「もう1度」 りな

8月23日

 今晩、肝試しがありました。実行委員さんがお昼ごろに古吉野を出発して、山小屋へ準備に行きました。どんな仕掛けが作られているのか楽しみで仕方なくて、ワクワクしました。
 お父さんとお母さんのきもだめしゲネプロのお話を聞いて、そんなにも怖いんだ、と少し心配になったけれど、お化けになるのは一緒にすごしているみんなで、山の中にはみんなしかいないんだから、きっと大丈夫、と気を引き締めていました。
 チームの紙がリビングに貼られ、見てみると、どのチームも2,3人で構成されていて、5人ぐらいのグループで回るんだと想像していたのでとても驚きました。私はあんなちゃんとまきちゃんと一緒で、とても心強いメンバーだったけれど、やはり3人だと知って、心細くなりました。
 
 5時に古吉野を出発して、山小屋に着くと、まずササゲの収穫をする予定でした。ササゲは、数日前まりのちゃんとえみちゃんとかにちゃんと一緒に収穫していたのですが、あまりのさやの多さに驚いて、1畝で米袋パンパンになるぐらいさやがついていました。とても大豊作なのが嬉しくて、みんなで収穫できるのが嬉しかったのですが、山小屋に着いたとたん、空がピカッと光って、数秒後に「バリバリ!」と大きな雷の音がしました。近くで落ちたような音がして、怖かったです。きもだめしの天然のBGMだなあと思いました。

 少し車で様子をうかがって、雷がやんだのを見て、10分間限定でササゲの収穫をみんなでしました。みんなで収穫をすると、10分間だけでもとても進んで、やっぱりみんなが合わさった力って凄いなあと思いました。
 

 もう6時になっていて、山小屋で夕食を頂く時間です。山小屋に着くと、お父さんとお母さんの姿もあって、盛男おじいちゃんも来てくださっていたのが嬉しかったです。夕食は、手延べそうめん。盛男おじいちゃんがこの前お話されていたそうめんだなあと思って、ワクワクしました。お箸やお椀が竹で出来ていて、お箸は実行委員のみんなでささくれを取ったんだよ、と聞いて、こんなに料亭のような豪華な夕食がいただけるのが嬉しいなあと思いました。山の中で、天然の竹のお椀で、頂くことが、なんて恵まれているんだろうと思いました。そうめんも、もちもちしていて弾力があって、とても美味しかったです。

 私のチームは21つチームがある中で、16番目。かなり後半に回るチームでした。最後のチームの人から、山小屋の中に入っていきました。
 いつもなら、温かい雰囲気を醸し出す山小屋が、入ったとたんその変わりようにびっくりしました。明かりが消され、薄暗く、そこに照らされているのは障子に移った腕や垂れ下がった髪の毛。壁には破れた新聞紙が貼られ、天井から何本もの包帯のような白い帯がぶら下がっていました。まるで、お化け屋敷のようでした。山小屋に全員入って、まだ少しは安心したものの、山小屋がこんなに怖いのだから、これから始まる肝試しは尋常ではないのだ、と思いました。さらに、まきちゃんが仕事で来れなくなったという知らせを聞いて、あんなちゃんと2人で回ることになりました。一気に不安になりました。
 
 お父さんとお母さんが、日本の怪談話をしてくださりました。最初のお話は、耳なし芳一で、お父さんが語り部でした。
せいこちゃんがピアノで気味悪いメロディを弾いてくれて、さらに怖くなりました。お父さんの「芳一…芳一!」という声がいきなり響いて、背筋がゾクッとしました。まるで、亡霊がその場にいるようなゾクゾクした気持ちになりました。

 芳一のお話が終わると、心臓がバクバクしました。1チーム目が呼ばれて、きもだめしをスタートするところを見送りました。いまからいよいよ始まるんだな、と思ってドキドキしました。でも、私達は16番目でまだ大丈夫、と自分に言い聞かせました。
 続いて、お母さんのお菊さんのお話。「1枚、2枚…9枚、1枚足りない!」お母さんの声が響きます。お母さんの声が、お菊さんの声のように聞こえて、背筋が凍りつきそうでした。
 
 お話が進むごとに、だんだん山小屋の人数も少なくなってきます。刻々と近づく私達の番をドキドキしながら待ちました。
 お父さんとお母さんのお話は、どれも怖くて、おつゆさんのお話は初めて聞きました。でも、やっぱり本当にあったお父さんの怖いおはなしが、何回聞いても身近に感じられて怖いなあと思いました。ずっと怖いところにいて、怖いお話を聞いていると、心の準備が出来て、少し怖いお話もなれたような気がしました。
 私達の番が呼ばれて、あゆちゃんから地図と、4つのスポットから1つずつアイテムを持って帰ってくるという説明を聞きました。そして、光るブレスレットと懐中電灯をくれました。懐中電灯を照らして初めて、前の道が見えました。

 スタートからは、上り坂でした。これからどんな仕掛けが待っているんだろうと思うと、ぞくぞくして凍り付きそうなぐらい怖くなりました。最初は麦藁帽や少しのことでも後ずさりしてしまうほど怖かったです。
 いつ出てくるんだ、とびくびくしながらゆっくりゆっくり歩いていると、懐中電灯が、長靴を照らしました。ビクッとして、あんなちゃんが全身を照らしてくれると、そこには赤い服の人が倒れていました。「うわあ」、あんなちゃんと小さくうなだれて、しばらくそこに立ち尽くしてしまいました。

 でも、道は1つしかなくて、ここを何とか通り抜けるしかない、そう思って、足音を立てないようにひっそり近づいていくと、ゆさゆさゆさと、素早く揺れて、腰が抜けそうなほどびっくりして、悲鳴を上げながら、来た道を引き返しました。
 もう一度リベンジして、次はあんなちゃんと「せーの!」で思いっきり突っ切りました。すると、ちょうど通り過ぎるあたりでばっと人が動くのが分かって、追いかけられるのかと思ってとても恐ろしかったです。追いかけられないと分かって、後ろを振り返ると、人形で、首が吊られた形でぶら下がっていました。「ギャー!」自分でもびっくりするぐらい、大きな絶叫をしていました。力の限り走り抜けて、もう息がハアハアなりました。とんでもないところに来てしまった、と思ったけれど、もう引き返せなくて、これから出てくるお化けにびくびくしながら進みました。

 それからは、道にたくさん人形が置かれていて、それが懐中電灯の光に当たるたびに動きやしないかとひやひやしました。いつもは図書室に置かれているダッフィーや、6年生教室の人形など、知っている人形でも怖かったです。

 ゲゲゲのトイレが見えてきました。絶対に誰かいる、そんな気配がしていて、誰かに見張られているような気がしたけれど、ゲゲゲのトイレについても、誰も出てきません。あんなちゃんと、トイレのカギを開けて、ゆっくり扉を開けると、便器に黒い人形のようなものが置かれていて、壁には達筆のお札が貼ってありました。大丈夫、何もしかけはない、と分かって、お札を取りました。安堵の息をもらして、引き返そうとすると、ゴソゴソ、と物音が。そして、茂みから誰かが出てきて追いかけてくるではありませんか。気を緩めていた隙をつかれて、何も防御をしていなかったので飛び上がりました。心臓をバクバクさせながら、全速力でダッシュしました。まだ前半で、お父さんが「後半になっていくほど怖くなっていく」とおっしゃっていたのを思い出して、さらに恐ろしくなりました。

 山小屋キャンプのときにお白い族をした小屋は、どうやら藁人形が置かれている2つ目のスポットらしく、ろうそくの薄明かりが灯されています。でた、ここにも青い服の人形がベンチに横たわっています。また、同じ仕掛けだな、そうは分かっていても、やっぱりこの人形の横を通り過ぎるのは怖くて、なかなか足が動きません。でも、思い切って、あんなちゃんと一緒に藁人形までの短い距離をダッシュ! ブルブル震える手で藁人形をがしっと掴み、急いで帰ろうとすると、茂みの中から白い顔が出てきます。それと立て続けに人形がガバッと動いて、パニック状態。でも、なんとか藁人形をゲットしました。
 
 前方から、甲高い悲鳴が聞こえてきます。次はどんな恐ろしいことが待っているのだろう、と足取りが重たくなります。
 2つ目のスポットを通り過ぎると、すぐに3つ目のスポットがありました。そこは、アトリエだった場所で、外からも不気味なBGMが流れ、窓からは真っ赤な光が漏れてきます。前のチームの人とバッティングして、赤くて背の高いお化けが館から出てきています。そして、前のチームが去っていくと、すっとその館に何事もなかったかのように入っていきました。うわあ、この中に私達も入るのか、そう思うと、とても怖かったです。

 部屋に入ると、壁全面がカーテンに覆われていて、お化けの気配をプンプン感じました。部屋の真ん中には、芳一と思われる人物が、座禅をしています。背中にお経が書かれ、片方に耳がついています。この耳をとるのはあまりにも恐ろしくて、その場で凍り付いてしまいました。あんなちゃんが耳に手を伸ばすところをただ見ているだけしか出来ませんでした。あんなちゃんが、耳を取ると、部屋からお化けたちが一斉に出てきて、混乱して一目散に入り口に向かって走り出しました。部屋を出ても、背の高くて赤い服を着たお化けは追いかけてきました。やっと追いかけてこないところまで逃げると、お化けの顔を見ることが出来ました。お面がどくろのような恐ろしい顔で、目が合ったらドキッとしました。

 下り道では、白い服の女の人が追いかけてきたり、紙でできた幽霊が吊られている、と思って通り過ぎると、いきなり動いたりして、ずっと心臓が止まりそうでした。もう少しでゴール、というところの道の前で、チェーンソーを持ったゾンビが仁王立ちして待っていることに気が付きました。お父さんのお話を聞いていたので、切り裂きジェイソンだな、と思いました。
 
 ジェイソンは、チェーンソーをゆっくり前に突き出してきて、とても怖かったです。頭では、チェーンソーが作りものであることも、なんとなく秀幸さんのような気がするのも分かっていたけれど、やっぱりジェイソンに近づくことはできずに、次のチームの人の声が聞こえてくるぐらいまで立ち尽くしてしまいました。

 ふと、あんなちゃんが、「ここの道で合っているかな」と、地図を照らしてくれました。すると、うっかり4つ目のスポットを忘れていることに気が付きました。4つ目のスポットは、今立っているところから少し戻ったところにありました。
 
 そこにはお墓があって、人形のお札がお供えされていました。あんなちゃんが取ろうとすると、お墓がスローモーションでガックンと倒れて、ビクッとしました。中から出てきたのは、骨でした。人が出てくるのかと思って身構えたけれど、少しほっとしました。
 
 4つ目のアイテムもゲットしたのもつかの間、ザーーというテレビの音が聞こえてきて、嫌な予感がして、あんなちゃんと一気にゴールまで走り抜けました。走り抜ける先にはジェイソンがいるとは分かってはいても、足は止まることなく、突っ込んでいきました。横にジェイソンがいたけれど、ジェイソンが出る間もなく、走って、心臓がバクバクしているうちにゴールにたどり着きました。

 ゴールしても、放心状態になって、生きている心地がしませんでした。でも、少し気持ちが落ち着いてくると、本当に実行委員さんの姿が見えなかったなあと思ったし、誰がどの担当をしているのかもわからなくて、実行委員さんが凄いなあと思いました。どんな仕掛けがされているのか分かったうえで、回るのも楽しそうだなあと思って、あんなにビクビクしていたのに、もう1度回りたくなりました。そう感じることが不思議で仕方がありませんでした。

 実行委員さんが小物づくりや演技の練習で、毎日コツコツと企画してくださって、楽しませてくれて、ありがたいなあと思いました。また肝試しができるときが楽しみだなあと思いました。