「美しく植えること」 るりこ

5月28日(木) るりこ

○美しく植えること

 この時期がやって来ました。家族総出の手植え。なのはなも田植えが始まりました。お父さん、お母さん、永禮さん、みんなが集う1年に1度のビッグイベントは、最適な気候に恵まれました。。

 泥んこ運動会の会場ともなった、池下田んぼにミルキークイーンを手植えしました。
 みんなで横一列になると、隣の人がとても近くて、1人2条分くらいの幅でした。
 今回も永禮さんとのりよちゃんが水糸を張ってくれて、2人の、「オーケーです!」という声を合図に、お母さんが、「スタート!……5、4、3、2、1……」とタイムコールをしてくださいました。初めは感覚を思い出して、身体が動いてきたら、お母さんの合図に身を任せるように、みんなの大きな流れにのりました。
 手植えだけに集中してしまうと、隣の人を感じたり、隣の人の苗が減ってきていることに気がつかないということがありました。
 そんなときでも、ちさとちゃんは周りを感じながら隣の慣れていない子のカバーをしていました。ちさとちゃんの視野の広さを感じるたび、わたしも誰かをカバーできるくらいに心も身体も使わなければと思いました。

 まえちゃん、みかちゃんが中心となって芽出しをして、みんなで播種をして育ててきた苗。顔に近づけてじっと見て見たら、草丈は小さいのに真っ直ぐにピンと立っていて、立派に見えました。稲の苗の緑が濃くて、本当にきれいだと思いました。

*光田んぼ

 池下田んぼは時間通りに終わり、続いてヒカリ田んぼ上にモチ米を手植えしました。崖崩れハウス前畑の畦にお母さんが立ち、わたしたちはお母さんに向かう形でみんなで一列に進んでいきました。
 光田んぼは面積があるので、今度は1人6~8条分の幅に広がりました。わたしの隣にはちせちゃんがいました。ちせちゃんはまだ慣れていないから、わたしがちせちゃんの分までカバーしたい、と思いました。

 池下田んぼで植えた稲は、横は真っ直ぐだけど、縦の列が美しくないと、お父さんとお母さんに言われました。そのため、光田んぼは横縦も真っ直ぐきれいな田んぼにしようということで、水糸で田んぼの垂直を出し、それに横に張る糸がぴったりと重なるように植えていきました。
 これまでは、水糸の赤ポッチの真下に植えたらそれで良いとなっていたけれど、今回はそれだけではいけません。自分の勘を働かせて、縦も真っ直ぐになるように、そして隣の人を感じて、横も真っ直ぐになるように。それが難しくて、でもただやっているというだけじゃなく、頭を使う面白さもありました。

 お母さんが何度も、「真っ直ぐにね」とおっしゃいました。わたしは自分が両足で挟む1条を支点にして、そこから左右2~3条を決めました。自分が決めた1条だけでも何が何でも絶対に真っ直ぐにしたい、と祈るような気持ちでした。
 そして、隣の人を信じて、みんなを信じました。(真っ直ぐに)と祈りました。

 手植え後にお母さんが話してくださいました。
「手植えも、気持ちを整理させる練習」
 お母さんがそう言いました。迷いがあれば、列も曲がる。どんな仕事も、今の自分の気持ちが表われるよ。
 お母さんのお話を聞いて、わたしは後半から列が曲がっていってしまったと思いました。それは気持ちの持続性が足りなかったと思います。粘り、あっさりと諦めない気持ちが、今のわたしに必要なところで、それを今回の手植えでも感じました。でもこのことに気がつけたことをプラスに捉えて、これからの作業や日々のなかで鍛えていきたいです。

 話しは手植えに戻って。
 半分を過ぎたあたりで、まりこちゃんが、わたしとまあちゃんの間に入ってくれました。まりこちゃんは手つきが手早くて、スッスッと植えていきました。まりこちゃんの隣にいたら、まりこちゃんに引っ張られるように、わたしも自然と手のスピードが上がっていくのを感じました。
 さらにまりこちゃんは、わたしの手持ちの苗が減ってくると、「はいっ」と自分の分を分けて渡してくれることがありました。そういう気配りを自然にできるまりこちゃんが優しいと思いました。

 一歩一歩とお母さんに前進していき、お母さんに近づくごとに、お母さんの笑顔が近くなりました。わたしは毎年、この光景が好きだなと思います。
 今日はそこまで気温も高くなくて、田んぼの水の冷たさが心地よく思いました。わたしはまだまだしたいと思いました。この日の手植えはここまでとなり、紫黒米は午後にお父さんが機械植えをしてくださいました。

 今回の手植えは楽しかったという感想だけじゃなくて、初めて感じる難しさ、そのなかで感じた自分の課題や気づきもありました。
 美意識。今回の手植えだけじゃなく、畑作業、日々の当番、振る舞い、心持ちで持たなきゃいけない気持ちです。
 今日の手植えを通して、毎日を何気なく過ごすのでなく、もっともっと高い意識で、自分の気持ちから真っ直ぐにしていきたいと思いました。

○桃の袋がけ

 午後からは気持ちを切り替えて、あんなちゃんたちと桃の袋がけをしました。
 今日は石生の桃畑に行き、『なつごころ』を終え、それから『加納岩白桃』を進めました。
 『加納岩白桃』は、これまで使ったオレンジ袋とは違い、二重になった袋をかけました。内側は薄い赤色の袋で、外側が茶色い紙袋のようなもので覆われています。あんなちゃんがこれは遮光度が高い、良い袋だと教えてくれました。『加納岩白桃』は外皮が剥けやすいために、この二重袋を用いるのだそうです。二重袋は紙質が柔らかいので、一見留めやすくもありますが、その分だけ袋が繊細なので破かないようにも気をつけました。
 緑の葉に覆われた木にオレンジ色の袋が連なる景色も好きだけれど、赤が入ると、また一際目立つなと思いました。

 高い位置で袋を掛けていると、時折、風が吹くことがあります。そんなとき、風に押されて木々も揺れ、そしてぐっと枝が下がることがあります。
 わたしはそのとき、桃の木がわざと枝を下ろしてくれているように感じるときがあります。桃、そしてあんなちゃんの優しさを思い返しました。