【山小屋便り6月号】「稲作の始まり ―― 仲間とバトンを繋ぐ、播種の日 ――」 あけみ

 春の初めの柔らかな日差しから、主張の強さを感じる強い日差しに変わり始め、夏が近づいているのを感じる頃…。

 黒板の前には、それぞれの役割が書かれた紙が張り出されました。『播種機にトレイを入れていく』『種もみの補充』『焼土の補充』『農薬の散布』『トレイの下に土を盛る』『不織布、ミラシートかけ』……。いよいよ、1年の自分たちの主食をつくる、お米づくりが始まります。

 この日にむけて、色々な準備もされてきました。種もみの塩水選という選別や、消毒があり、芽出しもあります。播種の時のトレイに焼土をつめる準備もありました。前日の夜には、各係に分かれて待つまり、事前に準備や段取り、役割を確認しました。

 播種の日は、すこし早めに朝食を食べて、九時に中庭に集合をしました。体育館と中庭をつなぐ入口には、焼土をつめたトレイが何段も高く積み上げられたものが並べられていました。1年の自分たちの主食となる大切なお米の多さを、トレイの数で感じます。

 トレイには、品種別に色の違うシールがつけられています。黄色はうるち米のミルキークイーン、赤はもち米のヒメノモチ、青は紫黒米です。そんなトレイの前には、播種機がセットされています。そして、播種機の前にはテントが立ち、皆が受け渡しのために待機出来るようにも準備されていました。

 なのはなの播種は、1年の中で家族みんなで行うイベントの1つでもあります。大切な自分たちの主食となるお米を種もみから作ることを大切にしています。

 あゆちゃんが水加減やトレイの焼土のつめ具合を最終的にチェックしてくれながら、播種機にトレイをいれてくれます。すこし芽が出ているもみは、角を出したような、ちょんまげをつけたようにすこし籾から芽をだしています。愛らしい姿です。〝トコトコトコトコ〟と、その種もみが等間隔に均等に落とされて、水がかけられ、覆土となる焼土も同じ厚さになるように落とされています。同じテンポのリズムを奏でながら、トレイが運ばれ、種もみや焼土が落とされていく工程はずっとみていても面白く感じました。

■育苗トレイのバトン

 今年の私の役割は、その種もみのトレイを播種機から取り、皆に渡すというものでした。播種機からトレイを渡すとき、皆が丁寧にトレイを運ぼうとしているのを強く感じました。私も、受け渡すときは緊張もしました。何度も何度も、みんなに種もみのまかれたトレイを渡せるのは、何だか何度もみんなにプレゼントを渡しているような、何かとても大切なものを渡しているような気持ちにもなり、嬉しかったです。

 大切に受け継がれたトレイは、その後永禮さんなどに渡されて、グランドにつくられた苗床に送られます。盛男おじいちゃんも見てくださり、トレイの下に土を盛り、空気が入らないようにしたり、薬剤がまかれたりしていきます。

 トレイをバトンのように手渡しながらしていると、皆のお米を皆の手で作っているのを感じ、とても嬉しかったです。

 また、私はこの播種の時のお父さんの話を聞くのも好きな時間でもあります。播種機からトレイを受け取るまでの待機の時間でさえも、お父さんは有意義な時間に変えてしまいます。テントの下で待っている皆に、お米の話や、田んぼの酸化と還元の話、最近のなのはなの肥料の話、野菜の話などをしてくれます。皆からの質問もいくつかありました。

■誰かの笑顔に

 最近、改めて自分たち食べ物となる野菜やお米をつくることの大切さを感じます。主食となるお米を、種もみの段階から自分たちでつくるという肯定を、実際に行いながら吸収して、身に着けていけることがありがたく感じました。

 途中、播種からトレイを出すのを待っているときに、「このお米も中に入れたらいいよ。」とみかちゃんが教えてくれました。それはすこしはみ出してしまった種もみがトレイの外側についていたものでした。みかちゃんが、一粒ひとつぶの種もみ、お米を大切にしているのを感じました。教えてもらってから、その一粒ひとつぶが改めて大切なものなのだと感じたし、そんな風に心や頭を使える人でありたいと思いました。今自分たちが食べているお米も、野菜も、食事も、当たり前のものではないことを改めて感じます。

 今回の播種では、うるち米のミルキークイーンが548枚、もち米が27枚、紫黒米が48枚のトレイを種まきすることができました。

 稲の成長はその後、三段階の成長をしてから、田んぼへと旅立ちます。芽が出る『出芽期』、白かった芽が緑色になるまでの間の『緑化期』、緑化期が終わってからの15日〜17日間の『硬化期』です。稲の苗は二十日苗がいいといわれ、20日前後で田植えされます。

グラウンドには4本の育苗トレーの列ができました

 田んぼでの米づくり、畑での野菜づくりは私たちの日常です。その野菜やお米達を育てる中で、動きやすいシステムや頭の使い方、ノウハウや技術もたくさん学びます。学ぶことはそれだけではありません。畑をしながら、野菜の栄養、野菜のコンディションを考えたり、土の微生物、土のコンディションを考えるとき、それは全て自分の体や生き方にもつながることがほとんどだと感じます。野菜をつくっていると、いろいろな人の助けが必要です。誰かと助け助けられるの関係が必須になってきます。

 畑、田んぼ、野菜、お米と向き合いながら、自分とも向き合うことにつながっているように感じます。なのはなの生き方、私達の生き方のヒントがたくさん隠されているように感じます。そうやって野菜やお米と、畑や田んぼ、自然の中で学べることが、嬉しいです。お米や野菜達と一緒に、色々なことを経験して、感じて、たくさん吸収して、そして良い野菜に、いいお米に、誰かの笑顔に、つなげたいです。

 

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みんなで稲の苗の水遣り、強化を行っています!

播種から約2週間の稲は約10センチに成長しています。

みんなで朝と夕の水遣りや、根の張りを良くする強化を行っています。稲の苗の生長を感じながら、田植えに向かっていけることが嬉しいです!