「目に赤い闘志が宿る」 けいたろう

3月31日(火)

・タイムトライアル
 津山加茂郷フルマラソンが中止になった。にわかには信じられなかったが、この情勢だ、仕方がないのだろうと納得することにした。ただ、フルマラソンに出るための努力が無駄になったわけではない。なのはなファミリーでは、駅伝方式のマラソンを行うことになったのだった。いくつかのグループごとに分けて決められた区画を走るというものである。グループごとに速さにばらつきがでないように調節はしますよ、ということだった。

 そのためにはタイムトライアルを実施することが必要である。普段はみんなで18分前後かけて走っている2.5キロの梅の木コースを全力で走りきるというもので、参加者に緊張が走った。大きく4グループごとに分け、3分ごとにスタートするという。玄関前に引かれた白線に走者が横並びになり一斉に駆け出す。むろん私も身体が緊張するのを感じ些か手が震えた。私は最初の走者のグループだった。空は曇天。しかし右や左に並ぶ皆の顔は鋭く、目には赤い闘志を宿していた。
 
 笛の合図と同時に勢いよく白線を蹴り脚を前に出す。自分の隣からひゅっと疾風のように通り抜ける者がいた。れいこさん、りなちゃん、ななほちゃんだ。最初の坂を下りきる前に三人は見えなくなろうとする程の速度。「こりゃいかん…」と自然に口から言葉が出てしまった。その声にもならないようなつぶやきはすぐに自分の走る呼吸と共にかき消されていった。
 
 いつものコースがまた違っているように思えた。掛け声もなく、列もなく、あるのは両脇にある田畑である。10メートル以内にななほちゃんを捉えることはできたが、後ろから誰かが追い上げてくるのを感じた。最初の坂道を登るために左折するあたりで抜かされた。あんなさんだ。「やはりなぁ」力強いオーラというものはこういうときにだって感じさせられるのだ。あんなさんはななほちゃんを抜いて坂を登っていった。ここで少し焦りが生じた。思わず後ろを振り向いてしまった。まだ後続のみんなとは距離はあるようだ。だが、眼前のななほちゃんとの距離をこれ以上あけるわけにはいかないと思った。自分のペースが鈍くなるのを感じた。私は食らいつくようについていった。ああかなり息が乱れてきている。道が平坦になったところで少し呼吸を整えた。最後の坂道に向けて心の準備をするんだ。いつものお題回しはないんだぞと心で独り言をしゃべった。
 
 ラストスパート。いつもの上り坂は静まりかえっていた。木々はしんとして、ときおり左右に揺られるだけだった。聞こえてくるのは走者の息づかい。だんだん、脚が鈍くなり、視界から誰もいなくなった。気持ちだけは前に前にとせかした。台所前を疾走し、左に曲がる。お父さんやお母さん、みんなが見える。ついにゴールした。記録は12分37秒。これが速いかどうかは定かではないが、とにかく走りきった。お疲れモードである。
 タイムトライアルは今後も何回かあるようである。改めてペース配分の大切さを知った。次回も思いっきり走りたいと思う。