「軌跡」後半 さやね

→前半からの続きです。

○後半

『イエロー・ストーン』

後半の幕開け。なのはなのドラマーかにちゃんの、スネアドラムのソロ演奏があります。
夜、古吉野内の電気を消すために廊下を歩いていると、薄明かりの音楽室から、太鼓を叩く規則的な音が聞こえます。みんなの寝静まった夜、かにちゃんは、ホームページの編集や照明の作業、仕事の合間を縫って、静かに練習していました。

威風堂々と、世界を見据え、未来を見据え、今を突き進むかにちゃん。かにちゃんのことを尊敬していて、かにちゃんの表現する姿にいつも心を正されました。卓越したドラムソロ、なのはなにしかできないドラムアンサンブルの演奏。会場中に拍手が響き渡りました。

オリジナル曲『シーズ』、フラダンスの『ワカ・ワカ』、『テレへ』と続きます。舞台で演じる光太郎、えりこ、エビ天と七福神に自分を重ね、ダンスを踊り、衣装を着替え、ギターを持ちました。

まだ世界の誰もが見たことのない、2回目の上がりに行った国へ、光太郎とえりこ、私たちは行きます。

 

『テンション』

最高に格好いいから、この曲をまえちゃんと弾きました。エベレストの頂上に一人で立つ者のように孤高な、悲壮な、美しい曲。この曲で、なのはなのコンサート、なのはなのギターの集大成を見せたかったです。

『テンション』は、ネイルアタックという右手の爪で弦を叩く奏法を中心に進んでいきいます。これまでに演奏したどの曲とも比べられぬほど難しかったです。押尾コータローさんのライブ映像を見て、弾き方を解読し、1小節ずつ弾きました。

どんなに難しくても、弾けないと思ったことは一度もなかったです。やめようと思ったことはなかったです。弾きたい、その気持ちだけでした。弾けるまで練習するだけだと思いました。執念です。

まえちゃんと練習し、爪が削れ、割れ、爪で弾くことをやめて指で弾きました。音を立たせるために弦をエクストラライトから、ライト・ゲージに張り替えました。指が痛かろうが弾きました。

私はこの曲に惚れていました。この曲に触れていると、自分を表現できました。押尾コータローさんを思いました。どこまでも優しく、深いからこそ傷つき、求め続ける人。深くなりたかったです。格好良く弾きたかったです。

11月末、ギターアンサンブルの発表会をしました。はじめて、みんなに『テンション』を聞いてもらいました。私はまえちゃんと、2人だけのテンションの世界を作りたかったです。全然納得がいかなくて、いつも必死で精一杯で、未熟だけれど、その世界をみんなに見てほしかったです。

まえちゃんとギターを弾く時間が大切でした。言葉ではなく音で、空気でお互いを信じ、認めて、立て合いました。私はまえちゃんと一つになりたかったです。まえちゃんは、さやねちゃんを思いながら弾くと言ってくれました。未熟で荒くて足りなくても、2人で補い合えばいいと思いました。ただ、もし仮に本番で何かが起こり1人になったとしても、私たちは弾き抜きます。

まだ納得がいかないです。簡単に納得できるような曲ではないです。ウィンターコンサートのステージは、一通過点です。

『テンション』は、光太郎とえりこの歩む道を表わします。その先にある2つ目の上がり。

光太郎は、ノーベル平和賞を受賞しました。光太郎はお父さん、えりこはお母さん、そしてなおちゃん、やよいちゃん、私自身です。誰もが幸せに生きられる世の中の仕組みを発明する、まだ誰もしたことのないことをするのです。

 

『アイム・アライブ』

私は生きている。こんなにたくさんの仲間と、未来に希望を持って生きている。その奇跡のような輝きをみんなと表現します。コンサートはクライマックスへと向かいます。

『トゥーマッチラブ・ウィル・キルユー』、オリジナル曲『ルナ』、『通りゃんせ』

 

『アイ・サレンダー』

「この曲は、お母さんの曲だね」
お父さんが言いました。その言葉は、ずっとずっと胸に残っています。
アイ・サレンダー、私は降伏する。お母さんを思い、踊りました。

卒業生ののんちゃんがダンスを振り付けてくれました。
古吉野の体育館で、みんなと踊りました。ダンスを教えてくれるのんちゃんの姿と、教えてもらっている今を、心に刻みたいと集中しました。

あゆちゃんが見てくれて、すべての振り付け、ポーズ、カウントを完璧に揃えました。揃えるとはこういうことなのか、と衝撃を受けました。同時に、自分の意識の低さを感じました。

あゆちゃんがダンスを見てくれてから、自分の世界が明らかに変わりました。美しさを求めました。厳しさを求めました。悲しさを求めました。身体は辛かったです。しかし今古吉野で揃えられなかったら、ステージには立てないと思いました。私は、自分がなのはなの基準になるのだと思いました。

あゆちゃんが提案してくれて、ダンス練習のバディを決めました。私は、まことちゃん、うりちゃん、ゆうなちゃんとバディになり、毎日15分一緒に練習しました。朝や夜の体育館で、バディで練習する時間が嬉しかったです。誰もがちゃんと踊りたいと願っていました。その姿を見せ合いながら、みんなで引っ張り上げて、みんなで上がっていきました。

コンサートの最終章。光太郎とえりこ、エビ天の鬼気迫る、迫真の演技に自分を重ね、ステージに出ました。

いつも心の中に神様を持ち、その自分の神様に恥じない生き方をしていく。1人を慎む、この日本人としての本来のモラルを取り戻し、広げていく。私は、なのはなファミリーの1人として、お父さん、お母さんを信じ、お父さん、お母さんに続く仲間と生きていきたい。まだ見ぬ誰かのために、力を尽くし生きていきたい。そう神様に誓いました。

アイ・サレンダー。踊り抜きました。
拍手、喝采、鳴り止まぬのを聞きながら、幕が下りていきました。

2017年ウィンターコンサートは大成功しました。
ただ、コンサートを通して、私は自分に足りないもの、浅さ、甘さ、未熟さを日々感じました。お父さん、お母さん、あゆちゃんの見る世界と同じ世界を見たいです。誰も見ていない陽の当たらないところで、一人のときこそ、心に神様を見て、真剣に、真摯に生きたいです。

そして、コンサートの大成功とともに、なおちゃんとたかこちゃんの税理士試験5科目合格の発表がありました。2人に続く者として、なのはなファミリーを作る一人として、日々精進していきます。
ありがとうございました。