【山小屋便り9月号】「夢と目標に向かって走り続ける ―― 税理士試験2科目を受験して ――」 のん

 

 1年に一度、この1年の自分のすべてが税理士の神様の前にさらけ出される、税理士試験を初めて受験させていただきました。会場は香川県の高松にあるサンメッセ香川。そこの大きなホールを使っての試験でした。

 前日にさやねちゃんが付き添ってくれて、サンメッセ香川まで案内をしてくれたときに、この会場を見たときには、灰色の床や壁に、赤い椅子が並んでいて、冷たい、少しぞっとするような感覚を覚えました。

 けれど、いざ、その日になって受験者としてこのホールに入っていくと、昨日感じた冷たさはなくて、落ち着かせてくれる雰囲気のある場所だ、と思いました。

 今回、私は簿記論と財務諸表論の2科目を受けました。どちらも必須科目で、受ける人数も多く、この会場では300人以上の人が受けることになっていました。

 広いホールに整然と並んだ机と椅子。そのなかから自分の受験番号が書かれた席を探します。1つの長机を2人で使うようになっていて、広々と何も気にせず問題用紙や答案用紙を広げて使えるだけのスペースがありました。

 1科目目は簿記論。8時45分になると、試験官の人の説明が始まりました。

 機械的に列ごとに答案用紙が配られ、不備がないかチェックして、受験地と受験番号を記入していきます。答案用紙は3枚。回答欄はいずれも小さく、仕訳をたくさん書かせたりする問題ではなく、穴埋めのような問題かなと思いました。

 問題用紙が配られ、問題の訂正が配られ、あとは試験開始の合図を待つだけになりました。試験開始が5分遅れて、9時5分になることが告げられ、緊張の時間が長引きました。

 これが本番なんだ、これが最後なんだ。そう思うと、ふわふわした感覚が静まって、闘志に変わっていきました。そして、開始の合図が告げられました。

 問題用紙に不備がないかを確認して、第1問を見ました。総勘定元帳と簡単な貸借対照表が与えられて、穴埋め問題になっていました。いつも第1問目はパズルみたいになっていて、与えられた資料のどことどこが連動しているかを瞬時に分からなくてはいけなくて、頭が簿記に浸りきっていないとできない問題です。

 試験直前は自分のこれまでの間違い集を見ていたので、計算の頭のエンジンがかかり切っていなくて、穴だらけの資料がザーッと流れていくように感じたので、後でやろう、と思って問1は丸々飛ばしました。

■やり切る気持ち

 問2は純資産に関係する仕訳の穴埋め問題で、勘定科目が記号で与えられていて、そこから選んで、金額を計算して埋めていきました。難しい論点は何もなくて、基本的なことが問われていて、みんなが解けるはずだから1つも落とせない問題で、ここで得点を稼がなくちゃいけないと思いました。

 第2問の問1は在外支店を含む本支店会計でした。自分のなかで在外支店の帳簿を外貨から円貨に換算した後の手続きが少し曖昧で、あまり得意でないので、問題を見た瞬間、(来たな…!)と思いました。

 未達事項の処理や決算整理は大丈夫、と思って解きました。しかし今回、現金と商品が未達だったのですが、未達勘定を使った整理記入を行っている、と書かれていて、なにそれ、と思いつつ、整理後の残高を見ると未達現金という勘定が使われていて、それで仕訳をすればいいことが分かりました。

 でもさらに翌期に実際に現金が到着した日の仕訳を書く問題がありました。(知るか!)と思って、こうであろうという仕訳を書いて進みました。

 支店と本店の個別の損益と残高の穴埋め、合併後の財務諸表のいくつかの金額を求める問題で、私の苦手な在外支店の本丸とも言える問題でした。

 支店は円換算したら貸借対照表を先に固めて、貸借対照表の剰余金と損益計算書の当期純利益の差が為替差損益になるはず、とまでは覚えていたのですが、本店勘定と支店勘定はどの段階まで一致してるのか、支店損益を総合損益に振り替えるときはドルで出した当期純利益を円換算した損益と、全部を円換算したあとの当期純利益のどっちなのか、分からなくなって混乱してきました。

 第3問に1時間は残したくて、第1問の問1も解いてないので、時間を残さなくちゃと思いつつ、少しねばって埋めて、次に進みました。

 問2はリース会計でした。基本的なことが問われていて、確実に取りたい問題でした。

 なんとか時間を残して第3問に進みました。第3問は決算整理前残高試算表と決算整理事項が与えられ、決算整理後残高試算表をつくる問題でした。

 決算整理前残高試算表を見たとき、レンタル固定資産という初めて見る勘定があって、(なんだそりゃ!)と思いつつ、いつも通りとき始めました。

 通信で授業を受けている大原で教えてもらった仮計算という方法で、白紙の計算用紙を4つに区切って、それぞれに資産、負債・純資産、費用、収益の各項目の変動を記入していきます。

 円未満は切り捨て、法定実効税率は30パーセント、消費税率は10パーセント。残高試算表に気をつけなくちゃいけない科目はないか。いつも通りチェックしていきます。

 

 

 

■ラストスパート

 いつも通り有価証券のところから解いて、最初に戻って現金預金から順に解いて、途中商品や有形固定資産が大変そうなら後回しにして解いていきます。

 今回は商品売買取引周辺が外貨が絡んだり、レンタル固定資産に振り替えがあったりして、ややこしかったです。あと、その他の外貨建取引も、どう処理するかも少し判断に迷いました。

 それまでのことがどういう処理がされているのか、資料はどう処理をして欲しいと言ってるのか、正確に酌み取るのが難しいです。自分のもっているもの以上は出せない、と感じました。

 時間も迫ってきて、第1問に戻るために、未払法人税等や法人税等など、空欄になってしまっているところを、(知るか!)と思って「7087000」などで無理矢理埋めていきました。

 そして第1問に戻ってきました。頭が簿記に浸ってから改めて問題を見ると、取り付く島もないように感じた問題が、するっと理解できました。資料同士の繋がりがよく見えました。問題なく解けたと思います。

 数分時間が残りました。後ろ髪を引かれるようにして次に進んだ、在外支店に戻りました。

 記憶と考えの限りでこうなんじゃないか、というのをもう一度考え直して、書いて修正してを繰り返しながら書き殴りました。

 ストップウォッチのように秒単位で残りの試験時間を把握することが出来ないので、いつ終わりの合図が告げられてもおかしくない頃になると、手が震えてきました。こうだろう! というものに修正し終わって、終了が告げられました。

 呆然と試験官のアナウンスを聞き、試験官の人たちが答案用紙を回収していくのを眺めなめていると、涙が出そうになりました。悲しいわけでもなければ、別に嬉しいわけでもないのに、涙が出そうになりました。

 2時間突っ走った頭はぼーっとしていて、何番から何番の人は退出してください、というアナウンスを聴いても、もう数字が認識できないくらいになっていました。

 12時半からは財務諸表論が待っています。ロビーの椅子に座って、テキストを見ようと思いましたが、頭に全然入ってこないので、回復に徹しようと思いました。

 お借りしていた携帯電話でインターネットが見られたので、少しだけなのはなのホームページを見ました。ちょっとずつ頭が回復していきました。

 試験開始15分前には着席して、答案用紙などが配られました。

■総合的に考える

 席の前のボードに、答案用紙は計算問題の第3問が3枚と書かれていました。貸借対照表と損益計算書は毎回必ず出るので、あと1枚は販管費の内訳か、それとも製造原価報告書か、どっちかかな、と思っていたのですが、受験番号などを記入するときにちらっと見ると、まさかの両方で、(どっちもか!)と内心叫びながら記入していました。でも、理論の方は長くても3行程度の記述しかなさそうで、安心しました。

 そして予定通り12時半に始まりました。

 まずは理論。包括利益の問題でした。会計基準の穴埋め問題から始まっていて、私は一問一答形式で要点チェックノートやテキストの文章を暗記していて、この会計基準の穴埋めが苦手だったのですが、今回はほぼ私が覚えている文章から出題されていました。

 そのあとの記号で空欄に入る文を選ぶ問題も、文章で覚えていたそのままのもので、なんて素直で優しい、綺麗な問題なんだろう、と思いました。記述では覚えたものがそのままでることはありませんでした。

 覚えたことから総合して考えて、こうだろうと思うものを書きました。1か所空欄のまま、第2問へ進みました。第2問は概念フレームワークと資産除却債務からの出題でした。これまた穴埋めが覚えている文章から出ていて、救われました。

 文章での記述は、オペレーティングリース取引におけるリース物件は資産の定義を満たすかどうかという問題で、どっちとも書ける気がして迷ったので後回しにしました。

 資産除却債務では、理論問題のなかになんと計算の問題がありました。3つの異なる考え方からそれぞれで導き出される計上額を計算していきました。そして現在の方法の特徴を文章で記述する問題がありました。もうこれまで勉強してきたことを総合した自分の考えをとにかく書き連ねました。

■時間との戦い

 そして第3問の計算問題に進みました。簿記論と同じくいつも通りの手順で解いていきます。それほど難しいことや目新しいことは問われていませんでした。丁寧に確実に読み取っていきます。

 破産更生債権に対する貸倒引当金が特別損失ではなく販管費として処理することになっていました。どの科目で処理するのか、問題文や答案用紙の空欄の数から考えて処理していきます。

 先日付け小切手の処理を一度、問題文の認識を間違って逆に仕訳をしてしまったのですが、あとで間違いに気付いて修正しました。その間違いがラストに響くことになりました。

 一通り勘定科目の欄は埋めて、理論に戻りました。覚えたことそのままでは埋められないので、もうこれが私のすべてです、と思って自分の考えを書きました。また10分程度余りました。

 計算問題の合計欄などを書いて、空欄をなくしていきました。貸借は合いませんでした。構わず見直しを進めました。

 残り約5分。受取手形の数字がおかしいことに気がつきました。貸倒引当金の計算をするときに書き込んだのですが、先日付け小切手の勘違いがここに影響してしまいました。受取手形の数値が間違っていたら、貸倒引当金もずれてしまいます。

 そうしたら貸倒引当金繰り入れもずれて、純利益がずれます。純利益がずれたら繰越利益剰余金がずれます。

 さらに今回、貸倒引当金に税効果会計を適用することになっていたので、繰延税金資産と法人税等調整額の値も狂います。

 まずいと思って、何度か本当に受取手形の値が間違いであることを確認して修正し、芋づる式に間違うことになる項目を修正していきました。

 時間との戦いでした。まだ終わりませんように。祈るような気持ちで計算をしていきました。いけた!?  と思ったところで、終わりの合図がありました。答案は私の手を離れました。

 終わったんだ、と思いました。すべて出し切って何も考えられない頭で、答案用紙が回収されていくのを見ていました。一切の後悔もありませんでした。できることは全部やった、と思いました。

 会場を出ると高松行きのバスが待ってくれていました。バスに乗る前にお父さんに電話をしました。試験が今終わったこと、なんとかなったんじゃないかと思うことを告げると、「良かった」というお父さんの明るくて力強い声が聞こえました。それに安心して、帰路につきました。

■感謝の気持ち

 行きにさやねちゃんと見た海を見送って、帰りました。津山駅にはさやねちゃんが迎えに来てくれることになっていましたが、なんとなおちゃんも来てくれました。 勉強を始めるときからずっと2人にたくさんたくさん支えて、助けて、導いてもらってきました。どう感謝していいのか分からないくらい、感謝の気持ちでいっぱいです。

 古吉野に帰ると、みんながパッと笑顔になって、「お帰りなさい!」と言ってくれました。「遊ぼうね!」と声をかけてくれました。私が今度の肝試しの実行委員になっていると教えてくれる人もいました。

 ただただ嬉しかったです。今回の試験ではたくさんの人に支えていただいて、たくさんの人に祈ってもらって、受験して、自分の力を出してくることができました。大事な大事な成功体験であり、もう1人で戦っているんじゃないことを感じさせてくれる経験でした。

 まだまだ試験の道は長いです。次の勉強が始まるまで、みんなと思いっきり作業して、遊んで、踊って、楽しんで、エネルギーをたくさん充電して、応援してくれている人に恥じないように、走り続けたいと思います。