「120%良かれの気持ちで」 なつみ

9月1日

「治る人と治らない人の違いはあれです。」
 そう言ってお父さんが指さしたのは「利他心」と書かれた模造紙です。

 なのはなに来た頃の私は、(自分は苦しい)(自分は辛い)(自分は大変だ)、自分のことばかりで頭がいっぱいになり、他の人の事なんて考える余裕なんかありませんでした。「大変なのはお前だけじゃないんだよ。」お母さんはそう諭してくれました。でもその時の私には分からなかったです。
 いかに自分が楽になるか、そのことばかり考えて、考えて、大変な作業をサボっても、もっと苦しくなるばかりで、どうしたら良いか分からなくなりました。
 
 帰るか帰らないか、瀬戸際になったときカボチャの収穫をしました。
 まだ細くて体力も気力も無い私にとって、暑い中、大きなカボチャが4,5個入ったコンテナを持って、何度も軽トラと畑の間を往復するのは正直しんどかったです。
 でも、一生懸命やりました。(今日一日頑張れたら、明日も頑張れるだろう)そう思って、必死に、明日に繋ぐためにカボチャを運びました。あの時、(自分はここで良く生きたい)と、初めて思いました。
 なのはなで育て直して貰いたい、そうお父さんに伝えて、仲直りの握手をしました。

 その後、初めて牛肥入れに参加しました。山畑で少人数のバケツリレーです。
 やよいちゃんが色々な鳴き声の掛け声を考えてくれて、みんなでたくさん鳴きました。
 私も大きな声で、みんなの力になるように鳴きました。作業を盛り上げたい気持ちもありました。やよいちゃんの力になりたいと思いました。
 るりこちゃんが昼食の席で、私の声に力を貰ったと言ってくれました。
 あの頃、確かに私はみんなの力になりたくて動いていたのに、いつの間にか、少しずつ手を抜くようになってしまいました。

 そして今年の誕生日。お父さんは「お前はいい人と悪い人の間にいる」と。
 お母さんは「なつみが頑張っていると、お父さんは喜んでいる」と教えてくれました。
 誕生日から今日まで、私はみんなの役に立ってお父さんお母さんに喜んで貰いたい一心で作業をしてきました。なのはなで生活してきました。
 それでも沢山、みんなに迷惑を掛けて、間違ったことも何度もあって、何度も許して貰ってきました。すごく我儘で、短気で、偉そうで、能力は低いし、頭は悪い。
 でも、自己否定に走ったことはありません。それはお父さんお母さんにつくって貰った、この心と身体があるからです。
 スタッフさんや色々な人に、「いつの間にか力持ちになって」「力ついたね」と、声を掛けて貰うことがあります。みんなの役に立てるこの身体。お父さんお母さんにつくって貰いました。身体を作っている間に、お父さんお母さんに沢山なのはなの気持ちを教えて貰って、心も作られてきました。この心と身体は、みんなのためにあります。

 お父さんお母さん、「利他心」が無くなった世の中に、「ダウン症」という、利他心の塊の子供が沢山生まれているお話を聞いて、自分は今からダウン症になることは出来ないけれど、お父さんお母さんの仲間として、「カナリア」になることは、出来るのではないかと思いました。「まだ見ぬ誰かの希望」になることが出来るのではないかと思いました。「利他心」とは「自分の利害はさておき、他人に利益となるよう図る心」です。
 120%自分を消して、120%良かれの気持ちで尽くして尽くして尽くします。
 どんなに自分が大変で辛くて苦しくとも、笑顔でいます。とにかくみんなのことを考えて動きます。

「治る人と治らない人の違い」が「利他心」なのだとしたら、奇跡的に自分にもある、「みんなの役に立ちたい」「喜んで貰いたい」という気持ちを大事に育てて、極めたら、自分はもっとよく生きられるのだと、お父さんお母さんのお話を聞いて思いました。
 お父さんお母さん、私が本当の私になれるように、これからも沢山お話を聞きたいし、みんなと沢山外で作業して遊びたいと、思います。
 少し書いていて恥ずかしくなったので、ここでこのお話は終わりにします。

 

「鼻がスースーする」
 ほかほかの牛肥は鼻に入るとスースーします。
 夕方は、下町川上畑に牛肥800キロ、山畑下の開墾畑に400キロほど、滝川奥に軽トラ8割分、滝川横に軽トラ3杯と2割、幼稚園西に軽トラ1杯を元肥で入れました。
 とにかく走る。走る走る走る。走って、牛肥をまいて、走ってバケツリレーして。
 たっくさん汗をかくと、お父さんのお昼の集合の「汗」のお話を思い出しました。
 汗で、身体の不純物や皮膚の老廃物が出て行くお話です。
 お父さんからサウナの話を前にも聞いたことがあって、その時は別にサウナに入れなくても良いとおもっていたのですが、今日、身体の悪いものが出て行くお話を聞いて、猛烈にサウナに行きたくなってしまいました。
(私も汗をかきたい!)(私の悪いところ、汗で出したい!)そう思っていたところに、元肥入れ日和の元肥入れです。
 意識しなくとも、必死で牛肥を持って走っていたら汗をかきます。
 プラシーボ効果か、どんどん自分が良い人間になっているような前向きな錯覚が起き、
(もっと頑張ろう!)
 と、やる気がムクムク出てきました。

 滝川横の元肥入れを終えて、さきちゃんとりなちゃんと、保育園前のキャベツの定植の作業のヘルプに行きました。
 畝を立てたり、植え穴掘ったり、水やりしたり、何かみんなそれぞれ違うことしているけど、みんながキャベツの定植を終わらせようとしている空気を感じて、そこに乗りました。
 まず、苗置きを任されました。
 豆の植え付けの時、掘り起こして根っこについてきた土もたっぷり付けて、植え付ける。と、教わったので、キャベツの苗にも応用しました。
 茎がポキッと折れやすそうで、かなり緊張したけれど、なんとか良い状態で苗置きが出来たと思います。

 小さく一息つくと、すかさず今度はやよいちゃんが苗が置かれた植え穴にドボドボ水やりをします。これで苗の安全は保証されたも同然。完璧な定植プランに感動。赤ちゃんキャベツはとても喜んで素直に可愛く育つだろうし、感謝していると思います。

 最後は、ネットがけ。土のかき出しから始まります。
 昨日の土のかき出し選手権のスピード感を思い出し、速く土をかき出す。イメージは私の5メートル先をかき出すのんちゃん。そして綺麗にピンとネットを張る。
 これが上手くいったときは、こんなにネットがけ楽しいのかと、思ったほどです。最後の畝まで、ネットをかけきることは出来なかったけれど、みんなで全力を出したのは確かだと言えます。
 どこの作業も、みんなが一生懸命やっていて、みんなの姿があるから、自分も一生懸命やれるなと思うし、やっぱり自分がみんなの役に立てるのは畑だなぁとしみじみ思いました。畑、大好きです。

 今日も1日ありがとうございました。日記を書いていて、お父さんお母さん、みんなへの感謝の気持ちが大きくなりました。(途中で恥ずかしくなってやめてしまったけれど)
ちゃんと、感謝の気持ちを姿勢で示せるよう、また、「利他心」の話を聞いて感じたこと、よくなりたいと思ったことを忘れず、気を張って過ごします。
 おやすみなさい。