【山小屋便り8月号】「海水浴!? いやいや、ソフトバレーボール大会!! ―― 海気分で勝ちに拘る、白熱の戦い! ――」 けいたろう

 ソフトボール大会はなのはなでは定期的に開かれている恒例行事である。

 とにかく勝ちにこだわった面々が揃う。主には勤労者体育館をお借りして3面分のコートを使用し、ゲストも参戦しての大きな戦いになる。

 ABCそれぞれのリーズのチームが互いに得点を競い合う。最下位のチームには罰ゲームが用意されており、その内容とは果たしてランキングの発表後というのだから負けるわけにはいかないという気持が湧き上がってくるのは当然と言えよう。

 体育館は広く、古吉野の体育館でプレイするのとではまた違った雰囲気があり、緊張感も湧き上がってくる。どのような戦いが繰り広げられるのだろうか。

 ここ数かなのはなでは毎夜ソフトバレーをしている。これまでは週に3回くらいだったが、今では水曜日を除いたすべての曜日で体育館は歓声と気合いの入った声に包まれていることになる。

 ほとんど毎日がバレーボールの試合なのである。全体のレベルもこれまでよりもぐんと上がっている。

■自主練習をして

 私はというとまずサーブが入るかどうかが不確実だった。トスを上げることもアタックを決めることもまぐれで成功するかという程度だったが、Aチームにいるからにはやはりサーブがまず入らないとちょっとまずいんじゃないのと思っていた。

 だから、すきま時間を見つけてしほちゃんがソフトバレーボールの基本を教えてくれることになった。

 サーブやアタックは高身長を活かして鋭く力強い。自分もそこまでいかずとも近づくことができたらな、という気持ちはあった。

 15分という短い瞬間の中でいかに吸収するかというのが課題だった。形から入って何度も練習し、横打ちばかりだったサーブを上打ちにすることが可能になった。

 まだまだ課題ばかりではあるが、とりあえずゲームにはなるんじゃないかという自信はついた。

 トスをアタックしやすい場所に上げたり、点数のとれるアタックの方法はまたこれから学んでいきたいと思っている。

 さて、ソフトバレーボール大会当日。

 勤労者体育館に入ると早速お父さんの姿が。

「右! 左! 前!」お父さんの声が響く。フットワークの練習だ。

 午前の時間を使って基礎練習のメニューをこなしていく。様々な状況下でのパスまわしや、打ち方、特に打ち方は指を立てたり、手首を使ってボールを返すと飛距離が伸びて実戦でも便利だと思った。

 これで受けたボールが手で触っているのに前じゃなくて後ろに飛んでいって失点してしまう確率を減らすことができそうだ。

 この練習メニューのおかげで全員がレベル10くらいアップして試合に臨めることになったに違いない。みんなの顔には『自信」の2文字が。

 サーブが入るようなったというだけでそれはもうものすごいことなのである。ボールが、自分が打ち上げた球がネットという険しい山脈を越える。それはある意味でイコール勝利を意味しているのかもしれない。そんなことを考えているうちに各コートでの試合が始まってしまった。

 私はAチームで、メンバーはあゆちゃん、まえちゃんと手の空いた助っ人、午前の部ではのりよちゃんが入ってくれた。

 意気込んで臨んだものの、どうも調子が上がらない。私のトスのミスや攻撃の決定力のなさが災いしたのかもしれないし、今までの組み合わせではなかったからかもしれない。

 相手チームがあまりにも勝ちに燃えているからそれに押されていったのかもしれない。流れというものは怖いもので、まるで浸透圧のようにあれよあれよと点数を奪われていったのであった。

 たとえ負けたとしても十数点、得ていればそこまで焦る必要はないのかもしれぬ。総合得点を競うのであるからできるだけ稼いでおきたいというのが本意ではあるが、この午前の部、負け通してしまったのである。

■浮き輪!?

 お弁当を食べる。唐揚げやハート方の玉子巻きが乾いたハートに染みいる。

 午後はAチームメンバーはBとCのチームとの戦いだ。しかもAチームにはハンデが与えられている。

 その伏線は午前の最初にあった寸劇にあった。浮き輪やゴーグルやビーチボールを手にしていた。

 海に行けなくて残念だったね、でもバレー大会があるじゃない、そんな内容だった。

 そう我々はそのいずれかを身につけたまま試合に入るということなのである。

 浮き輪なら落ちないように足腰を踏ん張らなければならない、ゴーグルは視界が著しく遮られる、ビーチボールは股に挟むかどちらかの腕に挟むかしなければならない。

 そして相手は5人編成ときた。ここで勝利の15点を得なければ間違いなく罰ゲーム直行だ。

 確実に行こう確実に。じゃないとまずいぞ。そうメンバーで誓った。場合によってはボールを3回ではなくて、即座に1回で相手側に返すこともやむなし。とにかく点だ。

 浮き輪を身につけたまま戦うというのは実におもしろい光景ではないか。私は浮き輪だった。

 まえちゃんやあゆちゃんはゴーグルとかビーチボールだったと思う。移動するときは浮き輪を持ったまま動けば良い。

 ただしボールを受けるときは片手か、両膝を曲げてふんばり両手でトスを上げるなどの工夫が必要だった。

 サーブの時も困った。おかしな姿勢のまま、上から打つサーブをする。若干、自分のオリジナルが入っていたかもしれない。

 一度は失敗したものの、点数を得るんだと言う気持ちが自分の腕に通じたのか、相手コートに入るわ入るわ。少し自信に繋がったと思う。

 途中からこちらのメンバーが3人になってしまうというピンチもあったが、それがむしろ互いの結束力を堅固にしていったのだろう。すべての戦いで15点を手にすることができた。

 罰ゲームは、退けた。しかし危うかった。後半戦で一致団結しなければ避けられなかったであろう。

 罰ゲームは海の生き物のジェスチャーをして、1位のなおとさんチームが当てるという内容だった。

 最後はAチームどうしのガチンコバトル。エキシビションとなってはいたがお父さんお母さん、みんなが見ている中での試合というのは緊張感が全く違う。

 たぶんこの日した試合の中で1番心臓の鼓動が速かったのではないか。根性が鍛えられた。ボールを打つ音やシューズが床を擦れる音、これらはたった1つのコートからしか発せられていないのである。なんという空間。だが、最後の最後でなおとさんチームに勝てたことが嬉しかった。

 なのはなソフトバレーボール大会。陸でありながら海に行った気分を味わえたのは初めての経験だ。

 またこのような一風変わったソフトバレーを家族みんなで楽しみたいものである。