【12月号⑮】「ユズの収穫  ―― 鋭いトゲと、爽やかな香り ――」 けいたろう

 だんだん寒くなってきた。日中はともかく朝と夜の寒さがゆっくりと冬に姿を変え始めてきていると感じる。そろそろ柚子(ゆず)の収穫時期が近づいてきているらしい。

 青い状態の果実は夏から収穫でき、黄色く色づけば十一月とか十二月に収穫するのが良いらしい。ゆず畑と崖くずれハウスにはそれぞれ一本ずつゆずの木が立っている。

 普段はゆずの木を目にしてもそこまでじっくり観察するということもなかった。そこにあるのは知っていた。だが近づいてまじまじと果実を見つめたり、どんな枝葉をしているのかとか気にしたこともなかった。だが、今回収穫のチャンスが私にやってきた。収穫は二回に分けて行われた。

 私は少し甘く見ていたようだ。彼を。そのトゲを。パパパっと剪定ばさみで次から次へと収穫できるものだとてっきり思い込んでいた。現実は厳しかった。

■ユズのトゲ

 バラのトゲなんてもんじゃない、槍のように鋭くとがっているのである。  

 しかもそれはこちらに向いて長く伸びている。完全に実を採ろうとする者から身を守っている。それと同時に攻撃をしかけようとしている。これまでゆず風呂だとか、刻まれたものを食べたりしたが、彼の本当の顔といううのをこの瞬間見たような気がした。だが気に入った。これは収穫のやりがいがあるというもんだ。

 使う道具は脚立と高枝ばさみ。はじめは自分の手が届くところから攻めていき、だんだんと奥のほうへと手をつけていく。長袖と手袋。初日はゆずちゃんと、二回目はよしみちゃんと。

 素手じゃなくても容赦なくトゲがチクチクとつついてくる。奥になればなるほど猛攻にあう。しかしうまくいくと一番奥まで無傷で、黄色い実を獲得することも可能だ。そのときの気持ちよさは最高だ。クリアしてやったり! と叫びたくなる。

 ゆずの果実は、実に香り高い。このさわやかな香りがかげるならいくらでもいばらに刺されても良いかもしれないとすら思えてくるのだ。


 剪定ばさみで切り取ると、実を持つ左手がゆずの匂いでいっぱいになる。それは収穫かごにゆずを置いたあとでもずっと続いた。夜まで左手は鼻の通りがよくなるようなすっきりした芳香に包まれたのであった。

 晴れやかな青空のもとで行われたゆずの収穫。高いところになった実を収穫するのは少し苦労したけれども、どのゆずも八割から九割くらいは表面が黄色く熟しており美しいものばかりであった。礼肥の鶏糞もしっかりやって、この冬はゆっくり休んでまた次回いい実をつけていただきたいところだ。