「全力で走り続けて」後半 やよい

→前半からの続きです。

■向かう中で

10月くらいから、私は簿記、畑、楽器、ダンス、などで一杯一杯になっていました。
畑のリーダーは予想していたよりも、自分にとって苦しいものでした。私は間違った考え方をしていました。

1人で全ての野菜を育てているような気持ちになり、全ての野菜を全部1人で心配しなければならないと思いました。私は1日中、野菜の心配をしていました。
害虫被害が広がっていたりすると、1日中野菜のことが心配になり、コーラス練習に集中できなくったりしました。

私はバランスが悪く、1つのことで頭が一杯になるとそれ以外のことが考えられなくなります。
自分の判断1つで、みんなの気持ちを踏みにじってしまうと考えたら、怖くてたまらなかったです。人手が集まらないとパニックになり、落ち着いて考えるとそんなに大変じゃないことも大変なことにしてしまいました。人にもきつくあたってしまって、人を傷つけたり、苦しくさせてしまいました。そのことに自分もショックを受けて、自分を何度も落としました。

私は全てを100パーセントでやりたいと思っていました。
毎日、簿記はその日の計画表をすべてやり、ギターは30分以上はして、次の日の畑の段取りは完璧にしたい、ダンスも練習したい……そう思っていました。

自分の中でその日すると決めたことは、絶対にしなければ気がすまなくて、出来なければその日、布団の中で自分を責め、出来てももっとやらなければいけないような感覚になりました。

全部やらなければ、気がすまない、自分を許せない。
これは、私の間違った強いこだわりでした。私の間違った欲でした。

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簿記がひと段落着いたと思ったら、配役が決まって、さらに追い込まれたように思いました。
1日が終わるのがあっという間でセリフを覚える時間がないように思いました。

私は、パニックになって、苦しくなりました。
畑の野菜の心配、人手の心配、ギターの練習が出来なくてどんどん下手になることへの心配、ダンスがみんなのように踊れないことへの心配、セリフの暗記が出来るのか分からないことへの心配、色んなことを1日中心配していました。

また、自分が追い込まれて、その必死さを周りに露出してしまいました。
自分の苦しさを周りの人へも感じさせて、人にきつくあたったり、怒ったりしてしまいました。
そして、気分が落ちてくると、私は目の前のことから逃げました。

今回、ウィンターコンサートへ向かう過程で沢山の人に迷惑をかけ、そして自分の未熟さを嫌というほど痛感しました。

苦しくなると、余裕がなくなり、周りにその姿をさらす。人にあたる。
嫌なことがあると、すぐ目の前のことから逃げ出そうとする。
優先順位をつけず、全部100パーセントでやろうとする。

これは私の悪い癖だと思います。
みんなは忙しくても、淡々と目の前の物事に向かっていました。

これから、気持ちが落ちたとしても目の前のことから逃げず、予想外のことが起きてもそれはあとで考えることにして今出来ることをします。

苦しくなっても、人にあたろうとせず、落ち着いて考えて、本当に大変なことなのか考え直します。
やることが増えても、全部がむしゃらにやろうとせず、優先順位をつけて、やる量を分けて、そういう意味で100パーセントでやります。

私は本当に変わらなければいけないと思います。本当にこのままじゃいけないです。みんなに沢山嫌な思いをさせました。
自分の課題が今回で明確になりました。
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私は、どうしてもサイコロ卵がえび天になって、さなぎになること、それを恵比寿が釣る設定が理解できませんでした。
お母さんにそのことを聞いたとき、
「お前は男脳だから、なんでも理屈で突き詰めようとする。そういうのは人を苦しくさせる。お母さんは女で観念的だから」と教えていただきました。

その通りでした。
私は、納得できないことは全て、自分のなかで解決したがります。

私の人とのコミュニケーションのとり方を考えたとき、私は人の立場になって考えることがてんでできていません。
だから、人に強く言ってしまったり、理屈で突き詰めたりしてしまうのだと思います。
人の気持ちを汲むことができないのだと思います。

私はもう18だけれど、精神年齢が低いと思います。
何か、行動に移すとき、発言するとき、もっと相手の立場になって考える癖をつけたいです。

自分はこうしたいけれど、相手は今どういう状況にあるのか、どういう気持ちなのか。
私はたびたび、自分の求める目標を優先させてしまうことがあります。そして、モラルが低いです。
もっと、社会性を身につけて、尊敬できる人を演じなければいけないと思いました。

みんなといた時間

ホール入りしてから、私はずっとみんなから刺激を受け続けていました。
私はなのはなに来る前ずっと「何か面白いもの」を探していました。
自分が空っぽなので、なにか刺激を受けたくてたまらなかったからです。

けれど、なのはなに来てからはずっとプラスの刺激を受け続けています。こんなに向上心に溢れた場所はないと思います。

舞台袖でみんながダンスを踊る姿を見ると、「もっともっと、頑張らなきゃ」と思いました。
みんなの姿から、パワーを感じました。

私はしほちゃんの踊る姿に憧れ続けています。しほちゃんはダンスを踊るとき何も話さないけれど、なにか言葉ではっきり伝えているように感じます。

しほちゃんのダンスは、しなやかで力強いです。指先、つま先まで神経をいき通らせているのが感じられます。
しほちゃんは、正義感がとても強いと思います。

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コンサート当日、コンサート前最後のボイトレがありました。
朝の7時15分からでした。

私は、コーラスには出ない予定だったので、ずっと朝のコーラス練習には参加していませんでしたが、その日は最後ということで「気合を入れたい役者の人もぜひ」とゆいちゃんが誘ってくれました。
私はセリフの練習を優先させるか、ボイトレにいくか迷っていました。(自分の事を優先させてしまって、間違った考えでした)

7時13分くらいになり、私はリビングでお化粧をしていました。周りにも沢山の人がいました。
しほちゃんがリビングに入ってきて、

「今、ゆいちゃんが体育館で待っています。昨日もゆいちゃんを待たせたので、みんなはなるべく早く練習に行けたら嬉しいです」
と声をかけてくれました。

たぶん、その場にいた私を含め、ほとんどの人が、ゆいちゃんが待ってくれていることを気に掛けたり、時間通りに動こうという意識が薄かったのだと思います。

私は、人のことよりも、自分を優先させていました。私の物事への意識の低さは、モラルの低さへと繋がっています。
私は、常識的に考えて分かることが分からなかったり、あとになってモラルが低かったと気付くことが多いです。

自分では気をつけていても、無意識の自分の甘さが出てしまうのだと思います。
私は、日々の生活でもっと自分を疑わなければならないと思います。自分が、常識はずれなことをしていないか、みんなと違う行動をしていないか。

しほちゃんはどんなことへも、向上心を人一倍高くもって、意識が高いので、どんな場でも活躍しています。また、しほちゃんは自分の損得ではなく、人のために全力で動いています。

しほちゃんのように、なりたいです。
言葉で言うのは、簡単です。私はそれに見合う覚悟を持たなければならないと思いました。生半可な気持ちでしほちゃんのようになりたいと、簡単に言ってはいけないと思いました。

本番前日私は体育館でセリフの練習をしていました。
すると、のんちゃんが声を掛けてくれて、
「何か出来ることある? 読み合わせ手伝おうか?」と声を掛けてくれました。
その言葉にすごく嬉しくなりました。

のんちゃんの練習時間を削ってしまうことが申し訳なかったけれど、のんちゃんの気持ちが嬉しくって、手伝ってもらうことになりました。

『トゥー・マッチ・ラヴ・ウィル・キル・ユー』の前のシーンの光太郎のセリフを読んでくれました。
私が本気でえりこをやったので、のんちゃんが少し驚いてしまっていましたが、一緒に練習できて嬉しかったです。

ホール入りしてから数日間、行き帰りの車がさやねちゃんと同じでした。
何を話すわけでもないけれど、さやねちゃんの隣にいると、さやねちゃんの透明で凛とした奇麗な空気を感じました。隣にいるだけで背筋が伸びました。

私は、みんなが頑張ってコーラス練習、ダンス練習しているとき、演劇の練習やギターの個人練習をしていました。自分にとって、なにかそれが申し訳ないような気がしていました。

さやねちゃんに、
「私はダンスは最後のアイサレンダーだけで、演劇にしかでないけれど、みんなはコーラス、ダンス、それに加えて出はけがあって、すごいなと思います」と言いました。

するとさやねちゃんが、
「いやみんな同じだよ。みんな自分のことをやよいちゃんと同じだと思っているし、えび天もそうだし、70人分のやよいちゃんの思いが詰まっているんだよ」
と言ってくれました。

自分の考えがずれていたことに気付かされました。
誰が大変で誰が大変じゃないとかそういうものはないのだと思います。
役割は違ってもみんな、コンサートに向かう気持ちは同じなのだと思いました。

「絶対にいいものにしたいね」
さやねちゃんが最後にそう言ってくれました。その言葉が自分の心に染み込んでいく感覚がしました。さやねちゃんと同じ気持ちで、それに見合った覚悟でコンサートにのぞまなければならないと、心持を正されたように思います。

■本番

ついに本番がはじまりました。
私の頭のなかはその日の朝から、真っ白でした。
けれど、前半を終えると、楽しくなってくるのを感じました。

もっと、お客さんにこのステージを見て欲しい。
本当にすごく面白い脚本で、ダンスもすごくて、コーラスもバンドも魅力的な、このなのはなのステージにもっと引き込まれて欲しい、見て欲しいという気持ちになりました。
なにか、なのはなファミリーを自慢したい、というような気持ちになりました。

お父さん、お母さんが今回は大成功だったと教えてくださいました。
みんなで作ったウィンターコンサートが大成功に終わりました。
本当にそのことが嬉しく感じます。

お父さんは私にかなり気をつかわれていたと思います。
私が気を落とさないように、気をつかわれていたと思います。

演劇になれていないから、なるべく早く練習を始められるようにしたり、本当に思っていることもまっすぐ伝えず、オブラートにつつんで言ってくださっていたのかなと思います。

お父さんが、
「怒ったら、すねそうな人がたくさんいる」
と教えてくださいました。
私はその中の代表的な一人だと思います。
私は、気が強くて、カッとなることが多いです。
もっと、素直になって、人から注意されやすい人にならなければいけないと思いました。

私はなのはなファミリーが大好きです。
なのはなファミリーの尊敬できる人に近づけるよう、日々努力して、全力で走り続けます。