【10月号⑱】「お父さんと「山田錦号」との五日間 ―― 田んぼのなかで感じた気持ち ――」 なつみ

 白いご飯。新米を見る度思い出す、あの稲刈りの日々。

 お父さんチームで刈った、あのお米が今、みんなの主食として食卓に出ています。

「美味しい」初めてお米を美味しいと感じました。

 それは怒濤の稲刈り五日間を体験させてもらったからかも知れません。

 

 

 五月は田んぼの芝生の様だった稲も、九月になれば石生田んぼを黄金の稲穂で染めていました。涼しい風が吹き始めて、田んぼにはトンボの家族が飛び回ります。

 三条刈りの赤いコンバインを操縦するのは、我らがお父さん。そして、ベテランのゆりかちゃん、けいたろうさんと共に、私もお父さんの補助に入らせて貰いました。

 一枚目は、カーブミラー田んぼ。

 お父さんのコンバインが止らないように気を張って、細かいところに目を配って、そうしているうちに、すぐ6時になってしまいます。長いようで、本当はとてもあっと言う間の時間です。

 カーブミラー田んぼは、地面がかなり緩い部分があり、そこは手刈りで刈っていきました。しかし、今思えば、とてもスムーズに終えられた田んぼのひとつに入ると思います。

 二、三枚目は諏訪神社の方にある二枚の田んぼ。お父さんのコンバインは止ること無く進んでいき、ここら辺で、私も補助のノウハウを習得してきていました。

 

 

 大ボス。四枚目の、那岐山三反。

 ここで、私は稲刈りが甘くないことを痛感しました。

 この田んぼは稲が田んぼの広範囲にわたって倒れてしまっている田んぼでした。

 私たち補助部隊は、お父さんのコンバインが刈りやすいように田んぼの稲を起こします。

 必死に稲をコンバインの進行方向に起して、お父さんが刈りやすいように、動きます。

 一条目にけいたろうさん、三条目にゆりかちゃん、間に挟んでもらい、二条目に私が足を入れて、稲起こしをしていきました。

 今だから言えるのですが、正直選手交代したくなりました。

 私の起こした二条目だけ上手く起こせていませんでした。コンバインで刈りにくそうで、(もう、私に稲起こしは出来ない!)と、少し怒りつつ、でも投げ出すことも私自身が許せなくて、なんとか二人に助けて貰いながら、稲を起こしていました。

 ふと、顔を上げると、ターンするお父さんが「刈りやすい」笑顔で親指を立ててくれました。

 怒った気持ちも、稲起こしを上手に出来なくて、悲しくて悔しい気持ちも全部吹っ飛んで、嬉しくなりました。こんな時は、自分の単純さも悪くないかなと思います。刈り終えたときは、思わず拍手です。

 お父さんチームみんなのとびっきりの笑顔がとっても嬉しかったし、救われた気持ちになりました。大変な稲起こしも、乗り越えれば達成感でいっぱいで、勿論反省するところもあるけれど、私に足りないところが沢山培われた気がします。

 

永禮さんをはじめ、なのはなを応援してくださっている、水嶋さんと、土居さんもコンバインを出してくださいました

 

 

 那岐山三反を乗り越えれば、最後、五枚目の田んぼは川向こう田んぼ。

「一区画だけぬかるんでしまっている場所があるから気をつけて」

 まえちゃんが、お昼を食べ終えてリビングで一息つく私に声をかけてくれました。

 地面が緩いところがあるんだ、そこは手刈りだな。そう知っておくと心構えが出来て、未知の田んぼでは無くなるのが安心しました。

(うわ、もう刈ってある!)

 田んぼに着くと、入り口から見て左奥の角が刈られています。まえちゃん達が既に刈ってくれていたのです。

 リビングで話したとき、刈っておいた、と言わないところが格好いい、まえちゃんの利他心だなと思って、目がハートになりました。

 川向こう田んぼは稲が全然倒れていなくて、ただぬかるんでいるところにコンバインのキャタピラーがはまらないよう、刻まれた藁を敷いていく仕事が主で、一番スムーズに行った田んぼかなと思います。

 稲刈りで私が得たものは大きいと思います。

 まず、実感したのは粘り強さです。

 いつもは途中で歩いてしまう第一鉄塔畑から吉畑までの坂道を、初めて走り切れるようになりました。

 鍬を持ったら休むこと無く動けるようになり、我ながら強くなったなと思います

 次に心のキャパシティです。

 心の中でイライラすることも少なくなり、また、どんなに自分が大変でも「みんなの為」と思えば、すぐに力を出せます。

 お父さんお母さんは「利他心」を教えてくれますが、その心が入る袋を大きく出来たような気がします。

 自分がひとつ、成長したと、実感できることが嬉しくて、そこまでいくのに引っ張ってくれたお父さんチームに感謝です。

 得たものを、さらに大きく出来るように、日々の作業も全力で楽しみます。

「美味しいね」

 そう言って、お父さんお母さんと、みんなと、頑張って刈った新米を食べるとすこし涙が出そうなくらい嬉しいです。

 こんなに稲刈りが大変だとは思っていなかったし、勿論楽しい、嬉しい事もあったけれど、簡単な仕事は決してなかったなと思います。

 それでもやっぱり、みんなと笑顔で美味しく新米を食べていると、大変さも忘れはしないけれど、それ以上に嬉しいなと、強く思います。

 また次回、どんなメンバーで、どんな稲刈りの物語が出来るのか、それがとても楽しみで、私もぜひメンバーには入れたらな、と思います。