【12月号⑬】「太ネギの収穫 ―― 病害虫を乗り越えた軌跡 ――」 ゆい

 五月から半年に及び育ててきた太ネギの収穫が始まりました。

  わずか八センチほどのひょろひょろした苗が、パワフルな存在感を放つ太ネギに育ったのです。

 畑での滞在期間が長いだけ、数々の戦いがありました。

 ネキリにネギコガ、アザミウマ。ハモグリバエに、とどめはモグラ。(なぜこんなに次々に……? )と思うほど、本当に邪魔が多かったです。さらには、どの敵も表には姿を現さなかったり、極端に小さかったりとなかなかやり手なのです。

 それでも一つひとつ対策を講じながら、他の作物にも応用できるような方法がわかると、前進したと実感する喜びがありました。

 ネキリ虫を全て捕殺するために、一度は全ての株を掘り上げたことがありますが、ネギの根は強く再び定植すると何事もなかったかのように活着してくれました。

 対策を終え、ほっと一息かと思うと季節は移って次の虫が到来するのです。夏の暑さで乾燥すると、ネギアザミウマが急増しました。一ミリにも満たない小さな虫で、それと知らなければ気づけないうちに葉がかすり傷でいっぱいになるのです。

 これに対して、黄色と青の魔法のばけつ作戦がうまくいきました。中に入っているのは、ごま油、ヨーグルト、はちみつ、洗剤で、ごま油の香ばしい匂いが虫を寄せ付けそうな上、鮮やかなバケツの色で、虫が次々飛び込んできました。ガやハエ、その他の害虫も驚くほどに捕獲でき、面白い結果となりました。青と黄色とでは、虫が入る種類、色が違うことも分かり、黄色は虫の捕獲をするならば最高の色だと実証できたのも良い成果でした。

 

■害獣と病気に勝つには

 それから、モグラにはナフタリン。モグラの嗅覚の鋭さを利用したものです。モグラの穴は繋がっているので、数か所にぽいぽいと

ナフタリンを投げ込み、少し蓋をしておくとモグラは寄ってこなくなりました。

 それから、軟白部を長く育てていくため、追肥と土寄せも繰り返し行いました。真夏は農作業でするべきことが多いので、少人数で早朝に猛ダッシュで土寄せをし、たくさん汗をかいたのを覚えています。

 今回の品種、『ホワイトスター』は、肥大性に富み、柔らかく辛みが少ないのが長所ですが、病気への耐性が弱いという短所があり、それには米のとぎ汁から作った乳酸菌発酵水で対応しました。

 こうした手入れに応え、太ネギは着実に育っていきました。そして、十月に入り気候が涼しくなると、病気も虫も寄せ付けないほどに充実していきました。そこにアミノ酸をやることで、肥大化とうまみの凝縮を狙ったのも新たな試みでした。

 

 

■長い道のりを経て

 そうして初めて迎えた収穫日。掘り上げた太ネギは、土の上で光合成をする働き手である緑の葉が七枚ピンと立ち、軟白部はつやつやと光って、一本で三百五十グラムもある姿は意欲に満ちているようでした。

 掘り上げるまでは、土の上に露わになっている緑の働き手の葉の部分しか見えなかったので、土中に埋もれている軟白部はどうなっていることだろうと、少しの不安と、大きな期待を抱きながら育ててきたのです。 

 掘り上げた軟白部の頼もしさを感じるような姿に(ああ、こんなにしっかり土の中で育っていたのだね)と、静かな喜びが湧き上がってきました。

 台所では、初物のネギのおいしさをそのまま味わえるようにと、河上さんが考えてくださり、焼きネギをポン酢でいただく形で食卓

に上りました。噛んでみると、(甘い)と思いました。そして、中が とろりとしていました。ネギだけでこんなにもご飯が進むようなおいしさを発揮できるのかと驚きました。

 太ネギ『ホワイトスター』を通して、美味しい作物をつくることは、どれだけクリエイティブで面白い作業だろうと感じました。見た目も綺麗で美味しい作物は、食べた人がきっと元気になる力がある、そんな風に感じて本当に嬉しかったです。これからもお鍋や豚汁、色々な料理で太ネギをいただけるのが楽しみです。