【山小屋便り4月号】「春の桃畑で ―― 桃の摘蕾を通して ――」 あんな

 気温20度近くになる日も増えて、とても早くて暖かい春です。3月半ばになり、開花の早い白皇やおかやま夢白桃は、蕾の先に濃いピンク色が見え始めました。

 桃の手入れは、摘蕾の真っ盛りです。ピンク色のジャンパーを着て、8人前後で桃畑に出向き、脚立に登って木に取り付き、要らない花芽を落していきます。

(なのはなファミリーで桃を作っているのだから、できるだけたくさんの人が桃作業に関われたらいいな)

 と以前から思っていました。そこで一巡目の摘蕾はたくさんの人と進めることにしました。初めて桃の作業をする、という人も結構いるのですが、みんな笑顔で、嬉しそう、楽しそうに見えます。桃のことや、桃作業を知ってもらえることが嬉しいし、多くの人と体験を共有できることが心強いです。

■目的とプラン

 蕾を落す目的は、枝に蓄えられている養分を温存することや、袋かけまで何回かにわけて間引いていくことで労力を分散させるためです。桃は、前年の収穫後から光合成をして蓄えた養分を枝に貯蔵していますが、その貯蔵養分を使って花を咲かせたり葉を出すため、花が多すぎると、使うべきところに養分が使えなくて、生育のスタートダッシュが遅れてしまうのです。

  花芽はぷっくりとやや丸みを帯びた形をしていて、葉芽は細長い形をしています。どちらも全体が灰色の産毛に覆われて灰色をしていましたが、花芽は日に日に丸さを増していき、色も白っぽくなってきました。蕾がちょうど真ん丸な形のときが、1番、落しやすいと感じます。花芽は、指の先で、枝の付け根方向に少し力を入れると、ポロっと落ちます。力を入れる方向や、傾斜地での脚立の立て方など、自分がやりやすいと思うことを、みんなに伝えました。

 摘蕾は基本的に二巡する予定です。一巡目は枝の上側と先端の花芽を落していきます。桃の実はすべて枝の下側につけるので、枝の上側の花芽はいりません。また、ある程度の長さがある枝の場合、先端に実をつけると風で煽られたり揺れて傷がつきやすいので、先端の花芽は落してしまいます。時間も限られているため、一巡目はスピード重視で、迷いなく落していくのが理想です。

「慣れてきたら、さっと枝の上側を撫でて、葉芽を残して花芽だけ落すというやり方を目指してほしい」

 葉芽のほうが枝にしっかりついているので、力加減をうまくすると、素早く花芽だけ落すことができるのです。実演とともにみんなに伝えています。日々、全体のスピード感が増していると思います。

 ある日、池上桃畑で作業をしているとき、不意になおとさんが、

「蕾を食べてみた。桃の風味がする」

 と言い出しました。笑い出す人や驚く人がいましたが、私も桃リーダーとして、蕾の味を知っておかなければいけない気がして、先のほうが薄っすらピンクがかってきたおかやま夢白桃の蕾を一粒、食べてみました。非常に苦かったです。しかし確かに苦さの奥に爽やかな青い桃の風味がして、何となく愛おしく感じました。みんなには、「すごく苦いからみんなはやめといたほうがいいよ」と言っておきました。

 畑を移動するときには、軽トラに8台の脚立を積み、ロープで括って移動します。3段〜9段までの脚立を、一度に載せるコツは、上下と向きを揃えて、小さい脚立から積んでいくことです。桃畑は全部で8箇所あり、「この桃畑に来たのは初めて」という人もいるので、私も新鮮な気持ちになります。山の桃畑からは、石生田んぼが下のほうに見渡せます。すっきりと晴れている日は特に、とても開放的で奇麗な景色です。

 石生桃畑では、周り中が田んぼで、空も広くて高くて、とても見晴らしがよく、どこか上空でヒバリが鳴いていて、穏やかな空気があります。

 私は見慣れてしまっていても、「わぁー! 綺麗」という声を聞くと、改めて素敵な場所で作業をしていることに気がつきます。

■大人数の摘蕾

 開墾26アール、開墾17アールの桃畑は4年生と3年生、合計41本の幼木が植わっています。そのう36本を、20人以上という史上最高の人数で摘蕾に取りかかりました。3年生の桃の木は28本ありましたが、高さ2〜2.5メートルほどのため脚立は部分的に使う程度でよく、大人数で取りかかることができました。1本の木を2〜3人で仕上げます。ピンクジャンパーを着た人が畑中の木に分散して取り付いている光景は、これまでにない面白さでした。
 私は見回りとチェックに入らせてもらいましたが、みんなが摘蕾のやり方を習得して慣れていくのを感じて嬉しかったです。半日で2つの畑を終えることができました。

■精鋭メンバーでの摘蕾

 3月18日、私は摘蕾のタイムリミットを感じました。葉芽が発芽しはじめていて、品種によっては花芽は縦長に膨らんで摘みにくくなりました。ここから摘蕾を終えるまでの3日間は精鋭メンバーでフルメニューの時間から摘蕾に特化して進めさせてもらいました。

 精鋭メンバーは、はるかちゃん、ちさちゃん、れいこちゃん、まきちゃん、おかちゃん、まちちゃん、つきちゃん、るりこちゃん、私という顔ぶれで、みんな喜んで作業に入ってくれました。葉芽が発芽していなければ、枝の上側を撫でるだけで落とす方法が速くて有効です。私は精鋭メンバーには私と同レベルの的確さと速さを強要しましたが、みんなはそれに応えてくれて、日に日に作業の速さが上がって行きました。

 そしてわかったのが、「摘蕾は速くやればやるほど楽しい」ということでした。精鋭メンバーでの摘蕾作業は常に高い集中した空気と緊張感があり、現場は靜かですが、1人ひとりがその摘蕾の楽しさの神髄を共有していたと思います。

 1人ひとりの手元を信頼できて、安心して私も摘蕾に集中することができ、これまでにない速さで作業が進んでいきました。高度な空気感の中では、何時間続けて作業していても気が散漫になることがありませんでした。

 とても良い作業になったと思います。一巡目を終え、二巡目は必要なところだけを手分けして周り、無事にすべての摘蕾を済ませることができて一安心しました。

 これから人工授粉用の花を摘む必要があったり、病害虫や晩霜のリスクがあるため、今の段階ではややゆとりを持って蕾を残しています。

 年々、気象が変わっていて、季節が早く推移しているので、時期的に遅れないように、今後もスピーディで確かな作業をみんなと進めていきたいです。 

新たに植え付ける桃の植え穴準備も進めました