【12月号③】「簿記部8期生ゴーッ!  仲間と共に励んだ日々」 りんね

 

 秋も深まる十一月の日に、日商簿記検定二級の試験を受けました。

 コロナウイルスの影響もあり、試験は何度か中止になっているため、このまま九期生にバトンタッチかと思っていた矢先、試験を受けられる知らせを、あゆみちゃんから聞いたときは、今まで勉強してきたものを形にできることへの、嬉しさもありました。また、簿記部八期生が集い、大好きな仲間や、村田先生と、再び簿記ができるのだという喜びでいっぱいになりました。

 初めは、試験日までに間に合うのだろうか、商業簿記、工業簿記、二冊分のテキストを、覚えることができるだろうか。そんな不安がありました。

 

 

 簿記を勉強していて、歯がゆかったところは、一度覚えたことも、忘れることが非常に多いことでした。

 簿記は、仕訳が全ての基です。仕訳の形は決まっています。出来るようになるには、ひたすら繰り返すこと、暗記することでした。

 はじめの一週間は、半日を復習に当てました。図書室の大きな机に向かって、初心に帰って、簿記の頭に戻ることに専念しました。

 勉強をするときは、驚くほど頭が澄んでいました。安心して、簿記に深く浸り込みました。

 こうして、集中して勉強を続けられたことは、私にとっては生まれて初めての経験でした。なのはなファミリーの中だから、できたことです。

 次に、まだ習っていなかった範囲を、さやねちゃんから土日に超スピードで教わりました。

 その範囲は、『連結会計』という商業簿記の最難関が含まれていました。中々、初めて聞いた言葉は頭に入ってきませんでした。

 でも、大枠の考え方は、さやねちゃんの、なのはなの例えを交えた説明で、捉えることができました。

 今は理解できなくてもいい。お父さんは、試験当日に一番理解が深まっていることが良いのだと教えてくれていました。だから、とにかく暗記。暗記。

 そう思って、諦めずに向かっていきました。

 次の一週間は、さらに基礎をかためるために、問題集をすべて解いていきました。

 その後、過去問に入りました。

 過去問を解くのは、面白かったです。自分の実力が、点数として明確に分かることで、自分が今どこに立っているのかが分かりました。

 

■百点が取れるまで

 お父さんに教えてもらった勉強法は、二十回分の試験を、百点が取れるようにすることでした。

 過去問、答練、直前模試、という試験形式の問題を、一つひとつ百点が取れるまで重ねていきました。

 中には、今まで全く習ったことがない試験独自の問題がありました。その問題は、一問でノート三ページに及ぶ仕訳を、とにかく六回くらい丸写しして暗記しました。そうやって覚えた仕訳は、後々の試験問題、本番の試験にも活かすことができました。

 このころは、寒さも増して、五年生教室にストーブを焚いて、簿記部八期生が集結して勉強していました。やはり今まで勉強してきた五年生教室に、全員集まって勉強をすることが、一番安心しました。 

 

 

 そして、いつものように過去問に向かっていたある日、ふと教室の引き戸がガラリと開きました。顔を上げると、そこには村田先生がいました。

 あまりに唐突で、驚きと嬉しさで、八期生一同固まってしまいました。そして、「わーっ」と歓声が沸き起こりました。

 

■村田先生と

 村田先生は半年の時間を感じさせないほど、とても自然に授業を再開してくださいました。

 勉強の始め、村田先生のお話で、簿記へ向かう心意気を教えてもらいます。

 簿記を勉強する目的は、その一、人生の選択肢を広げる。その二、学ぶ喜びを知る。その三、小さな努力を積み重ねる。その四、教える喜びを知る。その五、会計を通して社会に貢献する。その六、誰かの希望になる、ということです。

 そのための手段の一つとして、私たちは『日商簿記検定試験』を受験し、合格を目指します。

 村田先生には、息抜きに面白いお話もたくさん聞かせていただきました。村田先生のお話を聞く時の、和やかな五年生教室の空気が戻ってきました。

 

 

 村田先生がいてくださると、何よりも心強く、力が漲ってきました。過去問を解く集中力も、一層増していきました。

 もう後戻りできない。やりきって、試験に合格したい。そして、九期生に繋げたい。

 そう思うと、まっすぐ、深く、簿記の海へ沈み込んで勉強することができました。

 過去問の回を重ね、答練という今回の試験に備えた問題を解くようになると、どんどん勉強は楽しくなっていきました。

 いい点数が取れなかったら、「今でよかった」と思って、次は百点が取れるように答えを暗記しました。このころ、問題を解き始める前に、八期生は掛け声をかけていました。なおとさんが考案してくれて、改良をした特別なものです。

 みんなで電卓を中心に差し出して、円になります。そして一人ひとり  「できる」、「強気」、「勝つぞ」、といった前向きな言葉を順に言って、みんなで復唱します。

 最後に、なおとさんが「簿記部八期生〜」と言ったら、みんなで「ゴー!」と言って電卓を高らかに上へ上げます。

 そうして始まる勉強は、とても嬉しい気持ちと、暖かい気持ちでいっぱいになります。簿記部八期生は、本当に暖かい仲間です。一人ひとりの顔を思い浮かべると、嬉しくなります。みんなが、一人ひとりを大切に思っていました。こんな仲間とは、人生で初めて出会いました。みんなと一緒に、簿記へ向かえることが、これ以上ない幸せでした。

 

 

 試験直前の数日間は、夜十時から十一時までの時間も、六人揃って、リビングで静かに勉強をしました。夜の澄んだ空気を感じ、最後まで粘るように勉強しました。この時間も、よく集中できました。

 朝も、リビングで勉強をしました。

 なのはなのリビングは、八時ごろになると朝日が窓からいっぱいに差します。じんわりと背中を温める太陽の熱を感じながら、勉強できることが幸せでした。

 仲間をすぐ傍に感じて、勉強できるどの時間も、嬉しいものでした。

 

■行った、解いた、受かった

 試験は目前に迫り、できることをやるしかありませんでした。試験日の前日、過去問も、答練も、全て百点が取れるようになりました。

 あとは、強い気持ち。村田先生が、『行った、解いた、受かった』という合言葉を教えてくださいました。その言葉を聞くと、笑いが零れ、肩の力が取れて、前向きになることができました。

 試験の前日、夕食の席に着くと、思いもよらぬサプライズが待っていました。

 お仕事組さんが作ってくれた、ピーマンの肉詰めをメインとした豪華な料理でした。デザートの梨には、 『簿記ブンブン』と『できる!』という文字が書かれた、とてもかわいらしい旗が刺さっていました。

 みんなが、惜しみない気持ちで簿記部八期生を応援してくれていました。(この旗を持って、試験会場へ行こう)と思い、大切に美味しい食事を頂きました。

 

 

 試験当日の十一月十五日。私は、赤い長そでシャツの上に、簿記Tシャツを着ました。髪には、お母さんに頂いたシュシュをつけました。

 そして、昨夜頂いた素敵な旗も、お守りとしてペンケースに入れました。

 夜は、緊張もあり、頭の回転が収まらず、あまり眠れませんでした。けれど、簿記Tシャツに身を包み、気合を入れて身支度を整えると、全く眠気は感じませんでした。

 なのはなの家族に、守られていることを感じていました。

 少し早めの昼食を、村田先生、あゆみちゃん、簿記部八期生のみんなと、試験への意気込みを一人ひとり回しながら頂きました。

 (ついにこの日が来てしまった)という感覚は、当日になっても遠いもののようで、だんだんと色濃くなっていきました。試験日は、今まで積み重ねてきた日々の、一つの大きなゴールでした。

 試験会場である津山商工会議所へ向かう車には、一台に、昼食を一緒に食べたメンバー全員が乗っていました。

 黄色い車を見つけるたび「黄色い車、黄色い車、黄色い車」と唱えました。いいことが起きるおまじないです。

 車にとどまらず、黄色いショベルカー、黄色い旗、黄色いトラック、とにかく黄色いものを見つけるとおまじないを唱えます。

 どうか、今までの努力が実りますように。解答用紙に、今まで学んできた全てを表現できますように。

 みんなで、笑顔で帰ってこれますように。

 試験会場に着くと、サプライズが待っていました。

 津山で税理士として働いている、なおちゃんが来てくれていたのです。なおちゃんは、お昼休みに自転車に乗って、美しい白いジャケット姿で商工会議所の前で待ってくれていました。

 なおちゃんの姿を見たとたん、なのはなファミリーの優しさをひしと感じました。こんなに優しい家族が、仲間が、津山にもいてくれます。これほどに、心強いものはありませんでした。

 なおちゃんと、みんなと、記念写真を撮りました。

 

 

■村田先生の力を感じて

 試験直前、村田先生に力強い握手をしていただきました。村田先生のパワーが、ぐっと体の内に入ってきました。村田先生の手は暖かく、心も落ち着きました。村田先生に教わった心持で、試験に臨みます。試験問題を開きました。運命を握る一枚一枚の問題を、まず初めにざっと目を通しました。

 そして、直感しました。(大丈夫、これなら解ける)、と。

 実際に問題を解いていくと、一つひとつ自信を持って答えていくことができました。最後の問題は、今までにない会話形式で出てきて、少し頭を捻りました。

 けれど、問題をよく読むと、ヒントが示されていました。きっとこれだ、という答えに辿り着きました。

 制限の二時間、最後の最後まで、見直しをして粘りつくしました。終わると、清々しい気持ちでいっぱいになりました。振り返ると、会場の入り口に村田先生とあゆみちゃんの姿がありました。

 たった二時間だったけれど、二人にものすごく会いたかったことを知りました。嬉しくて、少し飛び跳ねて入口へ向かいました。

 村田先生には、「全部解けました」と報告しました。自信満点でした。必ず合格していると感じていました。

 少なくとも、今まで学び、得てきたものを、惜しみなく解答用紙に表現することができました。運がよかったと、思いました。

 

 

■勉強をする楽しさ 

 帰りの車では、やりきった、という高揚感でいっぱいでした。けれど、心の奥に寂しさがありました。みんなの感想は様々でした。けれどみんな笑っていました。村田先生に、早くまたなのはなに帰ってきてほしいという話題で、持ちきりでした。

 次の日になって、寂しさは如実に心の表面に現れました。楽しかった日々が、試験を節目に締めくくられました。

 これからも同じ屋根の下で、みんなと一緒に生活するけれど、簿記を通じて繋がっていたものには、特別な魔法がかかっていました。けれど、この寂しさはとても温かい感情です。大切なものです。

 村田先生は、「今まで勉強をしなかった年は、一年もなかった」と仰っていました。村田先生の存在からは、とめどない大きな力を貰います。どこまでも前向きな力です。

 私も、今回簿記を通じて、人生で初めて『勉強』をすることができました。朝から晩まで集中して簿記に取り組み、試験として形にできたことは、大きな自信になりました。

 こんな私でも、努力を重ねることが、できました。
 これは始まりだと思いました。これから、より多くのことを学んでいく人生の、一歩だと思いました。
 今回簿記に深く沈みこんでいったように、目の前のことに、これからも深く追求していきたいです。
 なのはなファミリーに守られているから、私は、安心して何事にも集中できると思いました。本当に、なのはなファミリーにいられることが、幸せだと感じます。

 村田先生、簿記部八期生のみんな、なのはなの家族に、感謝してもしつくせません。
 簿記二級の試験を、仲間と共に受けられて、幸せでした。この思いを心に留めて、これからも成長していきたいです。