【山小屋便り新春号】「【ウィンターコンサート特集:演劇】 宝物の脚本のなかで ―― 演じ、そして表現する ――」 やよい

12月7日勝央文化ホールにて、なのはなファミリーウィンターコンサートが行われました。

ウィンターコンサートは約4時間に渡る音楽劇、音楽と劇が交互に繰り返され、4時間のステージが作られます。

私は2019年ウィンターコンサートを行うにあたり、なおちゃん、れいこちゃん、なおとさんと、演劇係を担当しました。

演芸係は様々な役割があります。脚本が出来る前は、お父さん、お母さん、演劇係とで週に1回、演劇ミーティングを行い、ストーリーに関する調べ物を提出したり、お互いにアイデアを出し合い、お父さん、お母さんと話し合いを行います。

脚本ができたら、演劇係の活動が一気に盛んになります。

劇に使う大道具、小道具の製作、受注。劇の道具の出し入れの黒子決め。演劇練習の時間確保、段取り。役者の衣装考案、ピンマイクの受け渡し決めなど。演劇係は、ウィンターコンサートを構成する1つの劇をよりよくするためのたくさんの役割があります。

私は、主に演劇練習の段取りを考えました。毎日、日中の時間と、夜の時間で練習が進むように考えました。

今年はウィンターコンサートを行う1か月前から、夜の時間のタイムスケジュールの枠が決まっていました。そのため、忙しいなかでも、21時か22時の1時間は演劇練習を行うことができました。

脚本ができあがってから、演劇練習が本格的に始まりました。

■演劇の面白さ

はじめはお父さんに演劇練習を見ていただき、基本を忠実に身体に入れます。お父さんの、情熱ある厳しく、けれどとても面白い演劇練習がはじまりました。

役を演じるとき、姿、形をすべてさらして、自分の声、表情、態度、自分の全てを使って表現します。ステージに一歩上がって、役を演じれば、ごまかすことは決してできません。とても難しいけれど、だからこそ面白いのだと思います。

違和感を感じたり、役に対しての理解が浅ければ、それが全て演技に出るのです。私は違和感を感じていても、今はどこがどう悪いのかはっきりとわかることはできません。

けれど、お父さんは一目見ただけでそれを全てわかります。お父さんは脚本にある台詞のすべてを舞台の上でどの立ち位置でどうシュチュエーションで、どのような態度で、表情で声色で言うのか、イメージしながら、脚本を書いていると、教えてくださいました。

そう、お父さんのなかには、あるべき形がはっきりとくっきりとあるのです。

そして、演劇は映画や、ドラマのように、テレビに映し出してズームにしたりすることができないです。そのため、お客さんが一定の距離があり、俯瞰してみえる範囲内で役者のキャラクター、心情を伝えます。

表情や、声色だけでははっきりとは伝わりません。お父さんがいつも教えてくださる、、登場人物との距離の取り方で好きか、嫌いかを表現し、下手側に立つのか、上手側に立つのかで、お客さんにとってプラスで安定的な台詞なのか、マイナスで不安定な台詞なのか、 身体の向き、角度、立ち位置から身振り手振り、その全てで表現します。

ステージに立つ役者がキャラクターの感情、解釈を身体に入れて、1人ひとりがあるべき演技をしたとき、ステージがくっきりととてもわかりやすくなります。

■よりよいものに

私たちはお父さんの厳しくも、情熱的で面白い演技指導のもと、コンサートの劇をよりよいものにするため、あるべき形へ向かいます。

表現の方法を覚えることで、普段の人との関係の取り方、喜怒哀楽の感情表現の出し方、社会性を身につけることでもあり、大きな意味があることだと知りました。ホール入り期間中、出はけの練習をしたときに、コーラスメンバーに向けてお父さんが教えてくださった言葉が心に残りました。

「コーラスの出はけをしているけれど、出のスピード感、列のきっちり揃って並ぶことができるか、回る向き、タイミングをみんなに合わせることができるか、で普段の人との関係の取り方がわかる」

演劇練習と、コーラスの出はけの練習は少し違うかもしれないけれど、お父さんに演劇指導をしていただけることは、自分の身につけばければいけない、社会性を育てる大切な手段の1つなのだと思いました。

自分の全てを使い演じたとき、お父さんに教えていただくことで、自分で気づきながら修正していくことができます。

己を知るチャンス。そう思うと、自分ができないなんて反省せずに、気づくたびに修正していけばいいんだ、と思えました。それはとても有り難いことでした。

お父さんの演劇練習は誰にとっても、大切なものでした。

限られた時間でみんなと練習をしました。私は今年、印象に残ったのは夜の九時からの演劇練習でした。

体育館に足を運ぶと、それぞれのシーンのメンバーが同時並行で練習を進めています。最後の晩餐シーン、レオナルド・ダ・ヴィンチと2人の弟子、彫像のメンバー、明石役のなおちゃん、ジャン役のけいたろうさん、アカリ役のれいこちゃん、ツバサ役のみほちゃん、体育館は活気に溢れていました。

■成長のため

日中にお父さんに指導していただいて、基本が身体に入ると、みんなが自由にそのシーンでもっとよくできるのではないか、というアイデアを出し合い、そのシーンで「遊ぶ」 ということをしていたのです。

その姿が、自分もそのなかにいられたことがこの上なく嬉しかったです。

私は役者としての、プレーヤーの面と、演劇係としてのマネージメントの面とがありました。

マネージメントする側として、練習時間のメニューや、仕組みを作るとき、最も大切なことは、演技がプロのように上手になることではなく、演技を表現の手段として、気持ちを成長させること、そして、何よりも楽しむことだと思いました。

上達のための練習ではなく、成長のための練習にしたかったです。だから、私はそのシーンごとにメンバーが集まって、みんなで練習することができて嬉しかったのです。

通し練習を前から見ていて、お父さんから演技に関して教えていただいたり、練習するなかで、気づくことがいくつかありました。

■宝物のシーン

りなちゃん演じる少年レオナルドのシーンはもっと色鮮やかに、りなちゃんの可愛さを、魅力を出せるはずだ、そう思うと、それをりなちゃんに伝えずにはいられませんでした。

知識や、経験が乏しい私でも、演劇係として、できることが明確にありました。私にもできることがあると、嬉しくて、できることなら何でもしたいと思いました。

りなちゃんとの演劇練習はとても楽しかったです。夕食後の時間で2人で練習をし、次の日の通しでは練習した部分が確実に良くなっていました。

「アスペルガーだからこそ、見える世界もあるんだ!!」

この最後の台詞はどうしても魅力的に、大きい声で、ゆっくりと印象づかせたかったです。りなちゃんに何回も伝えました。りなちゃんは日に日に演技がよくなっていきました。

少年レオナルドのシーンは、私たちの宝物のシーンの1つです。

ツバサ演じるみほちゃんの真っ直ぐな台詞をお客さんにストレートに届くよう、みほちゃんと演劇練習を重ねました。

みほちゃんは食事の席で何度か、

「ネバーギブアップ。絶対に諦めない」

そう言いました。みほちゃんがステージでツバサとなって、みほちゃんの心の中の感情を、ステージで強く表現できるように一緒に練習しました。

■表現したいもの

本番当日みほちゃんはステージの上でツバサとなって、660人の人達へツバサとなって、みほちゃんの気持ちを表現しました。その姿がとても嬉しかったです。

お父さん、お母さんが書いてくださった脚本は私達へのプレゼントでした。ストーリーに出てくる登場人物は、演じる子を思って脚本を書いてくださっています。

演じる子にとって、その人の内に秘めた感情や、表現したかった言葉があります。その役に真摯に向き合い、演じることはとても大切なことでした。

ステージに見えるのは、美しい表現の上澄み。その下にある努力や、泥臭さは見せないのだと、お父さんは教えてくださいました。

私たちは演劇係として、いろいろな役割を果たしていくなかで、大変でもあるけれど、こうして、本番にステージをより美しく華やかなものにすることができて嬉しかったです。