「私たちの生きる道」 さやね

 NEVER GIVE UP、決して諦めない。今この瞬間も、どこかで、答えを求めて求めて諦めきれない仲間がいる。なのはなファミリーの揺るぎない土台を作り、バトンを渡してくれた仲間、ここが帰るべきただ一つの場所と、誇りを持って生きている仲間がいる。私たちを待っているまだ見ぬ誰かが必ずいる。
 一人だった私の隣に、今は、泥臭く、強く、そして決して諦めない仲間がいる。だから私は諦めない。表現されるべきただ一つの世界に、みんなと辿り着くことを。

 2019年12月7日、ウィンターコンサート本番当日。勝央文化ホールのレッスンルームに、100名を超える仲間が集まりました。身体を寄せ合って、みんなと一緒にあたたかい美味しい昼食をいただきました。
 正装の凜々しいお父さん、美しいお母さん。毎年、ウィンターコンサートのために東京から駆けつけてくださるカメラマンの中嶌さん、岡さん。文化ホールのステージを、何もないところからともに作ってくださり、全力で支えてくださる竹内さん。舞台の大道具小道具を作るため3週間前からなのはなに来てくださり、数々の美しい道具を作り、ピンスポットライトをしてくださる大竹さん。大竹さんのご友人で、毎年写真を撮ってくださる正田さん、ビデオを撮ってくださる大野さん。照明の永禮さん、白井さん、卒業生のたかこちゃん、駐車場の案内をしてくださる水田さんや細尾さん、受付に立ってくれる卒業生のゆりちゃん、たくさんのボランティアの方々、笑顔で帰ってきてくれるたくさんの卒業生。そして、会場に集まったたくさんの方々。
 書き切ることができないほど、たくさんの家族、仲間一人ひとりの力が、頂点に集まって、結ばれる。今この場所でこの仲間としかできない、奇跡の、なのはなファミリーウィンターコンサートが始まります。

 
 

◆Bad Romance

 緞帳が下りている青い光のなかで、みんなとポーズを取りました。笑顔でね、場ミリを守ってね、頑張ろうね、あゆちゃんが声をかけてくれました。私の前にはななほちゃんがいて、まことちゃん、さくらちゃんがいる。後ろにはなおちゃんがいました。
 左手は顔をつかんだ形で、左肘の頂点を右手の中指の付け根に乗せる。肘を上げ、肩の前で一番大きくきれいな四角形を作る。胸を開いて肩甲骨を近付け、左足に体重を乗せる。一つひとつ、あゆちゃんとみんなと揃えた形を確認します。前の人の頭の先を見て、手と足の指先まで緊張させ、私たちは芸術作品になります。
 コンサートの始まりを告げるベルが鳴り、場内の空気が止まる。緞帳が動き出し、みくちゃんの奏でるキーボードの旋律が響く。まだ見ぬ誰かに向かって、神様に向かって、私たちはこう生きてゆきますと誓い、表現します。
 音響、照明、衣装、舞台美術、撮影、演奏、ダンス、コーラス。総合芸術のコンサートが、1年間の集大成として、みんなのすべての気持ちが実りますように。

 幕が上がり、私たちの姿が見えた瞬間、拍手が起こりました。想像していなかった、あたたかい拍手でした。私たちを包み込みました。客席を埋め尽くし、立ち見が出るほどたくさんの方が、この瞬間を待ちわびて、私たちを待っていました。
 私たちは肯定されている。煌びやかな舞台をたくさんの仲間と作り、こんなにもたくさんの人が受け取り、気持ちを返してくれる。嬉しさが胸に満ちました。

 

 

『バッド・ロマンス』は、コンサートの第1曲目。ダンスは、演奏者をのぞく、ほぼ全員の48名で踊ります。今年のなのはなファミリーの、誇りあるメンバーの姿を、みなさんにご覧に入れます。
 ダンスの振り付け、構成は、卒業生ののんちゃんが考え、指導してくれました。のんちゃんは、なのはなに帰ってくる度、いつも輝く笑顔で、前向きで明るく、新鮮な風とともにやってきて、ダンスを教えてくれます。
 まだ脚本ができていない段階で、お父さん、お母さんの創作意欲を刺激する、奇抜な世界を作り出します。48名の、経験や体力に差があるみんなを動かし、誰も見たことのない作品をみんなと作るのんちゃん。自分の力をなのはなのために惜しみなく尽し、その後ろ姿を見せてくれる先輩であり、かけがえなのない仲間。のんちゃんのことを尊敬しています。

 のんちゃんが振り入れをしてくれてから、習慣練習を繰り返し、お父さん、お母さん、あゆちゃんが見てくれました。あゆちゃんによるダンス指導が始まりました。
 あゆちゃんは、全員のダンスを正面から見て、すべての振り付けを一つずつ止めて、形、次の形への移動、動く拍数を決めました。この形、こうしてほしい、そう示すあゆちゃんに迷いはありません。
 あゆちゃんは、勝央文化ホールの舞台で踊られるべきダンスを見ています。たった一つの完成形が、あゆちゃんには見えています。こうあるべきという突き抜けた美意識と、自信があります。こうしてほしいと言ったときのあゆちゃんが見せる動きは、美しく、格好良かったです。
 一つのポーズを、全員が同じ形になるまでとり続けます。あゆちゃんは誰一人取り残さないです。すべての形を揃え、振り付けを統一しました。
 私はあゆちゃんに全力で添いたかったです。あゆちゃんの見ている世界へ行きたかったです。たった一つのあるべき形に、みんなとなる。それはどこまでも自分から離れるということでした。あゆちゃんの思いをすべて吸収しようと思いました。ともに踊っているれいこちゃんや、あけみちゃんがあゆちゃんの言葉通りにすぐさま変わってゆく姿から、自分を律しました。
 私は最前列で踊ります。みんなの基準となり、振り付けはもちろん、なのはなファミリーの心意気を背中で示すことが私の役割だと思いました。恥ずかしさや臆病な気持ちはかなぐり捨てて、石にかじりついてでも、あゆちゃんの求める形になるのだと思いました。

 ダンスのバディを組み、毎日練習しました。あゆちゃんとみんなと揃えたダンスを、6人から8人のバディに分かれて、踊り込みます。なるちゃんチームはお仕事組さんが集まり、私のチームはコンサートが初めてという人が中心でした。あゆちゃんが本店で、8つの支店に分かれます。それぞれのバディでリーダーが中心となり、みんなで練習していけることが嬉しかったです。
 私のチームは、さくらちゃん、いよちゃん、りなちゃん、かなちゃん、ほしちゃん、ちせちゃん、まっちゃんです。私はバディのみんなの存在に、たくさん助けてもらい、支えてもらい、引っ張ってもらいました。

 毎日、体育館やお客さま玄関、図書室、グラウンドで踊りました。同じ形を、何度も何度も揃うまで、毎日踊りました。誰も一人にならないで、みんなと気持ちを高め合って、良くなっていきたかったです。
 あゆちゃんが見てくれるダンス練習で、集中力がなくなりかけたとき、夜練習が立て込んで視野が狭くなっているとき、バディのみんなの顔が頭に浮かびました。いつも瞳を輝かせて、一生懸命に踊るさくらちゃん、みんなの手本となってほしいと言ったとき、迷いなくはいと答えてくれたさくらちゃん。私の言葉を真っ直ぐに受け止めて、ただただ吸収しようと精一杯に踊るりなちゃん。いよちゃんの真剣さ、厳しい言葉も受け止めて諦めないかなちゃん、ただただよかれの気持ちで精一杯に踊るほしちゃん、ちせちゃん、まっちゃん。みんなのことを思うと、決して投げ出すわけにはいきませんでした。

 どうしたらもっとみんなが楽しく、上手に踊れるようになるだろうか。そう考え、あゆちゃんとのダンス練習で、私はこの時間で完璧にしようと思いました。そしてできるようになったことを、すべてバディのみんなに伝えました。
 お願いします、といつも笑顔でバディ練習の時間を楽しみにしてくれる仲間がいます。リーダーをさせてもらって、役割をもらって、一番助けてもらったのは私でした。私たちは運命共同体です。みんなで一つの生き物です。
 上手下手ではなくて、一人ひとりが自分の精一杯で向かっている。その姿を見せ合い、励まし合い、信じ合えることが、何よりも嬉しかったです。
 
 

 

 バディ練習や、毎日の柔軟、筋トレ、ウォーキング練習、ダンス練習をしていて、私は迷うことがありました。意味のある練習ができているだろうか、みんなの気持ちを高める空気を作れているだろうか、浅くないか、今のままでいいのか。ダンス部門のリーダーとして、役割を果たせているかどうか。自信はありませんでした。
 あゆちゃん一人に任せるのではなく、かといってあゆちゃんと同じようにしたいと思うのは驕りだと思いました。私は、あゆちゃんに添うことに徹し、必要と感じたらすぐに動きました。力になれるかわからないけれど、私にできること、日々のフルメニューを進める、バディの編成を組む、夜の練習の時間割りを考える、場ミリテープの図案を考える、各曲のダンスの完成度、必要な練習をあゆちゃんに報告する。私は、あゆちゃんだったらどうするかと考えて、できることはやりました。

 フルメニューのウォーキング練習で、私はれいこちゃんの姿を見ました。れいこちゃんはいつも表情が輝いていて、胸を張って堂々と演じていました。れいこちゃんの存在に救われました。れいこちゃんが生き生きとできるフルメニューにしよう、そこから視野を広げて、全体のいい空気を作ろうと思うことができました。
 れいこちゃんの一生懸命さ、心の清々しさ、美しさを尊敬しています。
 まだ見ぬ誰かのために、自分のすべてをかけて世の中を変えてゆく。なのはなファミリーの全員で踊りました。

 
 

◆Never Give Up

 卒業生のりかちゃんと、なるちゃん、ゆずちゃん、のんちゃんと5人で踊りました。りかちゃんが振り付けてくれたダンスをりかちゃんとみんなと踊り、りかちゃんとみんなと一緒にコンサートを作れることが嬉しかったです。
 私はりかちゃんのことが大好きです。りかちゃんの踊るダンスが好きです。りかちゃんは美しく、涼しく、情熱的です。りかちゃんの生き方が格好いいです。なのはなファミリーで立ち直り、自立し、なのはなの子としての誇りを持って力を尽している、その後ろ姿を見せてくれ、仲間としてともに表現できることが嬉しいです。
 私は、りかちゃんから受け取るばかりでなくて、同じ仲間として今のなのはなを伝え、お互いに刺激を与え合いたいと願いました。
 りかちゃんが帰ってから、4人で練習しました。りかちゃんが踊っている映像を0.8倍速にして、繰り返し見て、踊って、覚えます。りかちゃんのように踊りたい、りかちゃんの生き方を感じたい、その思いだけです。
 平日はお仕事があるゆずちゃんと、夜に集まって練習しました。ゆずちゃんは他にもたくさんのダンスを踊っています。時間が限られているなかで、一緒に練習できることを大切にして、4人で踊りました。

 

 

 演奏、歌、コーラス、ダンス、衣装、照明。すべてが一つになる。衣装は、お父さんのお誕生日会でみんなと考えた、真珠の耳飾りの少女の衣装でした。他にも、笛を吹く少年や、落ち穂拾い、センチュリーアートの彫像、『ビート・イット』の衣装、最後の晩餐。お父さんのお誕生日会でみんなと一緒に考えて作ったものが、コンサートを作っていることが嬉しかったです。

 大きな大きな平原の向こうに浮かぶ夕日。そこに私たちの後ろ姿がある。人間が帰るべき場所、帰るべき心。求めて求めて諦めきれない、そんなまだ見ぬ誰かのために、「諦める必要なんてない。私たちが作るから」そう宣言し、伝える唄。
 演奏が終わった瞬間、客席から歓声が上がりました。お母さんだと思いました。嬉しかったです。

 
 

◆小道具の製作

 お父さんが声をかけてくれて、恐竜の卵と水晶玉を作り、歯車の花瓶と真珠の耳飾りを作りました。恐竜の卵は、大竹さんが色を塗り、ニスを塗り、美しい卵にしてくださいました。そして水晶は、失敗してしまいきれいな玉にできなかったと思っていたとき、お父さんが大丈夫だと言い、大竹さんが本当にレオナルドが作った道具だというすばらしい水晶器を作ってくださいました。

 

 

 陶芸作品の花瓶に、歯車を入れ、レジンを流して固めました。お父さんがデザインした作品です。はじめてお父さんが図案を書いてくれたときから、花瓶が完成するまで、想像を超える美しい作品が出来上がりました。さくらちゃんやれいこちゃん、かにちゃん、まみちゃん、みくちゃんと一緒に作った花瓶を、陶芸教室の竹内先生が焼いてくださり、のんちゃんがレジンの流し方を教えてくれ、一緒に完成させてくれました。
 誰かのために、自分にできることがある、そのことが嬉しかったです。
 ホールに入ってから、夜更かしをして花瓶を完成させました。なおちゃんがお仕事から帰ってきて、体育館へ行き、きっとダンスの個人練習をしていたと思います。そしてリビングに戻ってきて、脚本を暗記していました。
 開演前、ロビーにてグッズ販売のコーナーに立たせてもらいました。陶芸の花瓶をはじめ、みんなが手作りしたエプロンやシュシュ、巾着、ネックレス、ピエロの人形が、次々にたくさんの人の手に渡り、みなさんの笑顔のもとに渡っていきました。

 

 
 

◆Angelina

 アコースティックギターアンサンブルの『アンジェリーナ』。毎週火曜日の夜、藤井さんが来てくださるギター教室で、みんなと練習し、演奏しました。
 藤井さんのために、なのはなのコンサートの幅を広げるために、みんなと演奏しました。
 物語は、ジャンと鏡子が出会い、コーヒー店で話をする場面です。面と向かって話すのは初めてだけれど、同じものを感じる、お互いのありのままを話すことができる。暖かく、安心した二人の気持ちを音にしました。

 

 
 

◆Asturias

 物語は、最後の晩餐。レオナルド・ダ・ヴィンチが予言した人類の未来を明石は突き止めた。レオナルドと明石の意思が重なった瞬間でした。
 まえちゃんと2人で弾く『アストゥリアス(伝説曲)』。あゆちゃんが、この曲を演奏するギタリストを教えてくれて、はじめてこの曲を聴いて、好きだと思いました。お父さんとお母さんに聴いてもらいました。ある夜の集合で、お父さんがこの曲が好きだと言いました。演奏していいのだと思いました。練習を始めました。
 ポーランド出身の男性が弾いていて、楽譜はインターネットでデータを購入しました。楽譜には、ギターパートとドラムパートがあり、奏法の名称や強弱が細かく書かれていました。楽譜を見ているだけでも、極めて情緒的な曲なのだと思いました。映像を見て、弾き方を解読し、来る日も来る日も練習しました。
 しかし、練習しても上達している感覚がしませんでした。何かが間違っている気がしました。お父さんに相談しました。お父さんは、この曲を理解しなければ演奏はできない、なぜギターのボディを叩くのか、理解できていなければ叩くことはできないと言いました。
 曲を理解し、曲を作った者の心、演奏する者の心を理解し、それと同じ深さが自分になければ、演奏はできません。
 我武者羅に練習することをやめました。理解することが恐くて、闇雲に走っていたことに気付きました。マルシンさんが演奏する映像を見ました。深かったです。情熱的で、感情の起伏が激しくて、果てしなく上手かったです。彼の心を理解したかったです。私の心は恥ずかしいほどに浅かったです。理解することが難しかったです。なぜこの曲を弾くのか、わからなくなりました。わかるまで聴きました。
 
 

 

 ギターを弾くことは、私の使命だと思っていました。ウィンターコンサートのチラシの裏面や、DVDのパッケージに、ギターを弾く自分がいました。自分にこだわってはなりませんが、チラシを配る度、強く緊張しました。同じことはしたくありません。人々の評価と期待を裏切る演奏がしたかったです。
 ギターは、藤井さんが貸してくださっている「マーチンD-28」を弾かせてもらっています。9月初旬に修理に出し、戻ってきたのは11月中旬でした。その間、エスヤイリのギターと、お父さんが新しく買ってくれたヤマハの最上級のギターを弾きました。
 お父さん、お母さんは、いつも私たちに一流の楽器を持たせてくれます。ヤマハのギターは、コンサートでちさちゃんが弾きました。誰の何のくせもない、素直で純粋な、深みと暖かみのあるギターです。
 コンサートまであと1月を切り、マーチンが帰ってきました。ずっとずっと待っていました。お父さんがギターを届けてくれて一緒にケースを開きました。お父さんお母さん、みんなが一緒に喜んでくれました。本当に嬉しかったです。
 最高級のギターを弾かせてもらいます。演奏を評価し、待ってくれている人がいます。演奏したい曲、惚れている曲があります。
 この楽器、この曲にふさわしい演奏をするため、全力を尽します。腹を括りました。

 一緒に演奏するまえちゃんは、なのはなの職員であり、コンサートの音響、ポスターのデザイン、舞台美術、ビデオの撮影、ホームページの編集、エレキギタリストとして、誰よりも責任を負い、身を削って動いていました。
 2人で時間を合わせて練習することはほとんどできませんでした。まえちゃんは話してくれました。1人で完璧に弾こうと思わないで、パートを分けて、それぞれが得意なところを弾いて、お互いが気持良く演奏できるようにしよう。
 私は、1人で完璧にしなければならない、と思っていました。まえちゃんはどこまでも優しいです。まえちゃんは大きいです。
 アルペジオの速弾きは、2人で音を分けて、2人で完成させます。私がドラムとベース、まえちゃんがボーカルを弾きます。
 まえちゃんのために何かできることはないか、そうお母さんに言ったとき、お母さんは、
「何もしなくていい。今のまま精一杯にやったらいいよ。2人で双子みたいに演奏したらいいよ」
 と言いました。
 直接まえちゃんのために何かをできなくても、まえちゃんはまえちゃんだから大丈夫、私は、まえちゃんと一つになって、まえちゃんを立てて、もしもまえちゃんがミスしたらそのミスは私がもみ消す。そしてまえちゃんが、私の足りないところを埋めて、かき消してくれる。
 本当はもっともっと練習がしたかったです。するべきでした。気持ちを深めなければいけませんでした。しかし本番はやってきました。どうか音を出させてください。どうか演奏をさせてください。まえちゃんと一つになり、演奏ができるように。祈りました。必死でした。顔を上げて、客席から歓声が上がりました。お母さんでした。やったのだ、と思いました。

 
 

◆The Journey

 れいこちゃんが演じるアカリ。モラルの堕ちきった人間界に怒りを爆発させる、けれど諦めたわけではない。正義があり、勇敢で、美しい、れいこちゃんの心そのままを表現する、『スカイ・スクレイパー』。れいこちゃんの一輪車の演技を、ここにいるすべての人が愛おしく、見守っている。れいこちゃん、アカリが美しく生き続けることができる世界を取り戻すために。れいこちゃんが舞うたび、会場から暖かな拍手が湧き起こり、れいこちゃんを包み込みました。優しい優しい拍手でした。
 私は舞台背景のドアの後ろに控え、舞台で繰り広げられるれいこちゃんの演技に、気持ちを送りました。

 エレキギターと4本のアコースティックギターで演奏する『ザ・ジャーニー』。
 リードのなおとさんと私の旋律を、バッキングのまえちゃん、パーカッションのゆいちゃんとちさちゃんが支えて押し上げます。まえちゃんは、なおとさんと私が気持ちよく演奏できるように、リードの責任はバッキングの自分たちが負い、もしもリードがミスしたとして、そのミスが人に聞こえてしまったらそれはバッキングのミス。私たちバッキングの役割は、いかにリードを立たせるか、ミスをミスにしないか、それにかかっている。
 バンド演奏でもそう。第1ギターを立たせるために、第2ギターは、第1ギターの責任をすべてと言っていいくらいに負う。ミスをミスにさせない。
 まえちゃんは言いました。なのはなファミリーの利他心、チームプレイを、まえちゃんはずっとずっと、誰が見ていてもみていなくてもしています。私はまえちゃんのことを理解していなかったと思いました。自分が恥ずかしく思いました。まえちゃんは美しいです。

 まえちゃんたちと一緒に見つけた、ウィンターコンサートで演奏したいと思った曲が、はじめから用意されていたかのように物語のなかに入っていきました。レオナルドがエレキギターを弾き、明石とジャンが、レオナルドが作った3つの機械を説明します。演奏が終わり、客席から歓声が上がりました。
 
 

 
 

◆Set Fire To The Rain

 16名で踊りました。卒業生ののんちゃんが振り付け、多くの卒業生と一緒に踊ってきたダンスです。コンサート2週間前、演奏することが決まり、メンバーと配置を考え、練習をしました。
 映像を見て、振りを思い出しました。時間が限られており、他の練習との合間に踊りました。
 練習を続けることは難しかったです。全員の気持ちが揃い、迷いなくやることは難しかったです。誰もみな精一杯でした。私は客観性を失い、自分の振りをあるべき形で踊ることで精一杯でした。全体を見ることができませんでした。
 ダンスメンバーはみなこの曲を踊ったことのあるメンバーです。気心の知れている仲間です。だから信じました。みんなで揃ってたくさん話して練習する時間が取れなくても、みんなならやってくれる、無責任だけれど、そう思いました。もしも誰かがミスしたなら、私がカバーします。信じて、手放しました。
 
 

 

 アカリが明石、ジャンのもとに帰ってきて、ともに希望を持って、世界を救うことを誓います。私たちは、アカリたちと入れ替わり、ステージに出ました。
 土砂降りの雨の中へ、私たちは火炎放射器をぶっ放す。アカリ、明石の決意を表現しました。どうかあるべき表現がされるように、仲間を信じました。なるちゃん、のんちゃん、ゆずちゃん。あけみちゃん、しほちゃん。みんなを信じました。身体が小さければ、腕を足を伸ばして伸ばして、みんなとこの会場を動かしたいと思いました。必死でした。

 
 

◆Chandelier

 あゆちゃんの歌う『サムワン・ライク・ユー』、会場一体を包む上質な拍手。あゆちゃんと入れ替わり、舞台に出ました。
『シャンデリア』を踊ります。れいこちゃんがどこまでも伸びやかに美しく舞い、私たちはれいこちゃんを守り、包み、生かします。あゆちゃんが見てくれて、みんなと振りを揃えました。卒業生ののんちゃんが振り付けて作ってくれたダンスです。
 コーラスを歌い、踊りました。どうか私たちの思いが、まだ見ぬ誰かに届きますように。

「アカリ、キョウコ、ツバサ、3人の精霊と、なのはなファミリーの一人ひとりが精霊です」
 お父さんがそう言い、大きな大きな拍手がお父さんの言葉を後押ししてくれました。私たちは精霊です。人間界を救うために、人間の姿を借りた精霊。自分に与えられた役割を全うするために、自分のすべてをかけて生きてゆきます。

 

 
 

◆This Is Me

 ディス・イズ・ミー、これが私。会場にいるみなさんが手拍子をしてくれました。この場所にいるすべての人が一つになりました。全員で踊り、バンドメンバーが演奏する足場の上で、なおちゃん、まゆみちゃん、まよちゃんが虹色の傘を回します。
 私たちは、このコンサートに向けて、全力を尽しました。精一杯にお父さん、お母さん、あゆちゃんに添い、脚本を読み、精一杯に深く求めて、表現しました。誰一人欠けることのないかけがえのない仲間と、まだ見ぬ誰かを信じ、最高の4時間を作りました。深く、強く、正義と勇気を持って仲間とともに生きることを求め続けます。ありがとうございました。


●感想文集 目次●

「私が生きる意味」 れいこ
「ジャンと私」 けいたろう
「一筋の光へ駆ける」 やよい
「自分の果たすべき役割」 みほ
「私たちの生きる道」 さやね
「埋もれることが美しい」 りな
「世界が動き出すまで~明石小二郎の人生を生きて~」 なお


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