「歴史をつなぎ、新しいページを描く」 なお

6月2日

〇歴史をつなぎ、新しいページを描く

 長い時間の中でお客様との信頼関係を築き上げ、いままで先生や社長と共に事務所を作り上げてきた先輩がいます。新しい事務所の歴史の1ページを作る、仲間がいます。今日は、人と人が、時間をつなぐ1日でした。

 18歳で事務所に就職し、出産や育児の期間仕事を離れる数年を挟みながら、足掛け約30年勤められた先輩が、この日退職をされました。そして、新しくさやねちゃんが、事務所に入社しました。
 私の勤める事務所は、長い歴史があります。先生は、約半世紀、税理士として仕事をされています。先生は30代後半で税理士として独立されて、事務所を構えています(最初は今とは違う場所に事務所はあったそうです)。先生の事務所と、会計事務所は、二人三脚でここまで歩んできています。今日退職された女性の先輩は、先生が47歳くらいのときから一緒に仕事をされてきました。
 事務所が育ち、お客様が広がり、事務所内での仕事も変化し(申告書や決算書類を全て手書きで作っていた時代のお話も聞かせて頂きました)、今に至ります。先生と事務員という立場の違いはあれど、先生とその先輩事務員の方は、ともに事務所の歴史を作り上げてきたのだなと感じます。

 その先輩が、この日を仕事の区切りとされました。私は、その方から、たくさんのことを学びました。仕事がとても早く、正確で、資料がわかりやすく丁寧。そしてお客様との信頼関係がとても強い。私にとって、目標となる仕事をいつもされていました。税理士の業務(申告書作成や、税務相談、経営アドバイス等)につながる、会社の経理の仕事(日々の記帳や決算)に関しては、事務所に入ってから事務の諸先輩から私は学ばせてもらってきました。経理も、税務も両方する自分の立場だと、どのような決算だと税務がやりやすいのか、つながるがあるのでとてもよくわかります。
 その方のされた決算をみながら申告書を作るのは、とてもスムーズでした。必要な数字、必要な情報が、いつももれなく揃えられていました。優しい仕事だと思いました。仕事の速さにも、驚くばかりでした。一度だけ、同じ会社の起票と入力を手分けしてしたことがあります。そのとき、いかに仕事が速いかをあらためて実感しました。私が1処理する間に、2も3も終わらせている、という感覚です。
 大量の日々の取引を仕訳していくときに、どうしたら手早くできるのか、その方から学びました。一言でいうと、迷って手を止めない、わかるところからどんどん処理していく。ということです。私は、ひとつわからないと、手を止めて、わかるまで調べようとします。しかし、その方は、わからないところは、保留(未処理)にしてどんどんと次に進みます。明らかな数字をしっかりと合わせ、不明点はあとでまとめて問い合わせる、あるいは調べる。潔く、迷いのない仕事ぶりがかっこよく、いつもほれぼれとしていました。そして、資料の書き方を真似したり、決断の仕方を真似したり、と近づくために倣ってきた部分がたくさんあります。

 今日引き継ぎをしたときも、5月の忙しい時期に、いつの間に作られていたのだろうと思う資料がありました。担当する関与先のファイルに、日々の処理や、決算時の基本手順や、注意事項などが書かれていました。資料だけでなく、口頭でも丁寧に伝えてくださいました。その方の担当先はたくさんあるので、頭を追いつかせるのが大変だったのですが、先輩の話は簡潔で、わかりやすかったです。そんな風に次の人に伝えられるのは、いつもポイントをしっかりと押さえて、ミスや抜けのない仕事をするために自分なりのマニュアルや手順を確立していたからです。また、先輩はお客様からとても信頼が厚く、なにかあったらYさんに聞こう、と頼りにされているのを感じました。電話や、対面でのお客様からの問い合わせに、迷うことなく答える知識の豊富さや、親身になって寄り添う情や、時には厳しく言うべきことは言う姿に、信頼関係を築くために必要なことを教えてもらいました。

 自分に足りないところをたくさん持っているその先輩は、とても素敵で、憧れの存在でした。今回、その方から私は数件の関与先と、登記関係の仕事を引き継ぎました。登記は知識がほとんどなく、一から学ぶことです。もちろん、その方が残してくださった資料があります。
その資料や、PCに残してくださっている様々なフォーマットは財産です。しっかりと覚えていきたいです。引き継ぎも無事終わり、午後に花束とお餞別を渡し、みんなでお疲れさまでしたとお礼を伝えました。
 まさか最後にこんなにしていただけるなんて、と涙ぐまれていました。その方をとても慕っておられた事務の女性の方の目にも、涙がありました。たくさんの大変な場面を一緒に乗り越え、楽しい時間も過ごしてきた時間の重みがありました。私も、その方の長い歴史の中のたった2年ではありますが、ともに過ごし、学ばせて頂いたことをとても幸せに思いました。さみしさもあります。最後は、事務所の玄関まで見送り、車で出発する先輩に、手を振りました。本当に、ありがとうございました。

 そして、この日からさやねちゃんが、新しく事務所の一員になります。さやねちゃんが、新しい事務所の歴史の1ページを作っていきます。さやねちゃんとみなさんと一緒に、作っていきます。さやねちゃんがいてくれると、新しい空気がそこにあります。
 さやねちゃんは、朝の掃除で床を丁寧に雑巾がけしてくれました。いままで毎日そんなにきれいにしたことがなかったです。さやねちゃんは、誰かが仕事について説明するとき、手帳を片手に一つ一つメモを必ずしていました。笑顔を絶やさず、謙虚に、そっとみなさんの中に溶け込み、仕事をしていました。わからないことは、必ず確認をしていました。
 さやねちゃんは、背筋を伸ばし、美しいたたずまいで机に向かっていました。その姿と、真面目に取り組む気持ちだけで、私はとても心強く、自分自身が仕事に向かう姿勢も良い方向へ引っ張ってもらうのを感じました。なのはなの気持ちで仕事をする、ということを、貫く強い気持ちを持っていこうと思いました。

 さやねちゃんと一緒に、今日はお弁当を食べました。いつも自分のデスクで食べているのですが、休憩室で食べました。嬉しくて、なんだか一人でたくさんしゃべってしましました。これからは、仕事の状況や、それぞれ昼休みにしたいことがあると思うので、毎日一緒に食べることはないかと思うのですが、時間が合えば、さやねちゃんと一緒にお昼を食べる時間も持てるのかなと思い、それもまた嬉しくなりました。

 事務所の新しい歴史が始まります。先輩が作ってくださった歴史をつなぎ、新しい歴史を作っていきます。私も、一層責任感を持ち、みなさんと良い仕事をするために自分にできることをしっかりと果たしていきます。新しい仕事に緊張もあるけれど、挑戦することを楽しむ気持ちを忘れず、そして地に足をつけて、着実にひとつひとつ身に着けていきます。