「魂を客席に向かって」 けいたろう

2月6日

・金時太鼓
ぴしりと張りつめた夜の闇に白い粉(こ)がふらふらと漂っていた。昨夜の午後9時を過ぎたキャラバンの車内であった。金時太鼓の帰りで自分は運転手だった。初めは気が付かなかったが黒の中に美しく白が混ざり掻き消されることなく存在し続けていることに気が付いた。
「ここ数日は冷えるなあ」
手の甲の皮膚が割れていくつもの小さな縦横の切れ目ができている。小さいときからこれが「冬」のサインだったことを思い出した。寒いと堂々といえる目安のようなものであった。この雪は明日朝にはどうなっているのだろうか。そんなことを考えていた。

金時太鼓は本番を来週の日曜に控えており、日々実感というものが歩み寄ってきている。昨夜は竹内さんがいらっしゃらなかったし、かにさんもいなかったから太鼓メンバーだけで勝央文化ホールで自主練習をすることになった。ホールを我々だけでも使わせていただけるというのはものすごく有り難いことだと思う。そのことに感謝しながら舞台を踏みしめていた。
あけみさんやふみさん中心となって自主練に取り組んだ。まずは出掃けの練習だ。宮太鼓、締太鼓、大太鼓がそれぞれどのタイミングで舞台に出てくるのかを決めた。私はさくらさんと大太鼓のパートを担当している。大太鼓パートの2人が出てくる場合は、上手と下手からそれぞれ分かれて歩いてくることになっており、これを同時に袖から出て太鼓の前に辿り着き、同時に待機の姿勢になる練習をする必要がある。話し合った結果、さくらさんが下手から上手の私に向かって合図を送りそこから14歩で大太鼓の前まで来て座るということになった。3回ほど練習したらタイミングが合ってくるようになった。他のパートの人も一緒になって出の場面だけを何度か練習したりした。
次に捌けの練習だ。演奏が終わり暗転すると全員がテンポ良く去って行くことになっている。大太鼓の場合、1から8のリズムを数える間に捌けまでの準備を完了することになった。1、2で枹を右手に収める。3、4で大太鼓を叩くときの姿勢から左脚、右脚の順番に中心に戻し、5、6で左足を一歩引く。最後の7、8でお客さんの方を向くように左にまわり脚を戻す。8を数え終わったらまた14歩で舞台袖に戻ってゆく。これらの精度はこれから徐々に高めていきたい。

その後は各パートに分かれ、気になる部分を繰り返し練習した。大太鼓もいくつかのか所について不安があるところを3つくらいピックアップしてそこだけ取り出して繰り返し叩いた。
最後は全員で出捌けも含めた一曲通しての練習をした。本番もこのような感じで演奏前から緊張を切らさずにやりきらなければいけない。力をつくし、魂を客席に向かって飛ばしきる。自分のソロパートは思いっきり聴かせる。一発一発の音が流れてはいけないのだ。

・ももはな作りなど
翌日、雪が少しばかり積もっていた。もちろん雪合戦をできるほど積もっているわけではない。昨晩静かに雪が降り続いていたのだなと思われる程度であった。
午前はフルメニューの代わりに河上さんや村田先生も加わったリレー大会が行われることになった。尻だけで進んだり、サッカーボールをドリブルしながらとか豆を掴んだまま走るといった面白い種目があった。とにかくみんなが白熱していた。
昼食までは桃花作りだ。夏やコンサートに向けて沢山の桃花をお届けするのである。前回作ったときから大分時間が経過しているように感じ上手く出来るかと少し心配であった。折りの作業を担当し火がつくまでは時間を要した。後半が過ぎてからようやくエンジンが暖まってきた。正確性も向上して早く折れるようになってきた。午前はクラシック音楽が流れ、午後は落語を流しながらの作業であった。なかなか新鮮である。