【11月号⑤】「全力で野菜を作る楽しさ」 なおと

 お父さんから突然の発表があった。畑のチームが新しくなるというものだった。二〇二〇年九月二十五日、午後二時。Aチーム、Bチームと発表されていく中で、自分の中にある予感が芽生えていき、それは段々強くなっていった。Cチーム、リーダー、なおと。その言葉を聞いたとき、ああやっぱり。と思った。

 畑のチームリーダーをできる自信はなかった。自分は野菜の知識に乏しく、また様々な状況に対応できる柔軟さや、臨機応変なところに欠けているという思いがあったからだ。だから、これから一体どうしようと頭を抱えたくなるような心境だったのだ。

 そんな時、手を差し伸べてくれたのが、サブリーダーののりよちゃんとななほちゃんだった。二人は、それまでの自分の体験を元に、これから担当する野菜のことや、リーダーの仕事について詳しく教えてくれた。それは、知らない街で迷子になったような心細さを抱えていた私にとって何よりありがたいことだった。他のCチームメンバーもみんな優しく好意的な人たちで、次第に、これならなんとかなるかもという気持ちになっていった。苦手なことだけど、逆に言えば自分にとってそれはまたとないチャンスだから、精一杯やってみようという風に頭を切り替えることができたのだ。

 

 

 そんなこんなで、あれよあれよと畑を駆けずり回っているうちに、気づいたら一カ月経っていた。その間に、教習所でAT車の限定解除をしたりお父さんの誕生日会もあり、息つく間もなく、飛ぶように日が過ぎていった。私のなのはなライフ史上最上級にに忙しかったこの秋の日々であったが、ふと、そこに不思議とその大変さを楽しんでいる自分を発見した。あれ、俺、楽しいのか? そう自問自答せずにはいられなかった。

 大変なことは、忙しいことは、嫌なことである。つまらないことである。
 考えてみれば、今の社会にはこのような考え方が蔓延しているのではないだろうか。

  仕事は、金のために嫌々やることで、自分の幸せは、余暇の趣味の中にある。買い物、コレクション、旅行、ゲーム、食事、酒、ギャンブル…そのためにたくさん稼ぎたい、欲しいものをいっぱい買いたい。楽しいことを何でもしたい。消費したい。仕事はそのための手段であり、その中に幸せはない。

 今までそんな価値観の中に知らずに自分はいたのだと、図らずも思い知らされることになった。

 

 

 一生懸命にやることは、楽しいことである。それが仕事であれスポーツであれ害虫潰しであれなんでも同じである。そして、そういう中で人と関わって生きていく中に、本当の満足や充実、幸せがあるのだと改めて気づくことができたように思う。

 まだまだ、畑のリーダーとしては頼りなく、みんなの力を借りてなんとかやっていけている状態だが、これからも良い野菜作りのため、力を尽くして頑張りたい。