5月25日(金)「一人ひとりの新しい物語へ ――美作市高齢者大学合同講座でのコンサート」

5月25日のなのはな

〈美作文化センターで開催された、美作市高齢者大学合同講座にて 約350名の方々へ向け、 1時間半のオリジナルコンサートを披露しました〉

会場に広がる、華やかで、豊かで、広がりのある世界。
心に抱く希望、そして決意。
私たちが目指す生き方を、演奏とダンス、MCにのせて表現したコンサートは、
大成功でした。

高齢者大学の講座の一環として、美作文化センターにて
1時間半のコンサートを行ないました。
演奏曲目は、全11曲。
1人の女性のモノローグで、ステージはつながれていきます。
摂食障害になった女性が、なのはなファミリーで立ち直り、
税理士として自立していくまでの道のりが、物語となっています。
そこには、深い孤独があり、痛みがあり、怒りがあります。
なのはなファミリーとの出会いがあり、見つけた希望の光があります。

私は物語の主人公の女性、『奈央』の役を演じました。
MCを通して、自分のここまでの人生と向き合いました。
演じながら、自分が感じたこと、感じるべきであったことを、
心に刻みました。
これから生きていく姿勢を、ステージの上ではっきりと伝えました。

この物語は、私の物語であり、なのはなのみんなの物語です。

開演前、客席からはお客様の声が聞こえてきました。
そのざわめきから、たくさんのお客様が入られているのがわかりました。
(なのはなの作り出す世界に、会場全体を引き込みたい)
そう思いました。
表現するというのは、日常の自分を捨てて、
振り子が大きく振れるように、自分自身の感情を強く出していくことです。
開演を待ちながら、
バンドメンバー、ダンサー、コーラス、それぞれが、
1曲目の気持ちを作り、高めて行きました。
私のMCは、1曲目が終わったあとから始まります。
お客さんを、物語の世界へといざなう、大事な入口のMCです。
私は、『奈央』の役へと入っていきました。

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午前10時、開演です。
ドラムのカウントから始まり、幕が上がります。
会場を包み込むように、美しい大輪の花が開きました。
1曲目は『カノホナピリカイ』です。
ステージ上のダンサーが一斉に立ち上がり、踊り始めると、
会場の空気が、変わりました。
ステージに心を引きつけられるのが伝わってきました。
『カノホナピリカイ』の豊かで美しい世界が、
ゆったりとした波のように客席に向かって広がっていきます。

拍手が上がり、曲が終わります。
ダンサーと入れ替わりで、私はステージに出ます。
コツ、コツ、コツ、……。
ヒールの音を、ゆったりと響かせて、
フラダンスの優雅なステップに合わせるように、
私は余裕を持って歩き、ステージの真ん中に立ちました。

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開演の挨拶のあと、こんな自己紹介をします。
「私は、なのはなファミリーの主(ぬし)と言われるくらい、
例外的にずーっといるんです」
お客さんが(主?どんな人なんだ)と関心を持って耳を傾けて
くれるのがわかりました。
言葉はなくても、見ている人の気持ちは、はっきりとわかります。

摂食障害になりなのはなファミリーに来た私は、
ここで気持ちと身体を立て直しました。
すっかりなのはなでの生活が長くなった私も、
とうとう就職が決まり、税理士として働き始めます。
就職が決まって携帯電話を買いに行ったエピソードなどを交えて、
MCは進みます。物語のプロローグです。

どんな人生を歩み、なのはなにたどり着いたのか。
税理士になるまでの道のりはどんなものだったのか。
いよいよ物語は本編へと向かいます。

2曲目は、人形のようなコミカルな動きのダンスの
『バッドライアー』です。
一生懸命に生きているんだけれど、なんだかうまく行かない。
子供心に、生きるのって難しい、そんな風に感じたことがあります。
みんなを楽しませようとおどけていた小さい頃の自分が、
そこにいるようでした。

高校に入ってすぐのころ、
それまで自分が当たり前に生きていた世界、
学校や友達というものが、一変して色褪せて見えます。
自分の中に生まれた、いくつもの疑問。
「なんのために、勉強をするのだろう?」
「なんのために、生きるのだろう?」
その疑問にきちんと向き合って、答えてくれる人はいませんでした。

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有名大学に入り、一流企業に入り、『勝ち組』にならなくちゃいけない。
きれいごとを言っても、人生を左右するのはステイタスや収入なのだ。
先生も、親も、周りの大人はみな、そういうものなのだと言います。

私たちは、それを納得して受け入れることができませんでした。
誰も疑問に答えてくれないことに対して、心にふつふつと沸き上がる怒り。
先生の言葉に、NOと突きつけるように、
ダンサーが鋭く手を挙げて、ポーズをとります。
本当のことを知りたい、強く求める気持ちが、私たちにはあります。

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『アイ・ウォント・イット・オール』
全てが欲しい、と答えを求める思いを、厳しいダンスに乗せて表現します。
この曲は、ギターソロの部分でテンポの速い振り付けがあるなど、
踊るのが難しい曲です。難しいけれど、魅力的です。
私たちが答えを求める気持ちを伝えるには、この曲しかありません。
個人練習を積み上げ、ダンサー全員でカウントを合わせて、
踊り込んできました。
いまいるメンバーで、この『アイ・ウォント・イット・オール』を
作り上げられたことが、嬉しいです。IMGP5393

曲が終わると、大きな拍手がわきました。
そしてこの曲は、私の背中を押してくれます。
曲が終わると、私はダンサーと同じように、激しく、強い気持ちになります。
勝ち組になるための勉強、競争、それに意味を感じられなかった私は、
学校に行くのをやめます。
先生には病気だと言われ、親からも人生は終わりだと決めつけられます。
それでも、私は自分で自分の生きる意味を探し出す、
「それが病気だというのなら、病気と言ってくれてかまわない」
私は、社会の枠組みから外れてもいいという覚悟で、
自分の生きるべき道を求めていきます。

全てを包むような優しさと透明感の中にも、
正義を貫くはっきりとした意志や強さを感じる『キュア』。
世の中に迎合せず、自分の理想とする美しい生き方をしたい
という思いを、4人のダンサーから感じます。

便利さ、豊かさを求めて走り続ける先には、
幸せはあるはずはないのに――。
あゆちゃんのMCを挟み、オリジナル曲の『ルナ』です。

自分と同じように、孤独に耐えている人がいる、
わかりあえる人を求めて生きていく。
なのはなファミリ-ーにたどり着くまでの、ぎりぎりのところにいた
私たち自身の曲です。

〈『ルナ ―まだ見ぬ君に』〉

誰も気持ちをわかってくれる人がいない中、
心は冷えきり、誰も何も、自分自身さえ信じられなくなっていきます。
本当のことを知りたいと思うは、ただのわがままで病気の娘なのだろうか。
誰にも愛される価値がないのだろうか。
そんな思いにとらわれ、生きる希望を失っていきます。
私の20代が終わりを迎えます。
いっそ消えてしまいたい。
そのとき私に訪れた出会い。
私は、なのはなファミリーに入ります。

6曲目は『ハロー』です。
物語はここでひとつの山場を迎えます。
なるちゃんを包むようにシンクロする、みんなの手の動き。
スケールの大きな曲です。
なのはなファミリーとの出会い、それは私たちの人生を
大きく変えていきます。
自分が生きてきた社会の枠組みへ別れを告げ、
解り合いたくても合えなかった人へ別れを告げ、
私たちは、まったく新しい価値観の世界へと向かいます。
ドラマチックな『ハロー』の曲が、人生の転機を告げます。

お客さんは、なのはなのステージをじっと見つめます。
客席で見ていたお母さんが、みんな身動きせずに見入っていた
ということを話してくれました。

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〈『ハロー』〉

私は、台詞を伝えながら、
何度も涙が込みあげてしまうことがありました。
私のすぐ側に、手に触れられるところに、痛みがあります。
曲やMCを通して、その痛みからくる感情がはっきりとよみがえります。
それはもう解決が与えられ、私を苦しめるものではありません。
けれど、自分が感じてきた生きにくさや、寂しさや孤独を、
こうしてはっきりと言葉に理解していくことは、とても大切なことだと思います。
同じように苦しむ人がいなくなる世の中を作るためには、
なぜ苦しかったのか、どう苦しかったのかを、
はっきりとさせ、自分の体験をひとつの材料としていくからです。

私の涙は、痛みからくるものだけではありません。
なのはなで見つけた希望が、私の心を動かします。
なんのために勉強をするのか、という答えを私は見つけました。
自分を自由にするため、です。
勉強をしてたくさんの知識を得たならば、
生きていく上で、より良い答えを導き出すことができいます。
それは、自分自身を解き放ちそして、
誰かのために尽くせる力になります。

(自分が抱えた疑問に、ちゃんと答えはあったのだ)
それは、勉強に関することだけではありません。
なんのために生きるのか、自分はなんのたえに生まれてきたのか、
その疑問に対する答えも、私はなのはなファミリーで
見つけることができました。

なのはなで簿記を学び、やがて、税理士になるという夢が
私の心に生まれます。

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『ミラクル』
曲のタイトルそのままに、私にとってのミラクル、奇跡が、
なのはなでは起きます。
自分に生まれた初めての夢。
未来に希望を持てること。
生きたいという意欲。
生きる喜び。
それは、なのはなにいるみんなに起きた奇跡です。

『ミラクル』のダンスでは、
客席に一番近いところで、マジックをしました。
水が鮮やな色に染まった瞬間、お客さんがわきました。
大きな拍手が起きました。

私の夢は、私が果たすべき使命へとつながっていきます。
昨年、税理士試験の最後の1科目を受け、合格をすることができました。
お客さんが、私の物語に耳を傾け、税理士になっていく過程を
確かに聞いてくださっているのを感じました。
私は目の前のお客さんに向かって、自分自身のこれからの決意を固めるように
台詞を伝えました。

税理士という仕事を通して、地域や社会に役立っていきたい。
私のようにつらい道に入ってしまう人を、1人でも減らしたい。
それが、私が果たすべき役割です。

ギターアンサンブルの『テンション』がはじまります。
張り詰めた緊張感が、舞台の袖にも伝わってきました。
まえちゃんとさやねちゃんの2人のアコースティックギター音は、
深く繊細で、心を強くつかまれます。
2人のギターの手元を見ようと、お客さんは身を乗り出していました。
お父さんの音響で、アコースティックギター2本の音色は
とてもクリアに響きました。
この曲は、覚悟を決めなくては、という気持ちを私に起こします。
これからの仕事、これからの生き方に責任を持ち、
どんなことがあっても、逃げないで目標や夢を貫いていく、という覚悟です。

物語は、明るく、希望のある未来へと向かっていきます。
私たちが持つことができた、人としての誇り。
タヒチアンフラの『オテアルミア』は、
私たちの心に沸き上がる、プライドを表現します。

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なのはなファミリーがはじまってから、15年になります。
医者になる卒業生、看護学校に進学する人、
桃を栽培する農業法人を立ち上げた人。
さまざまな形での自立を果たしていく、卒業生たち。
私たちは、それぞれの場所で、まだ見ぬ誰かと出会うため、
まだ見ぬ誰かのために力を尽くせるように、と
夢を持って生きていきます。

『アイム・アライブ』
よりよく生きたい、真面目に生きたい、誰かの役に立ちたい、
そう願って生きていいのだ、と思えたとき、
私たちは心が解放されました。
生まれてきた良かった、生きている実感を持った喜びを、
明るく希望に満ちたダンスで、表現します。

そして、物語は、いよいよラストへと向かいます。
大切な仲間のバンドメンバー紹介をしました。
楽器だけではなく、デザイン、照明、作曲など
様々な面で活躍するみんなのことを、紹介しました。
お客さんは、一人ひとりのコメントに、
大きな拍手を送って下さいました。

私は、メンバー紹介しながら、自分にこんなにも心強い仲間が
いることを本当に幸せに思いました。
私の物語、私が社会に出て行くことを喜んでくれる仲間、
応援してくれる仲間です。

〈バンドメンバー紹介〉

美作市で生まれたなのはなファミリーは、
地域のみなさんに支えられ、私自身もこの地域で育ってきました。
そして、これからも地域に根を下ろして生きていきます。
「税金のご相談でしたら、ぜひご相談ください」
「私はまだ独身ですので、良縁がありましたらぜひご紹介ください」
こんなMCも、最後にありました。
お客さんが、あたたかい拍手を送って下さいました。
1時間半の私の物語を通してお客さんが、私のことを知り、
私のこと、そしてなのはなのことを応援してくれていると感じました。

MCの中で自分の生きてきた道、これから生きていく道を
はっきりと言葉にして伝えました。
お客さんは、それを真剣に聞いてくださいました。
伝える人が目の前にいると、
どういう間をとろうか、どういうスピードで言おうか、
という迷いがまったくありませんでした。
まるで会話をするように、台詞が出てきました。
聞いてくれる人の心にすっとしみこむように、間合いをとりました。
お客さんの反応を待って、次の台詞を言いました。
伝わっていると感じられることに、喜びを感じました。
演奏とダンスが、物語を引き立て、
物語が、演奏とダンスを引き立てました。
ステージに立つ全員と、お客さんとで作り上げた物語でした。

私は、こんな風にみんなと生きて行くのだと思いました。
同じ気持ちで、手段は違っても表現する仲間がいます
気持ちを伝えられる人との出会いがあります。
未来はどうなるかわからないけれど、
私は出会いに希望を持って生きていくことができます。

〆の曲は、社会に出て行く自分自身と、みなさんへの応援歌で
『ファイト・ソング』です。

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なのはなにいる一人ひとりが、
このコンサートを機に、ひとつステップを上がり、
より良い生き方をしていきたいと思っています。

このコンサートをみんなと作りあげたことは、
私にとってもひとつの節目となりました。
社会人として新しい一歩を踏み出すための力を、
このステージから私は得ることができました。

コンサートは終わりだけれど、
私の物語は終わることはありません。
ここから、新しい物語がはじまるのです。
社会人としての私の物語です。
自分らしい人生、自分だけの物語を作り上げていきます。

(なお)