「誰よりも桃のことを思い」 るりこ

4月25日

○桃の霜対策
 昨晩は、あんなちゃん、みかちゃん、よしえちゃん、あやかちゃん、やよいちゃんと桃と梅の霜対策に行ってきました。

 22時の消灯は音楽室に寝泊まりしました。
 しばらく浅い眠りが続きました。起きたり眠ったりを繰り返していたら、夢を見ました。
 あゆちゃんと何人かの子が出てきて、あゆちゃんが、「みんなに連絡があります。今晩は思ったよりも気温が下がらなかったため、霜対策はなくなりました」と言いました。
 「えぇー!」と言っているところで、ガサゴソと物音がして飛び起きました。出動の時間でした。
 まだかまだかと思いながら待っていたわたしには、もう6時くらいなんじゃないかと思うほど、時間が長く経っていたような錯覚がしました。
 
 身支度を調えて、鉄筋校舎の入り口から外へ出ました。
 真っ先に飛び込んできたのは、夜空に輝く満天の星空でした。
 本当に本当に、すごい数でした。
 なのはなで見る星空はこれまでにもあったけれど、そのどれよりも、山小屋で見るよりも、本当にたくさんの星が瞬いていました。
 星ってこんなにあったんだと驚きました。
 空の4割くらいを占めるくらいに密度濃く、どこまでも星空が広がっていました。
 やよいちゃんが、「きれいだね」と呟きました。
 歩いて、梅林へ向かいました。
 歩きながらも、何度も空を見上げました。星たちがわたしたちに付いてきているような気がしました。

 梅林であんなちゃんと落ち合い、梅林の梅の木から点火をしていきました。
 星はたくさん出ているけれど、月は見えなくて、辺りは真っ暗でした。
 足下もおぼつかないくらいだったけど、着火すると、炎の灯りで歩きやすくなりました。
 梅林は米ぬかとモミガラを主としたドラム缶を12缶、設置しました。
 上にのった鉋屑に火を付けると、すぐに燃え上がりました。
 その足のまま、次は古畑へ行きました。古畑は木っ端のドラム缶です。
 火が上がるまでには少し時間がかかりましたが、めらめらともパキパキとも言えない音を立てながら、火は燃え続けました。良い音だと、わたしは感じました。

 車に乗り換えて、開墾畑へと向かうことになりました。
 車に乗ろうとすると、フロントガラスが凍っていて、出発するまでに手こずりました。
 時計の針は2時10分。こんな時間からも凍り付いているということは、今晩の冷え込みは相当厳しいのだなと思いました。
 開墾畑に着いた頃には、すでにあんなちゃんが全てのドラム缶に点火をしてくれていました。
 続いて、池上桃畑、奧桃畑、石生桃畑、夕の子畑の順で回りました。
 道中も、わたしは時折、窓から星空を見ていました。
 電灯や少しでも明るみがある場所では、急に星の数が少なくなりました。
 そのとき思いました。本当は都会にも、東京や大阪の空にも星はたくさん瞬いているけれど、人間が人工的な明るさを作って、その美しさを見えなくしてしまっているんだということを思いました。
 そのことがとても勿体ないと思いました。

 7枚の畑の点火を終えると、続いて2巡目に入りました。
 2巡目では、先ほど点火した火が消えていないかを見て回り、もし火が消えていれば油や木っ端を足し、火が小さくなっていたらドラム缶の中をよくかき回して、空気を入れてあげます。
 米ぬかのドラム缶の大半は、火が小さくなっていました。
 よくかき混ぜてやると、すぐにまた火は燃え上がりました。
 それに対して、木っ端のドラム缶はまだ勢いよく、ゴウゴウと燃えていました。いいんじゃないかと思いました。
 石生田んぼからも、夕の古畑のドラム缶の火が燃えているのが点々と見えるほどでした。
 開墾畑では、地域の方も霜対策に来られていて、軽トラが何台か行き来していました。
 1人の男性の方が、あんなちゃんに、「頑張ろうな」と声を掛けられていました。
 桃のために、どの農家さんも朝早くから動いていることを思うと、わたしも頑張らなければという思いに引き立たせられました。

 夜の石生は車1つ通っていませんでした。家の灯りもついていません。
 この時間に起きているのは、自分たちだけなんじゃないかと思いました。不思議な気持ちでした。

 4時35分。再び古吉野に戻ってきて、そのまま3巡目に入りました。
 東の空が少し明るくなってきていました。
 那岐山の空が、赤、黄、オレンジ、青とグラデーションがかっていて、きれいでした。
 ついさっきまでは真っ暗で足下が見えなかったのに、そのときにはもう懐中電灯も要らないくらいの明るさがありました。
 あんなちゃんが、今の時刻(4時半頃)から日が昇る6時くらいまでが1番冷え込むと教えてくれました。気持ちを入れ直して、3巡目に入りました。
 3巡目になると、火の勢いはかなり弱まっていました。
 所々では火が消えてしまっているドラム缶もありました。油を入れて、火を起こしました。
 木っ端のドラム缶は、2巡目の勢いをなくして、大半は消えかけていました。
 木っ端が尽きたことが原因でした。木っ端を入れ足し、油をかけて、火を付けました。
 初めの勢いは良いけれど、持続性がないのが難点だと感じました。
 
 
 開墾畑に着いて、車から降りました。
 あんなちゃんが運転する軽トラに駆けようとしたとき、流れ星がすーっと落ちました。
 (あっ!!)と思いました。一瞬だったけれど、星を追うように、3本線が続くのが見えました。
 慌てて辺りを見渡したけれど、他に見えたのは2つの星だけでした。
 流れ星を見るのは、人生で3度目でした。思いもかけないサプライズでした。
 あとからわかったのですが、その流れ星はみかちゃんも見ていたそうでした。

 肌でも感じるように、空気が冷たく張りつめていました。
 足下の地面には霜が降りていました。あんなちゃんが、「昨日よりも霜がキツかった」と言っていたそうです。
 5時になると、一気にして辺りが明るくなってきました。
 3巡目、最終の夕の子畑にいたころには、もう7時なんじゃないかと思ってしまうくらい、明るかったです。

 5時35分ごろ、再び古吉野に戻ってきました。
 あんなちゃんが、「みんな、来て」と言いました。
 梅林の入り口から振り向くと、東の空に朝日が昇るのが見えました。
 真っ赤で眩しくて、すぐに目をつぶってしまいました。とてもきれいでした。しばらく、みんなと見ていました。
 最終で梅林へ行きました。あんなちゃんが、「明るくなったね」と言いました。
 さっきの暗さが嘘のように、時間が一瞬にして過ぎ去ったような気持ちでした。
 そのあとは池上桃畑へ行き、6時ごろ、解散となりました。
 あっという間の4時間だったと思いました。足先の冷たさは厳しかったけれど、体感としては身体が火照って暑いと感じました。

 あんなちゃん、みかちゃん、よしえちゃん、あやかちゃん、やよいちゃんと一緒に行けたことが嬉しかったです。
 みかちゃんはあんなちゃんを立てながらも、自分の役割を確実にこなしていました。
 誰よりも視野広く、動いていました。みかちゃんの運転は安心しました。みかちゃんは慎重で、確実でした。
 よしえちゃんは変わらない優しさで動いていました。
 梅林から戻るとき、あやかちゃんが出遅れたかけたときがありました。
 そのときよしえちゃんはあやかちゃんが来るまで待ち、懐中電灯で照らして待ってあげていました。
 よしえちゃんの姿を見て、利他心を感じました。
 自分の都合だけじゃなくて、周りの人に一番優しい選択、動きが自然にできる、よしえちゃんのようになりたいと思いました。
 あやかちゃんは常に冷静な判断を下していました。
 やよいちゃんは恐れを捨てて、着火という役割を勇気をもってこなしていました。
 そしてあんなちゃんは二夜連続で体力的にも精神的にも厳しかったはずなのに、誰よりも桃のことを思い、神経を張り巡らせて、その時その場でベストな判断を下し、指示を出し続けてくれました。
 桃を見るあんなちゃんの姿が格好良かったです。
 わたしはそのあんなちゃんの力に少しでもなれたらと思いました。
 あんなちゃんは最後まで粘り強く向かっていて、笑顔でいてくれました。

 4時間という短い時間のなかだったけれど、たくさんのことを感じて、たくさんのきれいな景色を見ることができました。
 朝方だからこそ感じられる、貴重な体験でした。
 今日のことは絶対に忘れないだろうと思います。
 書きたいことがありすぎて、まとめられなかったけれど、行かせていただけたことが、とても嬉しかったです。

○レクリエーション
 レクリエーションの準備が進んでいて、わたしは室内遊びに入らせていただくことになりました。
 あゆちゃん、まえちゃん、なおとさん、あやかちゃん、さきちゃんと話し合った時間だけでもわくわくしました。

 おやすみなさい。