「お化けは見た ~肝試し赤裸々リポート~続編」 ゆい

8月24日

 昨夜の続きを書きます。

○お化けは見た ~肝試し赤裸々リポート~続編

 1組目では失態をおかし、お化けのくせに穴があったら入りたいと落ち込んでいましたが、このままで終わらせるわけにはいきませんでした。
 やよいちゃんが、「照らされちゃったんだけど、紗はこのままで大丈夫かな」と言ってくれたので、一行が去るときには背を向けて、動かず、絶対に誰か分かるようなことは避けようということにしました。
 
 そそくさと人形をセットし、2組目をまつこと3分ほど。歌いながらやってきました。しかも、シェイプオブユー。陽気な3人組はえつこちゃんたちでしょうか。歌って気分を明るく保とうと努力しているのが伝わってきました。やよいちゃんのベストタイミングでの人形の引き上げ、それから笹。それから今度は叫び声を上げながら、がさがさっと追うような動きだけをする。3人は驚いて声をあげつつも、再び歌って去っていきました。まずまず成功。

 ゆりかちゃん、まちちゃん、のえちゃんの3人組が来ました。人形をライトで照らし、見つけた時からかなり怖がっている様子。非常にリアクションが理想的。
 まちちゃん、「うわ、なんか長靴履いてるやン。なのはなの、長靴、履いているやん」と、長靴にコメント。そうです、この長靴は最初は履いてなかったけれど、ゲネプロでお父さんお母さんが靴を履くように言ってくださって、付け足した物です。効果大。
 やよいちゃんの1度目の引き上げで、枯葉が落ち、おどろおどろしいマスクが露わになると、3人は悲鳴をあげて後ずさりました。いい感じ!
 それから通り過ぎようとするところで、第二波。それから笹と叫びの追い打ち。悲鳴を上げて、走り去る3人。成功。
 やよいちゃん、3人が去っていくのを見送って、そろりそろりとマイカ線を緩め、人形を下ろし、私は枯葉をかき集め、再びセッティング。会が終わって帰るとき、貞子役のなおちゃんも言っていたのですが、脅かし終わって素に戻ってセットするときの自分を客観的に見るとなんとも言えない感じです。
 やよいちゃんが頷いて「理想的」と一言。私も同感で、頷き返しました。

 さて、次々にやってくる一行。
 のりよちゃん、ふみちゃんペアは、リアクションが大きい。怖がっているけれど、元気いっぱい。本当に怖がっているのかな、この2人は。
「のりよとふみちゃんが通ります! ごめんなさい、通ります!」と叫びながら走り去る2人。こちらのご一行は「宣言ダッシュ型」と名付けたい。そこに追い打ちをかけ、2人は猛ダッシュで坂を登っていきました。よし、と思ってセットに取りかかろうとすると、のりよちゃんが「すみません。携帯落としました! ごめんなさい、とらせてください」と言いながら降りてくるではないですか。明らかに、お化けの事情を気遣いつつ、しかし焦りつつ。
 私は、お化けのくせに、親切心を出してしまい、一緒に探そうとしてしまう。いや、放っておいたほうがいいのか? あわあわ。
 のりよちゃんが、「見つけたので、すみません、とりますね」と言い、私は、のぼーっとした動きでOKサインを手で作って無言で去る。なんだそれ、お化けらしからん。と自分で思いつつも、一安心して次のセット。

 山の中からは、上に登っていった一行の叫び声がこだましていました。
 そして、毎回聞こえてくるのが、「ドスン、どたどた」「きゃー!」という一連の音。これは芳一部屋で、まえちゃんが押し入れから飛び降りた音と、そこから始まる恐ろしい惨劇への悲鳴なのです。この音を毎回聞く度に、(ああ、芳一部屋も頑張っているんだな)と、仲間の頑張りに勇気をもらう、お化けの私。

 さて、一番私が心配していた、なるちゃん一行が来ました。なるちゃん、ゆずちゃん、なつみちゃんが来ました。
 なるちゃんは、山小屋への行きの車の中でも、「なんでこんなことになっちゃったんだよぉ。嫌だよ、本当に嫌だよ」と言っていて、大の怖がりだという話をしてくれていました。
 私はなるちゃんの怖さを緩和するために、ここだけの話、といって、芳一部屋のに張り巡らせたお札のなかには、あけみちゃんの遊び心で「菜ノ花家族」とか「焼肉定食」というものがあるんだよ、と打ち明けてみたものの、なるちゃんの反応は芳しくないまま。ああ、なんとかなるちゃんが楽しめますように、と色々思いを巡らせていました。
 そんななるちゃんが、3人でやってきたのです。なるちゃんの驚き方は、本当に怯えていて、今にも帰りそう。もうこれ以上、怖がらせるわけにはいかない、と思いました。名付けて、食わず嫌いならぬ、「食わず絶叫型」。
 やよいちゃんの第一波、二波のタイミングでは、ひたすら、(なるちゃん、頑張って、耐えて。さあ、もう終わりだよ、逃げて! これから先、どうか頑張って)と心の中で応援するお化けの私。
 なるちゃんたちが去ったあと、「やよいちゃん、なるちゃん大丈夫かな」。やよいちゃん、「うん……」。2人でなるちゃんたちを心の中で応援して見送りました。

 そして、あんなちゃんとりなちゃんペアが来た時のこと。
 2人はまず、人形を認めると、恐怖の声を上げました。素晴らしいリアクション。名付けて、肝試し理想型。
 それから、恐る恐る近づき、通ろうとすると、やよいちゃんの第一波。
 2人は、本気で叫び、後ずさる。というより、3メートルではきかない、5メートルくらい、せっかく登った坂道を猛ダッシュで下り、尻餅をついている。
 もう、手を合わせて拝みたいくらいのリアクション。のりにのったやよいちゃんと私は、第二波、ラストの追い打ちとたたみかける。
 2人は「きゃー!!」と叫び、渾身の力であの坂道を猛ダッシュで登って逃げていく。
 
 やよいちゃんと私、「最高に理想的。さすが」と、あんなちゃんりなちゃんを大絶賛。本当に、去っていく後ろ姿に手を合わせたい気分。自分、お化けだけど。

 2人のお陰で勢いづき、お化け2人は自信を回復しました。お化けの自信は、こうやって保たれているのだと実感。

 決しておばけは、「ひっひっひ、脅かしてやるさ」と余裕で有頂天になっているわけではないのです。怖がりすぎているお客さんがいれば、どうやったらマイルドに、楽しみながら怖がってくれるかと緊張しながら、追い打ちの加減をし、鋭いお客さんには、いかに上手いタイミングで驚かして、「さすが、プロのお化けは違うなあ」と安心して楽しんでもらえるかと息をつめているのです。

 お客さんんを待つ間、思わず口にしてしまったこと。それは、「ねえ、やよいちゃん。肝試しって、お互い利他心が必要だね」です。
 お父さんが、良いコンサートは、パフォーマンスする側と、観客側の間にできるとお話してくださるけれど、肝試しも例外ではなかったのです。
 お化けは、余裕なんてないけれど、神経を張り巡らし、余裕で驚かすようにタイミングをはかります。お客さんは、ストレートに、仕掛けを受け止めて驚き、楽しみ、さらにはリアクションなんてくださったら、最高で、おばけの励みになるのです。
 決して、お化けの正体を知ろうとしてはなりません。誰がやってるの、なんて照らされちゃったりしたら、意気消沈してしまいます。どうか、最後まで演じさせてください。

 時にはこんなこともありました。一行が逃げ去り、次のセッティングをしようとしたときのこと。やよいちゃんが「もう次が来ました!」と小声だけれど緊迫した口調で知らせてくれました。
(ええっ? まだ人形に枯葉かかってないよ。隠せてないよ。でももうこのまま行くしかない。)
 ザ・中途半端の回。志半ばの悔しさが募りますが、それでもやれることをやるしかないです。どんな条件であろうと、誇りあるなのはなのお化けとして、やれることを全力で。
 でも、できるなら、どうかみなさん、前後のチームとは、ばらけるように来てください。

 

 この2時間少しの間に、焦ったり、怒ったり、喜んだり、自信をもったり落胆したり。もっとこのほうがいいかなと改善を加えたり。
 やよいちゃんと一緒に、20組のお客さんを迎えては送りました。

 20組を送ったあと、やよいちゃんと一緒にコースを回り、仲間のお化けに「終わりだよ」と告げつつ、みんなで提灯やら、人形やらを回収して帰りました。
 山を降りながら、もうぐったりですが、最後にやはり監督の須原さんは、お化け仲間が歩いてきたと知っているのに、サービスしてくださるのです。絶妙のタイミングで、着物の女の人がふっと空中で迫ってきます。そのあと、追い打ちをかけるのが、唸るるりこちゃん。怖すぎる。
 そして、るりこちゃんも私も、もう喉ががらがらで、声がでなくなりました。重低音で叫ぶのは、声帯に悪い。お化けはボーカリストにはなれないな。大変なんだな。

 さて、山から降りると、セブンブリッヂをしていたみんなも集合し、お父さんが締めのお話をしてくださっていました。ようやく役目を終え、片付けに山に一人で山に入ると、怖すぎて泣きそうになりました。大事な死体人形を抱きかかえ、あちこちにひっかけた人形やら、提灯やら、両手一杯に抱え、時には、急な斜面の枝に掛かった靴下を回収し。
(誰なのよ、こんなのころに靴下かけたのー)と呟きながら、やっぱり山の中に一人はかなり怖かったです。
 下からさやねちゃんとちさちゃんが助けに来てくれて、ほっとしながら下山しました。

 片付けを終えて、古吉野への車の中。仕事を終えたお化けたち、今日の仕事の成果を話しました。本当に出し切ってしまった感あり。やっぱり、お化けは大変だ。
 
 さて、翌朝、食事の席でみんなのコメントを聞くことができ、すごく元気になりました。みんな楽しかったんだな、怖がってくれていたんだな、と思うと、(ああ、やらせてもらってよかった)と思いました。
 特に、一番最初の失態と思われた事件について、みほちゃんが、「一番初めのところが一番怖かった。私はお化けに足を掴まれてしまって、本当に怖かった」という話をしてくれて、(ああ、あれは失敗ではなかったのか)と、すごく救われた気持ちになりました。

 当日の夜までは、本当にみんなは楽しんでくれていたのか、分からないところもあったので、「紗の裏から顔を照らされるような事があるなら、もう二度とやらない!」とぷりぷりしていたのですが、みんなやっぱり、楽しんでくれていたんだよな、と思うとすごく肯定された気持ちになりました。
 こうだったらいいな、と思ったことがあり、私も、驚かされるときは素直に受け止めて、驚かす方なら一生懸命本気でやって、肝試しじゃなくても、いつでもストレートに受け取ったり、発信したりできたら、ということを思いました。
 素直に受け取ってもらえたら、もっと喜ばせたい、楽しませたいと思うものだし、受け取った方も、何か提供する方もとても嬉しいと思いました。これは、お母さんが以前話してくださったことに繋がっているな、と感じていました。

 お化けの私は、すごく前向きな、ストレートな、明るい気持ちになりました。肝試しの実行委員で、予想外の気持ちをたくさん感じさせてもらったと思います。これを人間の日常生活で活かしていきます。
 以上、「お化けは見た~肝試し赤裸々リポート~」でした。