【山小屋便り9月号】「お父さんのヒラメの解体ショー! ―― 大振りな2匹のヒラメの5枚下ろし ――」 なつみ

 

「明日はヒラメの解体ショーがあります」

 古吉野の校舎を笑顔で歩きながら、お父さんは声を張って宣伝してくれていました。

 4連休が終わり、りゅうさんやお仕事組さんは、またお仕事へ行きます。

(毎週4連休だったらいいのに……)

 そんな寂しい気持ちで本を読んでいたところに、お父さんの『ヒラメの解体ショー』の宣伝は、明日が楽しみになる、素敵なプレゼントでした。

 翌日。真っ白な大きい発泡スチロールの箱を持ったまえちゃんが、会場となる食堂にヒラメを届けます。

 捻りはちまきに黄色いはっぴ姿。お母さんからの気合の衣装を身につけ、包丁を持つ。お父さんの準備は完了です。

 そして捌かれるヒラメ。(このヒラメ、1枚のまな板で捌けるの?)と思うほどの大きさ。立派です。

 両者の準備が整い、さぁ、いよいよショーが始まります。

「普通の魚は3枚おろしですが、今回のヒラメは5枚おろし」

 とのことで、身が4枚の骨が1枚。合計5枚おろしのヒラメの解体ショーが始まろうとしているところでプチ事件。

 ヒラメが立派すぎて、やはり1枚のまな板では捌けない。嬉しい事件で、みんなが笑顔になります。

 

 

「ではね、捌いていきましょう」

 まな板を2枚に増やし、お父さんは迷わずヒラメの頭を落としました。頭を持ち上げると内臓がスーッと引っ張られるようにして出てきます。想像より内臓が小さいなと思いました。

 次にお父さんは、ヒラメの体の真ん中あたりをギュッギュと押しながら中骨が通っている場所を確認して、その上を頭から尾にかけてを切っていきます。

 包丁を横に入れ、骨から身を切り離していきます。半身が開けたヒラメは、茶色い肌の下に美しい透明の身と薄い赤色の筋肉を隠し持っていて、その美しさは思わず「わぁ……」と、ため息にも似た歓声が出てしまうほど。

 さらに歓声に拍車をかけるのは、お父さんの美意識の高さ。骨には身が全くついていなくて、無駄がない。

 そんなお父さんが最後、皮を剥ぐ作業でも魅せてくれました。

 細長く、品のある輝きを放つ柳刃包丁が、お父さんの美しい手に握られます。

 皮と身の間で包丁を動かして、皮を剥いでいくお父さんの動きに緊張感が高まります。みんなが息を殺してお父さんの手の動きを目で追い、最後まで剥ぎきると、「すごい」という、小さな声が色々なところから聞こえました。もれなく私もその1人です。

 

 

 皮を剥ぎ、ヒラメの解体ショーは終わります。(もう終わってしまうのか)と思っていたら、なんと、お父さんが発泡スチロールの箱からもう1匹、立派なヒラメを出しました。

「2回目、見たい人は見ていってください」

 迷わずその場とどまり、2回目の解体ショーを見ました。何度見ても、魚を捌く工程は面白くて、特に骨から身を外し、きれいに5枚おろしにされたヒラメを見るのがとても好きだと思いました。

 捌かれた2匹のヒラメ。(今度こそ終わりか)と思っていたら、解体ショーは終わりだけれど、『ヒラメの昆布締め』を作る段階も見学できるのだそう。前回は見れなかった調理の段階でドキドキしました。

 お父さんが昆布を水にさらして、ヒラメとミルフィーユ状にしていきます。

 20センチ近くの高さに積み上がったヒラメと昆布のサンドイッチ。こんな豪勢な光景は圧巻です。

 ヒラメの昆布締めは、2日後の夜においしく頂きました。

 話は少し逸れるのですが、私は、お父さんが捌いている手つきを見たとき、同時に手も目に入りました。

 お父さんの綺麗な手と美意識で、美しく捌かれるヒラメの解体ショーが嬉しかったです。