
みんなと目指した最高の物語を12月7日、お客さんに見せることができました。
開演を幕の中で待っているときはこれ以上ないぐらい緊張しました。幕の外から子供たちのしゃべり声、ロビーのカメラのモニターに映ったたくさんのお客さんの姿を見て、こんなにも私たちの演し物を見に来てくれたのかと驚いたし、ワクワクしました。
私は初めてのウィンターコンサートで不安だったりわからないところがたくさんありました。でもいつもどんな時でもみんながフォローしてくれました。みんながいないと私は成功できなかったです。
本番直前、レッスンルームの明かりも消えて会場に流れる静かなBGMだけになった時の空気は感じたこともないくらい張りつめていてみんなの緊張が目に見えるようでした。
そんななか、れいこちゃんが、「みんなファミリーだよ」と言ってくれて涙が出そうなぐらい安心しました。これまでの練習した日々がよみがえってきて自分にパワーが送り込まれました。練習してきた自分とみんなを信じてただ演じ切るだけなんだと思いました。
幕が上がるとたくさんのお客さんが大きな拍手で迎えてくれました。ホールの2階席まで席が埋まっていて立っている人もいました。これがなのはなのウィンターコンサートなんだと思いました。
10月の下旬ごろからウィンターコンサートに向けての音楽練習が始まりました。のんちゃんが帰ってきてくれて全員で踊る『バッド・ロマンス』『シャンデリア』の振り入れをしてくれました。私はダンス経験がなく、振り入れをしてもらった当初は見ていられないぐらい不格好でダンスが嫌いになりかけたと思います。どうしたらなるちゃんやあけみちゃんのようにかっこよく踊れるのだろうかとずっと頭を悩ませ、こそこそ鏡の前で練習しました。
そんな時、ダンスバディが作られて、私はさやねちゃんチームに入らせてもらいました。メンバーは私も含めダンス経験のない人ばかりだったので進みは他のチームよりも遅かったと思います。でもチーム内には暖かみがあり真剣さも欠けてはいませんでした。
さやねちゃんは私たち一人ひとりのことをよく見てくれました。間違っているところを教えてくれてどうしたら悪い癖が治るのか、言ってくれました。
一つひとつの動きを区切って細かいところまで意識して見てくれました。一人でも間違っていると流さずみんなで直していきました。だから団結感はどのチームよりも強かったと自信を持って言えます。
そうやって毎晩の15分間の練習が楽しみになりました。1回1回少しずつだけれど上手くなっているのが分かったし、いつの間にかダンスが好きになりました。メンバー同士で、「この振りはこうだったっけ?」と確認したり、教えあいっこもしました。
コーラスでもバディを組みました。私はゆきなちゃんとちさとちゃんとペアでした。たくさんの曲があったのでまず暗記することから苦労しました。特に英語の歌詞を歌う曲は難しかったです。ゆきなちゃんとちさとちゃんと何回も何回も練習しました。
私は歌うことがもともと好きで、ピアノを習っていたこともあり音を取るのは得意な方でした。でもこれだけピッチを合わせようと努力したり自分の声を分析するようなことは初めてです。コーラスはカラオケじゃなくてみんなの声を一つにして音にするのでそこが違いました。バディでは3人の声が一つに聞こえるように、チューナーを使って練習しました。すると自分の声が高いほうなのか低いほうなのかが知ることができて全体で合わせる時にどう声を出したらいいのかが分かりやすかったです。
ビッグバンドの演奏では私はクラリネットパートになりました。クラリネットはりんねちゃんとまことちゃんしかいなくて練習ではサックスパートさんと一緒に練習しました。
吹奏楽で少ししたことがあったけれど最初は音を出すのがやっとでこんなにも難しそうな曲を演奏できるのかと心配でした。息も出しづらくてクラリネットを支える親指も痛いし立っているだけでも苦しかったです。
最初の方は耐えるので精一杯でした。でも時間が解決してくれて立つのも苦痛にならなくなり、親指も慣れてきました。それがわかってくると「成長したかも!」と思えてだんだん練習が楽しくなりました。
息を最後まで持たせるのはとても難しかったです。吹いているとだんだん口が疲れて息が漏れて最後まで音が出ませんでした。無理に出そうとすると甲高い音が出てしまって、足を引っ張るのが怖くて思いっきり吹けませんでした。
でもお父さんが、「作る過程を楽しめばいいんだよ」と集合の時に話してくださって、心の荷が取れました。結果も多少あるけれど自分の精一杯を尽くして楽しめばそれでいいんだなと思いました。それから音を出すのが怖くなくなりました。
練習するときにいつもネバーギブアップと心に唱えました。これは今年のウィンターコンサートの目標です。お父さんが集合の時に、「今苦しくてもあきらめなかったら、どこかでその何倍も喜ばしいことが帰ってくる。諦めたら後1ミリの壁でも乗り越えられないんだよ」と話してくださいました。これを聞いて、絶対にあきらめないぞと心に誓いました。
お父さんやお母さんのネバーギブアップな姿がかっこよくて強くて憧れています。私もどんな困難があっても乗り越えてやろうと決心できました。
あゆちゃんには表現者としての心持ちやプライドを教わりました。私は舞台に立つことと言えばピアノの発表会、小学校の学習発表会ぐらいしかないので本当にこれが初めての舞台でした。だから最初は伝える意識やプライドのかけらもなかったと思います。
コーラスでも目線が定まらなかったり、人を見てしまっていました。でも、みんなの姿から正しい見せ方を教わりました。ダンスを踊っていなくても一人の表現者としてコーラスを目線を揃えて歌うこと、ダンスでも表情から非日常の自分を演じることを学びました。そうやって日に日に伝えるという感覚をつかんでいきました。
脚本ができたのはウィンターコンサートまで2週間ぐらいの時でした。お父さんは脚本書きに苦労されていて、急かすのは失礼だと思っていたけれど、脚本ができるのをまだかまだかと楽しみで仕方がなくて前半の脚本が出来たときはとても嬉しかったです。
やよいちゃん演じるキョウコさんのガーガーから物語は始まって次にはれいこちゃん演じるアカリさんが恐竜の卵を割るシーンがあります。
想像もつかないようなことばかりがたくさん出てきて物語が進んでいくのが面白くて世界に入ったかのように読み進めることができました。
予告が書かれたチラシをもう配っていて、その内容にどうつなげていくのかが見当がつかなかったけれど、後半を読んでどんどん現実とつじつまがあってきてまるで推理小説を読んでいるかのようでした。本当のお話なのかと思っていたけれどお父さんが全部考えたんだと聞いてとても驚きました。
お父さんは、「作るんじゃなくてもうできている物語を探すだけなんだよ」と教えてくれて、私も無理やり作ろうとせずにあるべき形を見つけるだけなんだなと思いました。
確かにダンス練習であゆちゃんから、「ダンスにはあるべき姿があってそれにレベルが達していないのは個性でもなんでもないよ」と教えてもらったことがあります。これにも関係しているんだなあと思いました。
私は初心者ということに逃げ道を作って極限まで自分を試していなかったです。力尽きてしまってリタイアしてしまうのではないかと怖かったです。
でも、怖がることが一番の苦しみであり自分で自分の首を絞めていたのを知りました。実際には力尽きて死んでしまうこともないのに怖がる自分が情けなくて悔しかったです。
「悩んでもいいけれど、怖がることだけはしてはいけない」
というお父さんの言葉を思い出しました。やよいちゃんやれいこちゃんは主要役者もしてダンスもして畑のリーダーもしてと責任感が人一倍多いはずだけれど、どれも全力で取り組んでいてそういう姿を見て、私も全力を尽くしたい、そう思いました。
少年時代のレオナルドの役をさせてもらって子レオナルドから学ばせてもらったことがたくさんありました。役になり切るのは大変です。自分を捨てないといけないからです。セリフを読み込んでもどういうイントネーションで言えばいいのかと混乱しました。だからレオナルドファミリーのみんなと毎晩一緒に練習をしました。
みんなとても熱心でどうしたらもっと役になり切れるのか考えていました。日に日に進歩していく一方、私だけが枠から抜け出せずに取り残されたような孤独感がありました。
そんな時、やよいちゃんが、「一緒に練習しない? もっとっもっと良くできるような気がするんだよね」と声をかけてくれました。
演技を一通り見てもらうと、やよいちゃんが場面場面のレオナルドの気持ちを考えてくれてお手本を見せてくれました。それがすごく見やすくて感情も入りやすくて驚きました。
私は全てのセリフを同じテンポとトーンで言っていて、聞きづらかったのだと気が付きました。また、身振り手振りも教えてくれたり、どこを一番お客さんに伝えたいかも言ってくれて、それからは感情を入れて表現できるようになりました。
そうしているうちに、この場面で何が伝えたかったか、自分の心の整理がつきました。ファミリーのみんなとももっともっと心のつながりを大切にしました。役をするのは大変なことと思っていたけれど、感情が入るにしたがってどんどん楽しくなりました。
ホール入りから本番までは楽しくてあっという間に感じました。
あゆちゃんが、「ホール入りしたらホールで存分に遊べるんだよ」と言っていて初めはその意味がわからなくてホール内でかくれんぼでもするのかと思っていたけれど、みんなでロビーの飾りつけや照明を使っての通しなどをしているうちに楽しいってこういうことかと知りました。
見る見るうちにホールがなのはなの色に染まってくのを見ました。ロビーにはグッズ係さんが作ったマニキュアアクセサリーや歯車が埋め込まれたペンダント、劇にも出てくる壺(花瓶)などどれも見ているだけで心が躍るような作品がたくさん並びました。また、みんなで夜の隙間時間などを使って選別した白大豆や小豆、紫黒米などやたくさんの品種の桃ジャム、加工品も並びました。
私がホール入りした日にはもう先行の人が舞台背景を組みたてていました。パステルカラーで揃えてあってとても可愛かったし上品で美術館のイメージにぴったりだなと思いました。牧場の方からいただいたロープが赤く塗られて使われていたり、お父さんのお誕生日会でかにちゃんチームが制作した歯車も飾られていて、嬉しくなりました。
私はこのウィンターコンサートで、「埋もれることが美しい」ことを学びました。以前の私だったらダンスを踊りたい、コーラスでも一番声を大きくしたい、クラリネットもファーストを吹きたいと欲ばかりあってそれが満たされないとダメというように拘りがあったと思います。
でも、それは違いました。透明になってどんなことにでもスッと添わせられる、上手く言えないのですが、みんなの一部となって動くことが幸せなんだと思いました。コーラスでバディの人と一つの声に聞こえたとき、ビックバンドの演奏をしたとき、ダンスのバディのメンバーの一人が壁を乗り越えたときに感じた嬉しさがそれを教えてくれました。自分は全体の中の歯車の一つなんだと思いました。
小さくとも一人でも動かないと止まってしまう、みんな一緒に動いてるんだ、そう思うと苦しい時も頑張れました。
そしてコンサート本番、たくさんの家族が帰ってきてくれました。お昼ご飯は100人を超える人と一緒に食べて、改めて周りの人たちの支えがあっての今日なんだと感じました。
音楽合宿中、りゅうさんが台所に入っていくれて美味しいスタミナ料理を作ってくれました。大竹さんや須原さんが本物のような小道具を作ってくれ、永禮さんはパイプを奈良まで取りに行ってくださったり、カメラマンの中嶌さんもわざわざ東京から駆けつけてくれました。こんなにも頼もしい家族をたくさん持てて幸せです。こんなに暖かい日がずっと続いたらいいのにと思いました。
たくさんのお客さんが暖かい眼差しで迎えてくれました。緊張はしたけれど受け入れてもらっているのが分かってとても落ち着きました。
開演から終演までの4時間、本当にすぐでした。最後のアンコール曲『ディス・イズ・ミー』の時にはこれまでのみんなで練習してきた日々が溢れるように思い出されて涙がこみ上げてきました。悲しかったこと、嬉しかったこと、苦しかったこと、楽しかったこと……。でも最後は全てが楽しかったなあと思いました。
お父さんが閉会の挨拶で、「なのはなの子はみんな精霊です」とおっしゃいました。私は精霊、この世であるべき生き方や希望を表現し、誰もが生きやすい世界を作っていく使命のある精霊、そのプライドにかけて私はこれからも成長します。どんなことがあっても決して諦めません。
●感想文集 目次●
「私が生きる意味」 れいこ
「ジャンと私」 けいたろう
「一筋の光へ駆ける」 やよい
「自分の果たすべき役割」 みほ
「私たちの生きる道」 さやね
「埋もれることが美しい」 りな
「世界が動き出すまで~明石小二郎の人生を生きて~」 なお