「人生初の肝試し」 なつみ

8月23日

「どうしてこんなことになったんだ!?」と、嘆く。
 いよいよ始まる、なのはな10年ぶりの肝試し。肝をしっかり持って離さないよう、覚悟を決めて山小屋の坂道を登る。

「もう帰ろう。もう良いよ。帰ろう帰ろう。なんで、もう帰ろうよ。」
 なるちゃんは左腕にゆずちゃんの腕、右腕に私の腕をガッチリ組んで放さず、「帰りたい」を連呼。
「みんな準備してくれたから、行かなきゃ。」
「なんで!! もう良いよ! 帰ろう! ねぇ帰ろう!」
 正直私も引き返したいけど、怖いけど、なるちゃんがこんなに怖がっているから、私は嘘でも平気なように振る舞わなければならないのです。(私がなるちゃんを守らなきゃ)
 そんな使命感を抱きながら、山道を歩きます。
「地獄絵図」と書かれた紙には、肝試しの地図が書かれています。

 最初のお札は「ゲゲゲのトイレ」。
 このトイレに私は引っかかりました。「ゲゲゲのトイレ」にたどり着く前に、トイレがもう一つあったのです。
 ここで、ゆずちゃんと私は一応、トイレを開けてみようと手を伸ばすと、なるちゃんが、
「絶対何か出てくる! 絶対何か出てくる! お札要らないから! もう良いから、帰ろう!」
 と必死の形相と叫びで引き留めます。
 私とゆずちゃんは、もしこのトイレにお札があって未回収にし、もう一度夜道を引き返して探しに来なければならなくなることを考えると、 チェックするに超したことはないと思い、怖がるなるちゃんの腕を振り切ってドアを開けました。
「キィィィィ…(ドアの開く嫌な音)」
「…何もない。」
「…あぁ本当にもう! やだ! 帰ろう!」
 無駄になるちゃんを怖がらせたこと。ここで謝罪します。済みませんでした。
 
 帰りたくて仕方無いなるちゃんをゆずちゃんと私で挟んで歩きます。
 途中途中、帽子やぬいぐるみ、白い靴下が干されてたり、トイレットペーパーの芯が置かれていたり。
 それをライトで照らすと、なるちゃんは、「なんでこんな所に置いてるの! 怖いよ! もう!」と怒ります。私の代わりになるちゃんが怖がってくれているようで、なんだか少し余裕が生まれてきました。

 歩いていると、どこからかお経が聞こえてきます。
「耳無し芳一から、耳を千切って来てください。」
 出発時、あゆちゃんから説明を受けました。
 お経が聞こえてくる、山小屋のアトリエへと足を踏み入れると、背中や肩にお経を書かれた芳一が座禅を組んでいます。
 耳を取ってきたら良いのだと思い、耳を探すのですが、あるのはけいたろうさんの眼鏡と蚊取り線香。
「耳、どこですか。済みません。耳どこですか。」
 恐る恐る尋ねても、見向きもしない芳一。よく見ると、芳一の左の顔に、耳があります。
(実際に千切らなきゃいけないのか)
 さすがに怖くて、でもゆずちゃんか私が行くしかなくて、なるちゃんは一歩もアトリエに足を踏み込まない、でも外で一人きり、待つことも出来ない。
「あたし行ってくる。なつみちゃんはなるちゃんと待ってて。」
 勇者ゆずちゃんが、一人。アトリエへと消えていきます。
「ドンッ!」
「ぎゃぁぁぁぁ(なるちゃん)」「うわぁあぁ(ゆずちゃん)」
 なるちゃんはガッチリ組んでいた私の腕をあっさりと放し、一人暗闇に逃げていきます。ゆずちゃんも走って逃げていきます。私は追いかけます。
 
 10メートル先くらいで何とか追いつき、最後、お供え物のお札も取って、持ち帰らなければならないアイテムは全部揃いました。
 (あとは、山小屋へ帰るだけ)
 全員がそう思っていたところに、お化けが潜む、黒い紗が、ライトに照らされました。
「もうやだ! あたし行かない。進まない。嫌だ!」
 なるちゃんは終始叫び続けます。
「私が先を歩くので、お化けが出終わったら来てください。」
 私は一人、ライトを持って前を歩きます。怖いのでしゃがんで歩きました。
 すると、木の陰に、白い仮面をかぶった浴衣のお化けが横目に入りました。しかし、私を脅かしには来ません。
 なるちゃん達が通らないと、このお化けは出てくることが出来ないと察し、その旨をゆずちゃん、なるちゃんに伝えると「走って逃げる!!」と言って、いきなり走り出しました。

 私は一人置いていかれました。
 途中で貞子が前を走るなるちゃんとゆずちゃんを襲います。続いてジェイソンも出てきます。
「ぎゃぁぁぁぁ」
「もうやめてーーーーーー!」
 叫びながら逃げる2人を、1人置いていかれた私は唖然と眺めます。
「置いていかれてしまった」
 呟くと貞子が、
「追いかけて!」
 と、2人の走っていた道を指さします。「はい」と答えて、走ると、ジェイソンと目が合いました。
「置いていかれてしまったんです。」
「ははははは」
 ジェイソン(ひでゆきさん)は笑って見送ってくれました。

 山小屋に先に到着した2人に出会い、洗い物をして、癒やしのセブンブリッジに向かったものの、何かに取り憑かれたように、なるちゃんの顔はげっそりしたままでした。
 人生初の肝試し。自分の肝は、試されて強くなったように思います。
 お父さんお母さんの怖い話に出てきた登場人物が、古吉野に来ないことを祈って、お札を貼りたいです。

 一日遅れの肝試しの日記です。ぜひまた、肝試し、したいです!