【山小屋便り6月号】「初夏の桃畑で ―― 桃の摘果、そして袋がけへ ――」 あんな

 桃の木は5月の爽やかで明るい陽射しを浴びて、葉が艶やかに輝いて見えます。

 とても元気で、生命力に溢れ、充実しているのがわかります。

  桃の木を見るだけで、清々しく新鮮な気分になります。

 桃の摘果をしました。桃の木に刺激を与えないように、3段階にわけて行いました。急激な摘果は、養水分の変動が大きくなったりして、収穫前の落果を招くことがあるのです。

■桃に気持ちを添わせて

 1回目の摘果は、4月21日からはじめました。花が散ってガクだけの状態の中に3ミリほどの実ができた頃です。予備摘果、と呼ばれたりします。

 ゴールデンウイーク頃まで晩霜が降りる可能性があるため、ここ何年かは、霜のリスクがなくなる5月10日前後から摘果を始めていました。ですが、これまで本当はもっと早めに摘果をしたいと考えていて、今年は霜のリスクはあっても早めにすることにしたのです。

「桃がスカートを履いているみたい」

 一緒に作業した、ななほちゃんや、りなちゃんが桃を見て、可愛いとしきりに言っていて、嬉しそうでした。新しいメンバーと作業をすると、新鮮な感じ方ができたりして私も楽しかったです。

 1回目の摘果ではだいたい5〜7センチメートル間隔程度に桃の実を間引いていきました。しかし、それはあくまで目安で、「枝の1番良い位置に実が残るようにしたい」ということを、メンバーには強調して言いました。ただ機械的に等間隔に間引くのではなく、枝の長さや位置によりますが、先端のほうに実をつけると傷つきやすかったり、付け根のほうだと日陰になり糖度が乗らないなど、様々な条件を考慮して良い位置にある実を残します。

 人工授粉樹の、おかやま夢白桃や、浅間白桃は、結実がはっきり確認できてからのほうが良いため、それ以外のすべての木を4月30日までに一巡しました。時期的に、この時期に予備摘果を終えておけるのは良いペースだと感じ気分がよかったです。

 2回目は5月11日から、実の大きさが2〜3センチメートルになった頃に行いました。

 今度の摘果は、最終的に残す数の2倍〜2.5倍まで数を絞ります。虫食いや変形などの異常もわかってくる頃で、そのような実を優先して落します。メンバーは一巡目から引き続き、るりこちゃん、あけみちゃん、ふみちゃん、まきちゃん、ななほちゃん、りなちゃんの中から常時6人が入ってくれました。

■新しい発見

 問題が発覚しました。

 奥桃畑の日川白鳳や、石生の加納岩白桃など、少し触れただけで実がポロっと落ちてしまい、実が異様に取れやすいと感じました。また、人工授粉が必要ではない木は普通は花がほぼ100パーセント近く受精して成長していくのですが、今回は多くの花が受精していなかった様子で、生育が1センチメートルほどで止まった実が混在していました。このようなことは初めてでした。木によっては摘果を見合わせることにして、実が十分ついていて早めに摘果をしたほうがいい木だけ回りました。

 ややショックでした。

 そんなとき、農協の方からいただいた資料に、こんなことが書かれていました。

「今年は3月が暖かくて開花が早く、4月になってから低温になったこと、霜も何回か降りたことで、全体的に結実不良ぎみ」

 なるほど、と思いました。今年は冬がとても暖かくて、開花が早い白皇は3月23日から咲き始め、おかやま夢白桃なども早かったです。一方で、4月以降は、花がなかなか咲かない品種、咲きそろわない品種も多く、長い期間ダラダラと咲き続けていた印象があります。摘果をしていて気付いたのですが、白皇や、おかやま夢白桃など、開花が早い品種の実止まりはよく、開花が遅くて揃わなかった品種は結実不良の実が多いように感じました。

 これは新しい発見でした。結実不良は少し残念なことではありますが、この事例をとても興味深く思いました。

(今年の条件に合わせて、然るべき管理をすることで収量は確保できると思うし、良い収穫に結び付けよう)

 また今年はカメムシが大発生しているようで、虫食いも見受けられました。被害が大きい木は、やや多めに実を残しておくなどの調節をしました。開花後からは、薬剤噴霧などもタイミングを計って効果的になるように、気を使っています。何かと緊張が途絶えませんが、しっかり桃を守れるよう最善を尽くしたいです。

袋掛けを行った奥桃畑の『はなよめ』

 3回目の摘果は5月19日から3日間で行いました。これは仕上げ摘果で、いよいよ最終着果数まで数を絞ります。実の大きさは3.5センチメートルほどになり、大小差や変形果も見極めやすくなりました。日当たりが良い位置で、実の顔色がよく、甘い桃になりそうな実を厳選します。作業のときにさらに緊張感が増しました。

 品種によって、実の密度を少し変えています。大玉になるおかやま夢白桃などは、他の品種と同じように実を置くと、大きくなりすぎてしまうことがあるため、少し多めに残しました。

■硬核期へ

 清水白桃や白麗などは、生理落果が起きやすいため、今の時点では1.5〜2倍ほどの実を残しておく必要があります。1つひとつの木に取り掛かる前に、どういう実を残したいか、どの程度の摘果の強さにするかを、メンバーに伝えて、厳密に行いました。

 私は緊張度が増していき言うことも厳しくなりがちでしたが、メンバーのみんなは私が言うそれぞれの木の方針に沿って適確に作業をしようとしてくれて、ありがたかったです。

 作業にはお揃いのピンクのポロシャツを着ていきました。木に取り付いて作業をしていると、車で通りかかった方や、地域の年配の桃農家さんが時々、声をかけてくださいました。「可愛いね」と、ななほちゃんの笑顔を見てしきりに言ってくださったり、「脚立から落ちないようにね」「頑張ってね」「木が良い育ちをしている」など暖かい言葉をかけてくださいました。

害虫や害獣対策の桃のネットの修繕も精力的に進めています

 5月21日頃は、多くの品種で満開45日前後で、桃はそろそろ硬核期に入り始めます。硬核期は、桃の種が完成する時期で、とても敏感になっています。人間で言ったら妊娠3か月目の1番不安定な時期のようです。この時期に、摘果や剪定など、刺激を与えたり、急激な養水分の変動があると、種が割れてしまったりして良い実になりません。乾燥しすぎたり、一気に水分が行くことのないように、水やりや草刈りなど、細やかに気配りをして見守りたいところです。

 硬核期を過ぎたら、安定期に入り、再び摘果をすることができます。それまでは袋かけをそっと進めて、硬核期明けに修正摘果をしようと思っています。