルプに入ってくれて、五人で作業を行ないました。

 五日目同様、ビニールにシューズを縛り付けて、シューズを投げます。竹の棒でビニールの入り口、出口へとのばします。朝食前の時間は風がなくて、風に邪魔されることはなかったものの、ビニールが朝露で濡れてしまっていたため、ビニールがすべらず、また重くなってしまい、ビニールをのばすのが少し大変でした。

 入り口のアーチパイプにビニールの端をパッカーで留めると、今度は入り口側に足場を移動し、出口のアーチパイプにビニールをパッカーで留めます。出口を留める前に、出口から入り口までビニールのしわをのばしていきます。ハウスの中で竹の棒を持ち、ところどころビニールを持ち上げて、ハウス外で竹の棒でビニールが持ち上がるのと同時にビニールを引っ張って行く人とで分かれて、しわを確実にのばしていきました。

 入り口側のアーチパイプにビニールをパッカーで留めることができて、ハウスの天井を見上げれば、大屋根に大きなビニールを張ることができました。縦二十五・五メートル、幅八メートルの大きなビニールが骨組みの上に乗って、綺麗に広がったことがとても嬉しかったです。ハウス修繕の中で一番の山場の作業でした。

■最終工程へ

 作業は朝食後の午前にうつります。午前の作業でははるかちゃんもヘルプに入ってくれました。

 最後の仕上げにとりかかります。大屋根に広がるビニールは、両端のアーチパイプでパッカーでしか、留められていません。

 五日目の午前にしばったマイカ線をアーチパイプとアーチパイプの間にかけて、一本いっぽんしばって、しっかりとビニールと骨組みとを固定していきます。

 マイカ線の先にシューズをくくりつけて、ハウスの向こう側へ投げます。投げ方は二種類あります。上投げのピッチャー方式と、下投げのカウボーイ方式です。

 二人一組になり、一人の人がシューズを縛ったマイカ線を投げます。すると向こう側でシューズを受け取るために待つ人がいて、ハウスの屋根を越えて、マイカ線がシューズとともに飛んでくると、マイカ線のねじれを二人で連携を取りながらとっていきます。ねじれをすべて取ってからマイカ線を足下のパイプにくくりつけます。

 これを計四十七本、二人一組になって行なっていきます。ねじれを取るときは、ペアの人とのコミュニケーションがとても大切です。古吉野側に三回ねじれているから、二重ハウス側に三回ねじらなければいけない、ということなどを、ねじれがきちんと取れるまで、ハウスをはさんで姿の見えない向こう側のペアの人へきちんと伝わるように伝えなければいけません。ちゃんと言葉にして、相手に伝わり、自分もペアの人の言葉を受け取って、実行し、ねじれをすべて取ることができたときは何とも言えない清々しい気持ちが自分の中にわき上がりました。

 マイカ線をすべて留めることができたら、次は本当に最後の最後の工程に取りかかります。端があまってしまった大屋根のビニールを、入り口と出口の妻面にあるビニバーにスプリングで留めます。

 脚立と道板で足場を組み、二人一組になって、まるくカーブしているアーチパイプから側面にきっちりと折り込んで見た目が綺麗になるように、餃子の端の部分みたいにしわをちょっとずつつけていきながら、きちっとひっぱって、スプリングでとめていきました。ビニバーから微妙に余ってしまった部分はハサミでカットしました。

 私ははるかちゃんとペアになり、はるかちゃんがドレープををつくるように綺麗にしわを作ってくれて、私はそのしわがそのまま綺麗に留まるようにスプリングをビニバーにはめ込みました。ビニバーにスプリングをはめるのもだいぶ慣れて、はじめよりも早くぐいぐいとスプリングをはめこんでいくことが出来ました。

 さあ、これで吉畑手前ハウスの全面ビニール張り替え作業が終わりました。どの角度から見ても、大屋根のビニール、巻き上げのビニールが綺麗に張られていました。大屋根と入り口のビニールは新品で、出口の妻面側も、ぞうきんでふいたので、本当に新しく生まれ変わって、全面がリニューアルされました。のりよちゃん、どれみちゃん、さくらちゃん、そして助っ人で入ってくれたはるかちゃんと喜び合いました。

 風に邪魔されたり、トラブルなどもありましたが、なんとか六日ですべての修繕を完了することができました。一つひとつの工程がはじめての経験でこれからにも繋がるとても大切な経験をさせていただきました。この六日間を経て、他のハウスなどを見る目が全く変わったように感じます。

 そして、須原さんに教えていただきながらハウスメンバーと協力し、ハウス修繕を進めた時間がとても楽しかったです。