【山小屋便り8月号】「ミッション! 雀から蕎麦を守る! ―― 蕎麦の収穫に向けて、鷹のカイト作り ――」 なつみ

 遡ること約100日前。

「蕎麦の種まきをします!」

 初めての蕎麦の種まきは、ばらまきです。

 花咲かじいさんになったように、白い小さな花をいくつも咲かせる蕎麦を想像して、夢見ながら種まきした蕎麦。

保育園前畑は蕎麦畑となり、真っ白な蕎麦の花が綺麗でした

 しかし、その蕎麦が芽を出すことはありませんでした。みんなで色々原因を話し合いました。

 ある日、見回りに行き、種をつまんで見てみると、中身がありません。皮のみが、畝の上に転がっている。

(何者かが食べているに違いない)

 そう思い、顔を上げると、畝の遠くで小さな「何か」がちょこまかと動いています。

 茶色い身体に、少し黒と白のアクセントカラーを身にまとったフワフワの……。

 そう「スズメ」です。種まきをしたあの日から、スズメとの戦いのゴングは鳴っていたのです。

 不織布で種を守り、(これでこの先蕎麦が食べられることはない)と、早くもスズメとの戦いに終止符を打ち、花を咲かせた蕎麦、実を付け始めた蕎麦を、ただただ嬉しい気持ちで、毎日見守っていました。

 ある日、見回りに行き、熟した実をつまむと、中身がありません。

(これは、まさか……)

 脳裏に嫌な予想が浮かびました。お父さんに相談に行くと、やはり「スズメ」の仕業。収穫まで、またスズメとの戦いが始まりました。

 早急に鳥よけネットを張ったものの、ネットの編み目をギリギリ通り抜けて、蕎麦の実を食い散らかします。

 一体どうしたものか。スズメはかなり腹ぺこな様子。

 しかし、許すわけにはいかず、新たな対策を打ちました。それが「手作り鷹カイト」です。鷹の凧でスズメを脅すという対策です。

■鷹カイト

 須原さんと一緒に作成しました。まずは、須原さんが本物の鷹カイトを実際に見に行ってくださり、凧の骨組みや吊るし方、大きさなどを確かめてきてくれました。

 横幅は185センチもあり、風を受けるとかなりの力が凧を襲います。

 畑に設置することも踏まえて、なのはなにある材料のベストで強靱な鷹カイトを手作りしました。

 骨組みにはポール。風で大きな力を受けることを考えると、竹籤では心許ない気がして、防虫ネットを張るときに使うポールを活用しました。

 布の部分は透湿防水シート。質量が重くなく、畑で使って破れたり、濡れてふにゃふにゃになったりしない素材を選びました。

 須原さんは、一緒にスズメから蕎麦を守りたいと思う、私たちに心を沿わせて、最高の凧を作ることに力を注いでいました。

 作成から翌日、畑に設置。

 強風が鷹カイトを襲います。鷹カイトは、2本の竹に吊られて、まるで飛んでいるかのように、蕎麦畑の真ん中を羽ばたきます。大きくと動き回って、私も少し後ずさりするほどです。鷹カイトが活躍しますように。

■いよいよ収穫

 そして、何だかんだスズメと戦いながら、待ちに待った収穫の日を迎えました。梅雨の晴れ間。絶好の収穫日和です。

 この日は、早朝にやよいちゃんと、やすよちゃんと収穫の段取りや計画を練って、3日間で20スパンある畑を、1日、6スパン。効率よく刈れるように考えて、臨みました。

 蕎麦畑を見たことある方は知っているかもしれないのですが、蕎麦は150センチ近くあります。

 この夏は長雨で畑に入れず、それに伴って雑草がたくさん生えていました。

 蕎麦の収穫が始まります。刈り部隊は蕎麦の株を、赤い茎を目印にザクッと根元から草刈り鎌で刈ります。

 雑草をよけながら、質とスピードを考えて、やよいちゃんのタイムコールの元で進んでいきます。

 1スパンが23分から20分に縮まり、6スパン目には15分で刈り終わりました。

 蕎麦の実は落ちやすく、丁寧に扱わなければならいのですが、その中でスピードを上げて迅速に、丁寧に刈っていく刈り部隊は頼もしく、格好良かったです。

 一方で、やすよちゃんと私の運び、縛り、島立て隊は、刈り部隊のスピードに驚きながらも、負けじと運びと縛りに勤しみます。

 軽トラックが、縛られた蕎麦でいっぱいになると、雨が当たらない場所に「島立て」をします。

 約35センチ幅に縛られた蕎麦を、7束組み合わせて島を作ります。

 お互いに支え合う蕎麦がいっぱいに詰め込まれ、蕎麦の少し香ばしい、香りが広がっています。

 そして、みんなの元に戻り、また黙々と運んでは縛る、運んでは縛る。

 刈り部隊は、タイムコールを聞きながら、黙々と刈る、刈る、刈る。

 2日目までは、作業が終わっても、目の前には蕎麦と雑草の海が広がり、気が遠くなる思いをしました。

 3日目。60メートルの畝を刈り終えて、後ろ見ると、そこには倒れた雑草の流れが出来ていました。大海原の回航を終えたような、清々しい達成感を、仲間と共有しました。

 1週間後には、「ガーコン、ガーコン」と、新しい脱穀機で脱穀されて、それから水分15パーセントになるまで天日干しされます。

新しい脱穀機は、リズムよく脚を踏み込み、蕎麦を脱穀していきます

 先の尖った、くぼみのある実は、やがて製粉されて、お蕎麦となります。

 引き立て、打ち立て、出来たてのお蕎麦。楽しみに待っているみんなの口に入るまで、後もう少し。美味しいお蕎麦を夢見て、頑張っていきます。