【山小屋便り4月号】「願いを込めて ―― 5枚の畑のジャガイモの植え付け ――」 けいたろう

 仲春。静かな春の息吹をそこかしこで感じられるようになってきており、日中は暖かく過ごせる日も増えてきた。そろそろあの時期が近づいてくる。ジャガイモの植え付けである。男爵、アンデス、メークイーン、デストロイヤーなど種類は様々だ。ほとんどが自家採取したもので以前芋掘りで掘りあげた彼らの一部は再び、土の中に戻ることになった。

 3月7日。崖くずれハウス前上畑で植え付けが始まろうとしていた。前回の反省を踏まえ、お父さんがデモンストレーションをした。オリジナルのカラフルな棒ものさしで30センチを測る。軽く手スコで穴をあける。深植えは厳禁だ。目が出るまでに力尽きてしまう恐れがあるからだ。ジャガイモの大きさと相談して掘る深さを瞬時に判断しなければならない。そして穴を掘ったらイモを置く。ここで新アイテムが登場する。ダストだ。お父さんがダストをイモの上にかぶせてはどうかと提案してくださった。落ち葉や細かい土、木くずといったフカフカの布団をかけてやるのだ。その上に薄く土をかけて完了。これで芽が格段に出やすくなるだろう。

ジャガイモの植え付けチームを組んで、高い発芽率を目指しました

 時間との戦いだった。午後の作業時間でどこまで進められるか、いや2枚の畑を終わらせなければいけない。スピード勝負であった。この日は、1人1畝担当で完結したら次へという具合で進められた。穴を畝の端から端へ、イモを設置してダストを敷く。なんだか今回はうまく芽が出そうだ。このフカフカのダストで芽が出たあとのスタートダッシュを軽やかに決めることができるだろう。多少土が粘土質でも力強く天に向かって伸びて、根もしっかりと張ってくれると信じている。

 1枚目の畑はなんとか完了した。しかし時計は4時を回っていた。あと1時間で第一鉄塔上畑にジャガイモを植え付け完了させなければならないのである。

■チャンスを活かして

 すでに先発隊が作業を開始していた。合流し穴にジャガイモを設置していく。我々をオレンジ色に染めるものがいる。ひやりと頬をなでるものがいる。ああ、もう少し待ってくれ。傾かないでくれ。無言の急かしがそこにはあった。穴の掘り方を工夫したりしてスピードアップを図った。みんなの奮闘もあって午後5時までに終わらせることができた。

 この日、地面に植わったジャガイモの数は、がけ崩れハウス前下畑で約1500個、第一鉄塔上畑で約1100個。自分たちでも驚くほどの数であった。

 2、3日後、またジャガイモを植え付けるチャンスがやってきた。次は下町川下畑だ。この畑には少し前まで冬大根やホウレンソウ、長ネギが植わっており真冬の食卓を鮮やかに彩ってきた。トラクターをかけたあとのこの畑の光景を見てもありありとあの時の野菜たちが眼前に浮かんでくる。

 この日はメークインとデストロイヤー合わせて1800個。育ってくると土寄せが必要なのでその土の量を考慮し、なるべく畝の真ん中に穴を掘るように努力した。これが難しい。いつの間にか自分のほうに穴が寄ってきているのである。ふと左を見て自分が掘った穴を見ると焦った。真ん中だ、真ん中だ。心で言いながら掘った。みんななかなか早い。いつの間にか2倍の距離の差がついていた。スコップを逆手に持って掘ると力も入って素早く浅い穴をつくることができた。この日はなんとかミッションコンプリート。

 最終日は下町川上畑と保育園前畑。この2つの畑は距離があり加えて時間的にも厳しいことが予想された。やり方を変える必要に迫られることとなった。長い棒を使っていちいち30センチ測るよりも手に持ったスコップで30センチはこのくらいと覚えておくこと、そしてジャガイモは穴を畝の端まで、スタートからゴールまで掘ったあとに置いていくのではなく、その場でイモの大きさに合わせた深さを作ってすぐに置くという方針に変更された。このやり方で全員のスピードが格段に上がっていった。また、場所によってドロドロではぬかるんでいるポイントがあったので、先にダストを敷いてからイモを置いてさらにダストでサンドイッチにする方法をとった。

 最後の場所は保育園前畑。ここで私は都合で作業から抜けたりしたが、私が畑に戻ってきたときは畝の真ん中に米ぬかの白いラインがまっすぐに引かれていたのが目に飛び込んだ。畝の長さがこれまでで1番距離があるから、ずれないように引いたもんだと考えた。ここにはメークイーンがずらりと植えられすでにダストがかぶさっている後で仕上げの段階と思われた。5時は過ぎてしまったようだが、夕食前には終えられたようで安心した。

 このジャガイモの植え付けの日々によって地面に植わったイモの数は驚くことなかれ、6900個にもなる。こんなにあったとは。1回当たり約2300百個をみんなで終えたことになる。

 2、3週間後に芽がちゃんと出ますように、そして遅霜に当たりませんように。願いを込めて畑を去った。