「きっと未来に」 なお

5月4日

○きっと未来に

 私、こんな風に結婚するのだろうな。
 まるで未来の出来事を先取りして体験しているような、なんとも不思議でなんとも幸せな気持ちで過ごした半日でした。
 
 レクレーションウィーク、1日目は新聞紙ファッションショー。
 よもや私が、まさか私が、モデルになるとは、という思いです。今回のテーマがウェディングドレス、ということで、チームのみんなが一番現実味のある(そうでありたい、と願っています)、私をモデルにすることを考えてくれました。
 本番までチームみんなでの集まりに参加できなかったのですが、みんながイメージを膨らませてくれていました。カラーは青。かにちゃんやまみちゃんが、私が好きなカラーというお花のシルエットをドレスのラインに生かそうと話してくれました。
 まみちゃんがいくつかドレスの画像を集めてくれていました。前日に見せてもらい、私はその中で好きなデザインを選びました。片方の肩に羽のような飾りが施され、スカートの部分は抑えめに広がった大人っぽい濃い青のドレスです。
 なるちゃんが、肩を全部出すのじゃなくて、少し飾りやあった方がいいねと言ってくれました。私も、首肩回りの露出が多いよりも、なにか飾りがあるほうが自分に合うのではないかなと思っていたので、同じようにイメージしてくれていたことが嬉しかったです。

 そして当日、かにちゃんがまず直径3センチほどの丸を新聞紙で作り、それをうろこのように1枚1枚重ねて張り合わせて上半身の部分を作る方法を考えてくれました。
 紙っぽくない、ラインが綺麗に見えるように身体にフィットした感じを出したいとかにちゃんは言いました。この上半身がチームのアピールポイントのひとつでした。
 チームのメンバーは、職人ぞろいでした。かにちゃん、まみちゃん、なるちゃん、ひろこちゃん、ゆずちゃん。かにちゃんが指揮を執り、みんながドレスを形作るパーツを作っていきました。私も両手は空いています。糊を張ってかにちゃんに渡したり、チラシを蛇腹折りにしたり、と制作の一部に加わりました。
 新聞紙の円を私の身体に沿って張り付けていくかにちゃん、傍らにはゆずちゃん。
「のり」「はい」
 かにちゃんの手元に入るゆずちゃんは、スティックのりを手渡します。ふふふ、まるでオペのワンシーンのようです。しかし、私は大きな声で笑ってはいけません。なぜなら、身体にぴたりとそう新聞紙の布をまとっているからです。
 ぺりっという音が聞こえ、肩ひもが千切れること1回。ぺりっと、胸周りがはじけること1回。
 平常心、平常呼吸、それがモデルの務めです。それほどまでに、身体に沿ったラインが出せているドレスでした。まだ上半身の半分くらいしか進んでいない段階で、私は、これは本当に素敵なドレスになる、と予感して、嬉しくて仕方ありませんでした。それを言葉にすると、かにちゃんは「まだおへそまでも到達していないよ」と楽しそうに笑いました。新聞紙の切り抜いた円の1枚1枚、みんなの真剣な表情、こうしたらよいのではないか、というアイデア、そういったものからみんなの気持ちが伝わってきてから、それが私にとっての最高の作品の予感になったのだと思います。できあがった作品そのものはもちろんのこと、みんなの気持ちが、嬉しくて、気持ちが満たされていくのを感じたのです。

 ウェストからV字のラインにカットされた上半身の作り、スカート部分は少し抑えを聞かせた広がりになるように、帯状にした新聞紙を斜めに何本もつけていきました。上品なカラーの花のシルエットがモチーフです。スカートの後ろ側は、ドレスらしい豪華さがでるようにあ、長めに裾を作り、ヒップの上あたりにもボリュームを持たせました。
 ああ! なんということか、非情にも時間は私たちの作品の完成をせかすように流れていきます。ひろこちゃんが黙々と切り抜いてくれていた、切り絵のお花が、満を持して登場です。かにちゃんが嬉しそうに、その花を胸元や、ウェストラインにちりばめます。私も、身体をくるくると動かしつつ、メイクをします。型の羽根の飾りは、まみちゃんとゆずちゃんが作ってくれました。時間はない、が美しく形作りたい。残り5分、気づけば、私の身体にチームメンバー5人が取り付き(F1のタイヤ交換のごとく)、最後の仕上げをしました。髪型!ひろこちゃんが、器用に手早くお団子にしてくれて、花の飾りもつけてくれました。
 私はなんて幸せな花嫁なんだろうな、とあわただしい中でも心は穏やかでした。ドレスを作りながら、何度も私は言いました。
「私、本番もみんなに作ってもらいたい」「結婚式、絶対なのはなで挙げたいな」
「本当にこういうドレスが着たいな」
 まるで、必ず訪れる未来を、いま私は経験させてもらっているような感覚がありました。さあ、ドレスの完成です。

 実行委員さん、ごめんなさい。5分ほど遅れて、会場に到着しました。他のチームの花嫁さんも、集まっていて、とても華やかな会場になっていました。1人ひとり、みんな似合っていてかわいかったです。ブーケや、ヴェールを作っているチームもありました。
 お仕事組の仲間、よしえちゃんも、今回モデルです。よしえちゃんのイメージにぴったりの淡い色合いのお花がドレスの飾りや、首元のチョーカーに咲いていました。きれいで、嬉しそうな笑顔のよしえちゃんを見て、私は花嫁さんをお祝いする側の気持ちになりました。お互いにお顔を見合わせて、同じようにこのドレスの制作時間を幸せに感じたことがわかりました。なのはなのレクレーションは、思い切り遊ぶ中に、仲間への気持ちを表現できたり、その気持ちを受け取れることが本当に大切と感じます。
 
 ドレスの発表で、ランウェイを歩きました。照明はないのだけれど、舞台裏から歩きだすモデルさんを見ていると、スポットライトが注ぐステージに出ていくように見えました。講評の時にお父さんが、よしえちゃんや私は、結婚したいという気持ちがあふれ出ていたと話していて、思わず笑ってしまったのだけれど、確かに、結婚したいという気持ちは強くあります。
 なのはなでお父さんお母さんと出会い、卒業生たちが結婚して家庭を築いていく姿を見て、そしてなにより自分自身が生きることや未来に希望を持てるようになり、結婚をしたいという気持ちになりました。それは自分にとって大きな変化であり、そういう気持ちになれたことは大げさでなく奇跡のように感じます。だから、誰かと一緒に人生を作っていきたい、という希望、願いは、強く持っていてもいいのかなと思いました。
 よしえちゃんの姿を見ると、私も涙が出そうになりました。今回モデルをさせてもらい、たっぷりと嬉しい気持ちを味わった半日でした。脱ぐときに名残惜しい気持ちがあったけれど、気持ちはずっと残ります。ありがとうございます。